日本は21世紀のリーダーたる資格を持っている──いまこそ「正しい歴史観」を回復せよ(櫻井よしこ×中西輝政)

アメリカの混乱、中国の台頭、北朝鮮の核開発……世界情勢が混迷を極める中、国家基本問題研究所理事長の櫻井よしこさんは「日本は21世紀のリーダーたり得る」と強く語ります。京都大学名誉教授の中西輝政さんとともに、世界と日本の実情、これからわが国が進むべき道について提言していただきました。※記事の内容は掲載当時のものです

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日本こそ21世紀のリーダー

〈中西〉
国家の一番重要な道徳は、「国の安泰」を図り「国民を食わせる」ということです。そして徐々に遠くに視点を向けて、将来の世代をどう育てるか、教育の問題、価値観の問題に国家は責任を持たなければなりません。

ところが戦後の日本という国はそうした「遠き慮り」に欠け、道徳、国家、過去の歴史に対する関心があまりにも冷淡かつ希薄になってしまいました。

日本は戦後の平和の中で目の前の物質的繁栄ばかり追求してきましたが、それには、きょうの話題に出てきた「誤った歴史観」の問題が大変大きかったのです。

日本は「邪悪な侵略戦争をした、どうしようもない、つまらない国なんだ」という歴史観です。これによって国や社会に根底から誇りを失ってしまったからです。

だから、正しい歴史観を持つということがとても大切なんです。それがあれば、戦後の誤った歴史観によって失われた心の軸や、内面を大切にする価値観を取り戻すことができるのです。私はそれがいま、我われにとって真に「遠きを慮る」ということではないかと思います。

〈櫻井〉
遠きを慮るということは、自分が何者であるのか、なぜ生まれてきたのかということを深く考えて、自分のためだけの人生ではどれほどもったいないことかを、価値観として学んでいくことだと思います。

とりわけリーダーにとってこのことは大事で、自分は公のために、他者のために何ができるかを考えて、人のいかなる評価も求めない。為すべき使命を果たしていくことで自ずと視野も思いも広がり、深まっていくのではないでしょうか。

日本人はそういうことができた民族だという気がするのです。例えば歴史上我が国で一番尊敬されてきたのは天皇です。天皇は権力を持とうと思えば持つこともできたでしょう。けれどもそれをせずに、民と国を想い、祈る存在に徹してこられた。日本

国民はそれをいろんな形で受け継いできたからこそ素晴らしい国づくりができたわけです。その点がいま、どうも明らかではない。まず第一に自分の国に対して、自分で責任を持つという考え方が薄れているように思います。

〈中西〉
日本人はもともと、世のため人のため、そしてお国のため、という素晴らしい心を持っていたんです。ところが戦後、誤った自虐的な歴史観が広がったため、「そういうのは全体主義、軍国主義になるんだ。けしからん」となった。むしろ自分の欲望だけに生きるのが新しくていいんだということでずっと突っ走ってきました。

その結果、いま、日本の国は内外ともにいよいよ抜き差しならないところにきています。そういう中でいよいよ日本本来の心を、国も民も回復しなければ、この国の未来は本当になくなってしまうと私は憂慮しています。

それゆえにこそ、いま本来の歴史観を回復することが大切なのです。

〈櫻井〉
21世紀のリーダーたる資格を持っている国は、日本ではないかと私は思います。といっても、いまの日本、つまり戦後の日本ではなく、長い歴史の中で形成した本来の日本です。

中国やアメリカなどと比べて日本型の民主主義が素晴らしいと思うのは、皆が幸せになることを目指しているところです。この考え方は十七条憲法から来ていると思います。

民を大御宝として、上に立つ人は民が眠っている間に起き出して働きなさいとか、民に税を課す際も、田植えの時ではなく冬の仕事のない時にしなさいとか、本当に民を大事にしています。

7世紀初頭にあんなに優れた価値観を打ち出して、国是とした国は日本だけです。私たちは以来千数百年の間、本当に民主主義的な、一人ひとりを大事にする価値観を実践してきた国家なのです。

他国とも今日まで数えるほどしか戦争をしていない。他の国はどうかというと、中国を含めて他国との紛争や戦争を繰り返しています。

民を大事にする優しさを持ち、平和で、穏やかな暮らし振りを続ける一方で、戦うべき時には立ち上がる雄々しさを兼ね備えている大国は、日本しかありません。だからこそ日本は21世紀のリーダーたり得ると思うのです。

ただ、そうなるためには政治家も国民も、歴史や、私たちが大切に育んで守ってきた価値観を知らなければなりません。


(本記事は月刊『致知』2015年11月号 特集「遠慮─遠きを慮る」より一部を抜粋したものです)

◉月刊『致知』2021年12月号では、櫻井よしこさんと日本大学危機管理学部教授の先崎彰容さんに、激動する国際情勢の中で日本が見出すべき活路について語り合っていただきました。戦後、日本人の発想と行動を縛りつけてきた問題の本質が対談を通して浮き彫りになります記事詳細はこちら

◇櫻井よしこ(さくらい・よしこ)
ベトナム生まれ。ハワイ州立大学歴史学部卒業後、「クリスチャン・サイエンス・モニター」紙東京支局勤務。日本テレビニュースキャスター等を経て、現在はフリージャーナリスト。平成19年「国家基本問題研究所」を設立し、理事長に就任。23年日本再生に向けた精力的な言論活動が評価され、第26回正論大賞受賞。24年インターネット配信の「言論テレビ」創設、若い世代への情報発信に取り組む。著書多数。最新刊に『亡国の危機』(新潮社)がある。 

◇中西輝政(なかにし・てるまさ)
昭和22年大阪府生まれ。京都大学法学部卒業。英国ケンブリッジ大学歴史学部大学院修了。京都大学助手、三重大学助教授、米国スタンフォード大学客員研究員、静岡私立大学教授を経て、京都大学教授。平成24年退官。専攻は国際政治学、国際関係史、文明史。平成2年石橋湛山賞。9年毎日出版文化賞、山本七平賞。14年正論大賞。著書に『賢国への道』(致知出版社)など。近著に『日本人として知っておきたい外交の授業』(PHP文庫)などがある。

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