清水建設・宮本洋一会長が手痛い「失敗」から学んだ、仕事で信頼を築く要諦

創業200年以上の歴史を誇る清水建設。売上高1兆4千億円、社員数1万人を超える国内有数の大手総合建築会社です。その社長、会長を歴任する宮本洋一氏(掲載当時:社長)に伺った、ビジネス人生の礎を築いた20代当時の貴重な体験談をお届けします。

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「約束を守る」と「段取り八分」

〈宮本〉
いまでも鮮烈に記憶していることがある。ある現場で、鉄筋圧接工の親方に、

「次はこの日に来てください。それまでにこういう段取りをつけておきますから」

と約束していたにもかかわらず、作業が予定どおり進まないまま、当日を迎えてしまった。彼は現場に現れるや否や、

「これじゃ、仕事にならない。俺たちは請け負った仕事をして日銭を稼いでいる。部下にもちゃんと給料を払わなきゃいけない。どういうつもりだ。もう二度とおまえのところには来ない」

と言って、怒って帰ってしまったのである。

それまでその人とは非常に仲良くしていて、信頼関係を築けていたのだが、私のたった1回のミスによってひと溜まりもなく関係が壊れてしまった。当日までにきちんと段取りをつけることが大前提であるし、それが仮にどうしてもできなかったとしたら、前もって事情を説明し、「あと1、2日延ばしてほしい」と言うのが筋だろう。

結局その時は、その会社の社長が取り持ってくれて、その後も継続して仕事を頼むことができたのだが、完全な関係修復にはなかなか至らなかった。

仕事は一人ではできない。いろいろな人との連携によってつくり上げていくものである。ゆえに、仕事で大事なことは信頼関係であり、信頼関係を築くためには「約束を守る」ことが最も大切だ。裏を返せば、「できない約束はしない」ということである。

建設現場では「段取り八分」とよく言われている。準備、段取りさえきちんとできていれば、その仕事の8割は完結したようなもの。これも仕事を遂行する上で要となる教えだろう。段取りの大切さ、それを疎かにした時に失うものの大きさを、私は身を以て学んだ。

失敗を成長の原動力に

「入社して最初の5年間は会社に負担をかける存在でも構わない。次の5年間は成功もするけど失敗もする。そして、10年経ったら会社に貢献する人間にならなければならない」

これはいま私が若い社員によく言っている言葉だ。誰もが失敗は避けたいと思うし、成功体験を追い求めるだろう。しかし、失敗を繰り返すことが人間を成長させることに繋がるのであって、決して失敗を恐れてはならない。

私の経験からしても、人間は失敗したり上手くいかなかったことほどよく覚えているし、その経験が人を一段階上へ上へと押し上げる原動力になる。様々なことに挑戦して、跳ね返されて、また向かっていく。そういうことを繰り返す中で人間は大きくなるのだ。

ただし、同じ失敗は二度してはならない。その前提のもと、失敗を恐れずにチャレンジ精神を燃やし、熱意を持って真剣に仕事に打ち込む。20代の10年間で一番必要なのは、この姿勢を身につけることだと思う。


(本記事は月刊『致知』2015年6月号 連載「二十代をどう生きるか」より一部を抜粋・編集したものです)

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◇宮本洋一(みやもと・よういち)
昭和22年東京都生まれ。46年東京大学工学部卒業後、清水建設入社。平成15年執行役員、17年常務執行役員、18年専務執行役員を経て、19年社長就任。
※情報は掲載当時のものです

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