【特別寄稿】バイデン政権の終焉、凋落する超大国・アメリカ——マックス・フォン・シュラ―が読み説く

元米海兵隊員、また歴史家として、独自の視点と情報源から、アメリカ政治や国際情勢に対する鋭い評論を続けているマックス・フォン・シュラーさん。日本在住の親日家でもあり、日本文化への深い理解から、この激動の時代の中で日本が持つ使命、とるべき具体的な方策も積極的に提言し、近著『アメリカはクーデタによって、社会主義国家になってしまった』(青林堂)、YouTube公式チャンネル「軍事歴史がMAXわかる!」でも積極的に情報発信を続けています。そのマックス氏に、失政が続くバイデン政権の行方と、ますます混迷を深める国際社会の中で日本人一人ひとりに求められる覚悟を語っていただきました。 

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追い詰められるバイデン政権

バイデン政権の誕生から、早くも10か月が経とうとしています。大統領選挙後の勝利演説において「分断ではなく融和を目指す」「いまは米国を癒やす時だ」と高らかに宣言し、トランプ前大統領の「アメリカ・ファースト」路線から大きく転換する決意を示したバイデン大統領。

しかし、現実のアメリカはどうなっているでしょうか。「融和」「癒し」どころか、ますます混迷と分断が広がっている、そう言わざるを得ない状況が続いています。このままでは、バイデン政権の終焉も時間の問題でしょう。事実、バイデン政権の支持率は過去最低にまで落ち込んでいます。

いまだ不正選挙疑惑が燻っていることに加え(共和党知事の州では不正選挙疑惑に関する裁判が続いています)、その要因はいくつかありますが、ここでは特に次の3つを指摘しておきたいと思います。

一つには、新型コロナ対策を巡る混乱です。バイデン大統領は、新型コロナを収束させる手段としてワクチン接種を強力に推し進めてきましたが、2回目の接種を完了した人が国民の5割を超えても感染拡大を抑え込むことができていません。そのため、連邦政府職員や大企業の従業員へのワクチン接種を義務化するなど強硬手段に打って出たのですが、それに対して「憲法違反である」と一部の共和党の州知事が反発し、治療薬をはじめワクチンに頼らない方法での感染封じ込め策に舵を切っているのです。

さらに、ワクチンを2回接種した人の間でいわゆる「ブレイクスルー感染」が多発し、早くも3回目の接種が始まったことに対して、「これから数か月ごとに3回も4回も摂取し続けるのか」「ワクチンを打てば本当に新型コロナは収束するのか」と疑問や不信感を覚える人々が増えています。そもそも、アメリカ社会には強大な政治力を持つ巨大製薬会社への不信感が根強くあり、それもワクチン接種がバイデン政権の思い通りに進んでいない一因となっています。

いずれにせよ、バイデン大統領がこのままワクチン一本鎗の対策を強硬に推し進めていく限り、アメリカ社会の対立と分断はますます深刻になっていくでしょう。

二つには、不法移民への対処です。不法移民に対して厳しい処置をとったトランプ政権から一転、バイデン政権は受け入れに寛容な姿勢を示しました。ところが、バイデン政権になって以後、メキシコ国境から不法入国する移民が急増し、その数は一説ではここ8か月間で数百万人とも言われています。しかも、不法移民には身元の確認も、新型コロナの検査もしっかり行われていません。

そして、危機的状況にある国境問題に対してハリス副大統領は、「国境を越えようと考えている人たちにはっきりと言っておきたい。来ないでほしい。来ないでほしい」と発言し、バイデン政権は移民受け入れに寛容だったのではないのかと、保守層だけではなく、支持層であるリベラル層からも大きな批判を招いているのです。

対処を誤れば、今後、移民問題がバイデン政権の根幹を揺るがすアキレス腱となる可能性は十分にあるでしょう。

決定打となったアフガニスタン撤退問題

そして三つには、アフガニスタン撤退問題です。もともとアフガニスタン撤退はトランプ政権で決まったことでしたが、私が見る限り、バイデン政権はいくつかの致命的な失敗を犯しました。ここでは下記の点を指摘しておきます。

一つには、長年アメリカ軍が支援してきたアフガニスタン軍の実態を見誤ったことです。首都カブールがタリバンに攻められて陥落する前、バイデン大統領は、「現地には訓練を受けた30万人のアフガン軍がいるから大丈夫だ」と言い、ブリンケン国務長官も「アメリカは4つの政権にわたり数十億ドルをかけて最新装備を備えた30万人規模の軍隊をつくった」と強調していました。

しかし、タリバン兵が迫ってくることが分かると、アフガニスタン軍は一切戦うことなく、夜逃げ同然に首都カブールから離れました。結局、30万のアフガニスタン軍は虚構であり、ほとんどが「幽霊兵士」だったのです。実際に戦う能力を備えていたのは9万ほどだったという情報もあります。アフガニスタンの腐敗した政権により、現地の軍隊には十分な訓練も行われておらず、食料や給与もきちんと支払われていなかったというのが実態だったのです。

さらにまずかったのは、アフガニスタン軍に供与されていたアメリカ軍の兵器類がそのままタリバンやテロ組織に渡ってしまったことです。これは世界の安全にとって非常に憂慮すべき事態です。中国がタリバンに友好的な姿勢を見せている理由もここにあります。中国は、タリバンに渡ったアメリカ軍の兵器が自国内のウイグル族やカザフ族の過激派に流れ、テロ活動が活発化することを恐れているのです。

