幕末の偉人・近藤勇の知られざる実像──直系子孫が紐解いた新撰組の「宿願」とは

幕末動乱期の京都の治安維持を任務として結成された新選組。その局長として、土方歳三や沖田総司、斎藤一など並み居る剣士たちを束ねたのが「天然理心流」宗家4代の近藤勇です。農民の出身から幕臣にまで登りつめ、激動の時代を駆け抜けた近藤の真実を、直系子孫である近藤勇生家第10代当主の宮川豊治さんが語ります。

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根底にあった「尊王攘夷」

私が子供の頃の近藤勇および新選組は、鞍馬天狗や桂小五郎の敵役、あるいは官軍に対する賊軍、という扱われ方をしていました。

東京の多摩市に、明治天皇の行幸を記念して昭和五年に建てられた「旧多摩聖蹟記念館」がありますが、私の祖父は、その土地を提供するなどして勇の汚名を雪ごうと尽力しました。

しかし、勇に対する汚名はその真の姿を捉えたものではありません。

幕府の浪士隊の募集に応じ、試衛館のつわものを引き連れて上洛した勇は、壬生に屯所を設け、一か月余を経て家郷に書簡を送っています。そしてその末尾に、七言絶句と和歌を記しています。

七言絶句には「宿願無成不復還」とあります。宿願が成らなければ帰らない覚悟がある、ということです。

では、その宿願とは何だったのか?

七言絶句とともに記された和歌「事あらばわれも都の村人となりてやすめむ皇御心」、および京都守護職会津侯への勇の嘆願書にある「天朝を守護する」「勅により外夷を攘つ」という意味の言葉。

さらに会津侯への上書にある「皇命尊戴」「夷狄攘斥」との文言から、それを窺い知ることができます。都の村人──、つまり勇の宿願は草莽の民として天朝を守り、外敵を討つことにあったのです。

幕末は土佐勤王党に属し、明治に入って宮内大臣となっていた田中光顕がその勇の手紙を見て、「近藤は我々と同じ考え方だったのか」と漏らしたといわれていますが、勇の根底にあったのはまさに「尊皇攘夷」でした。

鳥羽伏見の戦いの真相

ならば、なぜ鳥羽伏見の戦いで、徳川方として戦ったのか?

私は、孝明天皇の死と関係があるのではないかと考えています。勇にとって守るべき天朝は孝明天皇でした。

その孝明天皇が慶応2年に崩御。痘瘡が原因とされていますが、毒殺説もあります。孝明天皇は攘夷を熱望するとともに、討幕には反対の立場でした。そしてそれは、幕府を倒そうとする尊攘派の諸藩、および公家の考えとは相容れないものでした。

そこに毒殺説が生まれるのですが、もし毒殺が真実なら、勇にとって薩長軍は敵だったのではないでしょうか。

そして、その後の勝沼での戦い、流山での出頭。勇は勝沼ではそれほど戦闘を交えず、流山ではあっさりと出頭しています。

自らが奉戴していた孝明天皇亡き後、もはや戦う意味もない、自分にけりをつけたい、そのような気持ちでいたのではないかと思います。まして、相手は薩長土等の軍とはいえ、実質的には官軍、朝廷の軍隊であり、尊皇思想をもつ勇にとっては大きなジレンマもあったことでしょう。

いずれにしても、勇は「尊皇攘夷」という点では一貫していました。新選組の近藤勇というと、武闘集団の単なる長、というイメージがありますが、勇の根底にはこのような思想があったのです。


(本記事は月刊『致知』2010年2月号 特集「学ぶに如かず」より一部を抜粋・編集したものです)

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◇近藤勇(こんどう・いさみ)
天保5(1834)年~慶応4(1868)年。新選組局長。武州多摩郡上石原村の農家、宮川久次郎の三男として生まれる。幼名勝五郎。天然理心流、近藤周斎の養子となる。浪士隊の一員として上洛し、新選組を結成して局長となる。35歳で板橋にて刑死。

◇宮川豊治(みやがわ・とよじ)
大正14年東京都生まれ。近藤勇生家第10代当主。三和銀行(現・三菱東京UFJ銀行)に勤務し定年退職。近藤勇談話会会長として、近藤勇の実像の究明に尽力している。

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