もしも今日が人生最後の日だったら……コロナ禍に問う、人生の最重要課題

大転換期のいま、政治や社会情勢、そして私たち一人ひとりの心も不安と混迷に揺れ動いています。そんな時代にも確固たる自己をもって生きるための心の整え方とは――。米沢藩士の娘として厳格なしつけを受け、明治大正昭和の時代をたくましく生きた祖母に薫陶を受けた作家・石川真理子さんに、禅の言葉を交えつつ、品格のある日本人として、時代の荒波を軽やかに乗り切る秘訣を語っていただきました。

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人生の最重要課題

「死ぬときまでは生きているから安心なさい」

この言葉は「今を生きなさい」ということにも繋がっています。まだおとずれてもいない死をいたずらに恐れ、不安にさいなまれながら過ごすということは、心がどこかに行ってしまっている状態のまま今日を過ごしていることになります。まさに「心ここにあらず」ということになるのです。未来を心配するあまり「今」を失っているのです。

今年(2020年)2月以降、報道が新型コロナウイルス一色になってしまったかのような状況となる中で、不安や恐怖を抱かなかった人はいないでしょう。極めて印象的だったのが、非常ボタンを押して満員の通勤電車を止めてしまった人がいたというニュースです。近くにいる人が咳をしていたため、恐怖でたまらなくなってしまったゆえの行動だったということでした。

マスクの売り切れが続出し、店頭から消えてしまったのもこの頃です。

心理学的に見ても「わからない」ということが最も人を不安に陥れるといわれます。「未知のウイルス」としてメディアの報道が過剰になっていたことも、恐怖心をあおる原因となっていたことでしょう。

このような状況を前に、私は強い危機感を覚えました。コロナそのものに対してでもありましたが、それ以上に、「多くの人々が大切な一日を失ってしまうのではないか」と案じたのです。

コロナの感染やそれに付随する経済をはじめとする社会的な変化に対して、いちおうの対策をとったうえで、この日常をできるかぎり快適に心安らかに過ごしていくこと。後悔しないため……つまり、もし今日が人生最後の日になってしまっても納得できるように過ごすことが、最も大事なはずです。

本当はコロナがあろうとなかろうと、いつこの人生が終わっても後悔しないように生きることが最重要課題なのです。まだ起きてもいないことを心配して、不安な気持ちでウロウロと過ごし、その日が最後になってもいいのでしょうか。いいわけがないですね。

この一瞬が永遠

さらに言えば、今日この日には、「今」だけでなく過去も未来も、いえ、永遠があるのです。次は山田無文老師の言葉です。

谷川の水は真っ蒼に澄んで淵に湛えられて動いておらんので、ちょっと見ると永遠のように見える。が、そうは見えるけれども、その水は実は一瞬の休みもなしに流れておるのである。
永遠ということは、鉄か石のように動かないことではない。動いているその一瞬、刹那の中に永遠を発見していかなくてはならないのであります。(中略)永遠ということは時間の問題ではないのです。刹那の中に全身全霊を打ち込んで時間を忘れておる、そこが永遠なのです。(中略)
人生は短い。その短い人生のひと時ひと時に全精神を打ち込めば、一日が永遠である、一時間が永遠である、一瞬が永遠である。(『愛語』山田無文著 禅文化研究所)

この力強い言葉を前に、私はどうしても「この一瞬が永遠」ということをわかりたいと切望しました。それからです、一服のお茶にも、あるいは一杯の珈琲にも、ありったけの心を込めるようになったのは。

これは、頭で理解しようにもできないことで、したがって言葉で説明するのは難しいのですが、そのように心がけるようになってからというもの、私の人生の時間は極めて濃厚になりました。

そこには深い感動があり、ひれ伏したくなるような感謝があります。外からもたらされる幸せではなく、内側の深いところからわいてくる歓びがあるのです。

ある程度の備えをしたうえで、なるようになると腹をくくって、今日の暮らしを大切にしましょう。今できることは、今しかできないことです。

これまでこうしたことを考えてこなかった人でさえ、今はよくわかるはずです。「コロナ禍」などと言われていますが、実は素晴らしい気づきをたくさん与えてくれているのです。


(本記事は『武士の娘だった祖母から教わった 女子の品格』(弊社刊)より一部を抜粋・編集したものです)
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◇石川真理子(いしかわ・まりこ)
昭和41年東京都生まれ。12歳まで米沢藩士の末裔である祖母中心の家で育ち、武家に伝わる薫陶を受ける。文化女子大学(現・文化学園大学)卒業。大手出版社の編集プロダクション勤務を経て、作家として独立。『女子の武士道』『女子の教養』『活学新書 勝海舟修養訓』『武士の子育て』(いずれも致知出版社)など著書多数。

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