二つには、タリバンとの事前交渉の失敗です。アフガニスタン撤退を巡り、アメリカ歴代政権はタリバンとの交渉を続けていました。しかし、ある情報筋によると、カブールやカブール空港の支配を巡るタリバン側の要望をバイデン政権が拒否したことによって、現地のアメリカ人や関係者の避難が円滑に進まなくなってしまったとされています。

実際、カブール陥落後、タリバンが空港周辺を支配し、検問所を設置したことで、大混乱が生じました。空港には避難を求める人々が押し寄せ、空港から出発しようとするアメリカ軍の飛行機に人々が乗り込もうとする映像を見た方も多いでしょう。さらに、空港周辺で自爆テロが発生し、アメリカ兵士を含む90名以上が亡くなりました。これに怒ったバイデン政権は、テロを防ぐためとして、無人機でカブール市内を空爆しましたが、子供を含む多数の民間人が亡くなり、逆に批判を浴びる事態となりました。

退避に関してもう一つ問題だったのは、イギリスやフランスなど、他国が現地にいる自国民や関係者の退避を独自に進めていたことに対して、アメリカが十分な協力をしなかったことです。その理由は、他国が円滑な退避を行えば、アメリカの対応がうまくいっていないことが世界に露呈してしまうからです。退避を巡りイギリス軍の将軍とアメリカ軍の将軍が大喧嘩したという情報もあります。

そして三つには、バイデン大統領のアメリカの指導者としての姿勢、態度です。タリバンの戦闘員がカブールに迫っている危機的な状況の中、バイデン大統領はキャンプ・デイビッドで長期休暇に入っていました。その間、アフガニスタン情勢が刻々と変化しているにも拘わらず、国民の前で演説を行ったり、記者の質問に明確に答えることもありませんでした。この冷淡、無関心ともいえる態度がメディアや共和党から厳しく批判されたのです。

また、テロで亡くなったアメリカ兵のご遺体が星条旗に包まれて本国に帰還し、弔問儀式が行われている最中、バイデン大統領は兵士たちの名誉の死を悼むよりも、時間を気にして何度も腕時計を見ていました。その姿がテレビで流され、遺族はもとより国民全体から厳しい批判を浴びました。

特にアメリカ人は自国の威信に関わる戦争や軍に関する事柄に非常にセンシティブに反応します。例えば、ベトナム戦争でアメリカが厳しい状況にあった時、フォード大統領が戦渦に巻き込まれた赤ちゃんを優しく抱っこするという、いわば演出をしたことがありました。これによって、アメリカ大統領は常に軍のこと、現地の状況を心配しているんだいうメッセージを発したのです。演出とはいえ、戦争や軍に対するアメリカ大統領の伝統的な態度、姿勢はこういうものなのです。バイデン大統領のアフガニスタン情勢、戦死者に対する冷淡な態度が、どれだけアメリカ国民の目に異常に映ったかがお分わかりになるかと思います。

いまこそ日本人一人ひとりが立ち上がる時

上記で述べたことはバイデン政権が抱える問題の一部にすぎません。しかし、私はそれらがバイデン政権の命取りとなり、近い将来、政権の終焉が訪れることは間違いないと思います。

とはいえ、もしバイデン政権が崩壊したとしても、憲法に従って次の大統領になるのは、極左のカマラ・ハリス副大統領です。ただ、彼女も敵が多く、弾劾の話がでていますから、おそらく長く政権を維持することはできないでしょう。

そうなると、次に大統領となるのはナンシー・ペロシ下院議長ですが、彼女も極左で80歳を超えています。要するに、バイデン政権が崩壊しても、アメリカは政治的に不安定な状況が当分続くことになります。国民の分断も深刻化し、アメリカ社会はより一層の混乱状態に陥るはずです。そうなると、アメリカ軍が事態の収拾のために動くという状況も全くあり得ない話ではないでしょう。これまでもこのWEBchichiの寄稿で再三主張してきましたが、それほどアメリカは危機的な状況なのです。

にも拘らず、日本の政治家の多くはアメリカはこれからもずっと超大国であり、永久に日本を守ってくれると思い込んでいます。見識のあるしっかりしたリーダーが不在という意味では、日本もアメリカの状況と同様なのかもしれません。

この危機を乗り越えるために、私が日本人一人ひとりにお伝えしたいことは、アメリカを頼ることはもちろん、政治家が何とかしてくれるだろう、という依存心を捨て去ることです。また、様々な利害関係者、日本の弱体化をもくろむ勢力から影響を受け、日本をミスリードしようとする一部メディアの情報をそのまま鵜呑みにしないことです。そして一人ひとりが「自分の国、社会の未来は自分たちで決める、守り抜く」という強い決意を持ち、自らの頭で物事を判断し、政治、メディアに対して「イエス」「ノー」を主張していくことです。アメリカでも、政治家でもない、あなた自身が日本のために立ち上がる時がやってきたのです。

この素晴らしい日本を心から愛する一人として、そのことを最後に皆さんに伝えて本稿を終えたいと思います。


◇マックス・フォン・シュラ―

1956年アメリカ・シカゴ生まれ。1974年に岩国基地に米軍海兵隊として来日、アメリカ軍の情報局で秘密調査などに従事。退役後は、国際基督教大学、警備会社、役者、ナレーター等、日本国内で幅広く活動する。著書に『アメリカ人が語る 日本人に隠しておけないアメリカの"崩壊"』『日本に迫る統一朝鮮の悪夢』『アメリカ人が語るアメリカが隠しておきたい日本の歴史』(いずれもハート出版)『アメリカはクーデタによって、社会主義国家になってしまった』(青林堂)などがある。YouTube公式チャンネル「軍事歴史がMAXわかる!」でも情報発信中。 

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