2025年10月03日
激しく揺れ動く国際情勢。月刊『致知』の連載「時流を読む」でそれを独自の視点で読み解く京都大学名誉教授・中西輝政さんは、政治、外交、経済を見る上での要諦を示されています。国際情勢を読み解く大切なポイントとは――?
(本記事は月刊『致知』2017年12月号 連載「時流を読む」より一部を抜粋・編集したものです)
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日本のリーダーに足りないもの
日本の政治とメディアの未成熟さの背景について述べておきたいことがあります。
昔から、政治・外交上の優れた知恵を大切にしてきたイギリスでは、世界の政治や外交、経済の動きを正しく見る場合、「4つの要諦」があると言われてきました。
第一に物事の動きはできるだけ早く見つけること。
二つ目には、見つけたら、なるべく時間をかけておもむろに行動すること。
第三に、交渉の局面に入ってくると、常に粘り強く主張し、それでいて時至れり、となれば、行きがかりを捨てて潔く譲歩すること。この四つです。
日本で政治・外交上の決断や行動の選択が遅れる原因は、得てして日本人の慎重さが災いすることも多いのですが、それだけではありません。それ以上に重要な問題として、情報の収集力、分析力、つまり国や企業でいえば、インテリジェンスの能力が著しく欠落していることが挙げられます。
集団や組織のリーダーは時代の局面を敏感に読みながら、当面の問題には堅実で的確な手を打ちつつも、状況の変化によっては時に自説を覆してでも柔軟に対応していく力が求められます。
そして、その鍵を握るのがインテリジェンス能力なのです。
歴史上の優れたリーダーたちが国を揺るがす出来事に遭遇しながらも、それを見事に乗り越えていくことができたのは、何をおいても情報への敏感さと判断の柔軟さによるものであり、その陰で正しい判断を得るために情報収集に人一倍エネルギーを割いていたのです。
大変残念ながら、政治家に限らず現代の日本のリーダーたちのインテリジェンスに対する、この「生きるか死ぬか」というほどの意識は極めて希薄であると言わざるを得ません。
◉月刊『致知』2025年2月号 ピックアップ記事◉
中西輝政さんにご登場いただきました!
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皇紀2685年、初代の神武天皇ご即位から悠久の歴史を紡いできた我が国日本。本年(2025年)は戦後80年の節目でもある。哲学者・森信三師は「2025年、日本は再び甦る兆しを見せるであろう。2050年、列強は日本の底力を認めざるを得なくなるであろう」との言葉を遺した。これからの四半世紀、日本が世界のモデルケースとなるために大切なことは何か。山積する内憂外患をいかにして乗り越えていけばよいか。櫻井よしこ氏と中西輝政氏の対談を通じて考察したい。
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わけても浮沈の激しい月刊誌の世界で、『致知』が創刊後、間もなく半世紀を迎えてますます多くの読者に支持され続けていることに、私は日本の将来に光明を見る思いが致します。常に変わらず、人間と人生について学び続けることの大切さを多くの日本人に伝えてきた『致知』の役割は、今後も一層大きなものになってゆくことでしょう。
◇中西輝政(なかにし・てるまさ) ◎各界一流プロフェッショナルの体験談を多数掲載、定期購読者数No.1(約11万8,000人)の総合月刊誌『致知』。人間力を高め、学び続ける習慣をお届けします。※動機詳細は「③HP・WEB chichiを見て」を選択ください
昭和22年大阪府生まれ。京都大学法学部卒業。英国ケンブリッジ大学歴史学部大学院修了。京都大学助手、三重大学助教授、米国スタンフォード大学客員研究員、静岡県立大学教授を経て、京都大学大学院教授。平成24年退官。専攻は国際政治学、国際関係史、文明史。著書に『国民の覚悟』『賢国への道』(ともに致知出版社)。その他、『情報亡国の危機』(東洋経済新報社)『情報を読む技術』(サンマーク出版)、編著に『インテリジェンスの20世紀』(千倉書房)、訳書に『ヴェノナ』(PHP研究所)などがある。