「テレフォン人生相談」50年──加藤諦三が説く〝幸せになれる人・なれない人の差〟

長い人生の中では大きな喜びに浸ることもあれば、時に絶望の淵に立たされることもあります。立ちはだかる壁を乗り越え、一度しかない人生を輝かせるにはどのような心掛けで歩めばよいのか──。「テレフォン人生相談」のパーソナリティとして、半世紀もの間多くの人々に生き方を説き続けてきた早稲田大学名誉教授の加藤諦三さんと、シスターとして信仰の道を極められてきた鈴木秀子先生に語り合っていただきました。

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「くだらない」という発言が意味するもの

〈鈴木〉
いま、加藤先生に人生の悩みを打ち明けたいという方がたくさんいらっしゃると思います。

例えば、自分は愛情を十分にもらってこなかったということがずっと尾を引いて、その心理状態からどうしても抜けきれない人、親の愛情が頭では分かっていたとしても心では納得していない人。そういう人がいかに多いかを私も感じています。

同じような状況の中で一日一日真剣に生き、それを乗り越えられた加藤先生のアドバイスは、そのまま人々の心の奥深くに響くと思うのですが。

〈加藤〉
大きな問題ですね。この問題を克服する鍵はやはり人間同士の触れ合い、出会いだと思います。

それは例えば友達であったり恋人であったり先生だったり、そういう本心から心が触れ合える体験や出会いがないと、愛されていないという心理状態からなかなか抜け出せないし、頭では分かっていても感情がついていかないということになってしまいます。

それから大事なのは価値観でしょうね。引きこもりや不登校、ネット心中に始まっていろいろな問題がありますが、そういう方の話を聞いていると、やはり価値観に歪みがあるんです。

例えば若い人の間で「くだらない」という言葉がよく聞かれます。

「あいつの話はくだらない」「この本はくだらない」……。こちらが何を提案しても「くだらない」んですね。本人たちが意識しているかどうかは別として、これらはものすごい業績評価に偏っている。

〈鈴木〉
業績評価ですか。

〈加藤〉
ええ。「これだけの仕事をした」とか「これだけお金を稼いだ」とか「これだけの学校を出た」とか、何か業績と結びつかないと全部価値がないと見てしまう。

要するに「くだらない」って何かといえば業績以外の価値なんです。業績だけというこの価値観から抜け出さないことには、僕は人間は幸せになれない気がします。

業績的価値観を抜きにして身近な生活に目を向ければ、自分のいる場をきれいにしたり、おいしい料理を味わうというように、いくらでも幸せを味わうためのヒントが隠されていますよ。

よくお話しするのですが、富や成功を求めるのではなく「おにぎり一つで幸せだ」という人生が僕は素晴らしいと思います。しかし自分の人生の意味と価値を信じられなくては、おにぎり一つで幸せを感じることはできません。

〈鈴木〉
私が多くの人と接していて感じるのは、自分が愛されなかったと思い込んでいる人は、小さい愛情をかけただけでは駄目なんですね。もっと大きな無条件の愛情でなくては満足しません。「もっともっと大きな愛情で満たして」って、ものすごい欲張りなんです。

それを思うと、人間は自分の内面をしっかり見つめて、小さなことでも「あっ、いいな」と喜べる感性を身につけることが大切なのでしょうね。

業績だけに焦点を合わせていくと、人の目に振り回されて、認められなければ「自分は価値がない」と思ってしまうわけですから。


(本記事は月刊『致知』2009年3月号特集「賜生」より一部を抜粋したものです)

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◇鈴木秀子(すずき・ひでこ)
東京大学大学院人文科学研究科博士課程修了。聖心女子大学教授を経て、現在国際文学療法学会会長、聖心会会員。日本にエニアグラムを紹介。著書に『自分の花を精いっぱい咲かせる生き方』『幸せになるキーワード』(共に致知出版社)『死にゆく人にあなたができること』(あさ出版)など。近刊に『機嫌よくいれば、だいたいのことはうまくいく。』(かんき出版)。

◇加藤諦三(かとう・たいぞう)
昭和13年東京都生まれ。38年東京大学教養学部卒業。43年同大学院社会学研究科修士課程修了。早稲田大学理工学部講師、助教授などを経て52年教授に就任。平成20年定年退官。現在名誉教授。ニッポン放送系ラジオ番組『テレフォン人生相談』のレギュラーパーソナリティーを務めるなど多方面で活躍中。『自分に気づく心理学 幸せになれる人・なれない人』『自立と孤独の心理学』(ともにPHP研究所)など人生論を中心に著書多数。近刊に『テレフォン人生相談─心のマスクを忘れるな―』(扶桑社)。

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