日本一のおもてなし力。加賀屋女将・小田真弓さんに聞く「人を育てる10の心得」

年間30万人の宿泊客を魅了してやまない石川県の名旅館・和倉温泉「加賀屋」。プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選にて2015年まで36年連続総合1位に輝くも、2016年に3位。しかし翌年、再び首位に返り咲きました。『致知』の愛読者でもある女将の小田真弓さんに、日本一のおもてなしを支える人材育成術を学びます。
(本記事は月刊『致知』2017年4月号 特集「繁栄の法則」より一部を抜粋・編集したものです)

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私の役割は舞台をつくること

――これまで数多くの社員を育ててこられたと思いますが、人を育てる上で大事なことは何ですか。

〈小田〉
まず前提として挙げられるのは、「現場に宝物あり」ということですね。やはり現場にいなければ分からないことがたくさんありますから、私は極力玄関に立ち、廊下を歩いて、危ないな、よくないなと思うことはすぐに注意して直させているんです。

その上で、客室係を育てる上で大切だと感じていることは、十項目あります。

一つ目は、笑顔で相手のいいところを褒めてあげる。ここでのポイントは「ありがとう」と言うことです。よく「ご苦労さん」って言うことがありますけど、どうしても上から目線での物の言い方になりますから、私は「ありがとう」とか「ご苦労様でした。ありがとう」と言うようにしています。

二つ目は、注意する時は言い方に気をつける。「あんた、こんなことしてダメよ」って頭ごなしに叱っても、いまの子は「何よ、あの言い方」「全然私の気持ちを分かってくれない」と反発するだけですから、相手の言い分をまず聞き、「こんないい面を持っているけど、これだけは気をつけてね」と注意します。

三つ目は、相手との気持ちを通じ合わせる。朝社員に会ったら、こちらから先に笑顔で「おはよう」って挨拶をしますし、一人ひとりの顔色や体調、様子を見て、「どうしたの?」「風邪ひいた?」などと声を掛けるようにしています。

四つ目は、時には外部の研修や講演会などに出してあげて、気分転換させる。

五つ目は、不器用な人、要領よくできない人ほど、より可愛がって大事にしてあげる。できる人は放っておいても努力しますからね。

六つ目は、自己啓発の機会を体験させてあげる。加賀屋ではお茶や生け花などの作法や知識を学ぶ社内アカデミーを設けています。

七つ目は、ひと言多い子や段取り優先な子を注意する。たいていのクレームの原因が、ひと言多いか段取り優先のタイプなんですよ。言わなくてもいいことを余計に言ったり、お客様のペースを無視して自分の段取りどおりに進めようとして怒られる。「お客様はみんな違うんだから、一人ひとりに合わせればいいのよ」と話しています。

八つ目は、知識を教える。お料理のことや地域の歴史、美術工芸品など、客室係はいろんなことをお客様に聞かれますから、そういうことを一所懸命教えるんです。

九つ目は、相性が合わない場合には配置換えをする。何回言ってもどうしても喧嘩をする社員同士は、配置換えをして、お互いに気持ちよく仕事ができるようにしています。

最後は、責任は女将である私にあるということ。

「最終的な責任は私が背負うから、自分が正しいと判断するとおりにやっていいよ」

と言うんですが、そういう雰囲気をつくり、社員たちの創意工夫を後押しできるようにしています。

――社員さんに対する深い愛情が伝わってきます。

〈小田〉
私の役割は舞台をつくることで、そこで美しく舞うのは社員たちです。社員たちがイキイキと楽しみながら働けるような環境を整えることが、私の仕事だと思っています。


(本記事は月刊『致知』2017年4月号 特集「繁栄の法則」より一部を抜粋・編集したものです)

 

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『致知』には各界の著名な方々が登場され、人生の教科書として学ばせていただきました。日々お客様をお迎えする中で、皆様が喜んでくださる大切な要素は、快適性、特別感、そして人と人との温かみです。その人の温かみである相手の立場に立って、思いやる心を『致知』で育てていただきました。

これからも『致知』から学ばせていただき、「笑顔で気働き」をモットーに、おもてなしに磨きをかけていきたいと思っております。

◇小田真弓(おだ・まゆみ)
昭和13年東京生まれ。36年立教大学文学部卒業後、加賀屋の小田禎彦(現・相談役)と結婚し、37年加賀屋に入社。38年同社取締役、54年に常務取締役就任。女将として現在に至る。著書に『加賀屋 笑顔で気働き』(日本経済新聞出版社)。

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