あなたが言われて一番嬉しい言葉は何ですか? ~吉本興業伝説のマネージャーが語る仕事術~

昭和の国民的漫才コンビ「やすし・きよし」の横山やすしさん(故人)のマネージャーを務めたほか、「宮川大助・花子」さんなどの人気タレントを数多く売り出し、吉本興業・伝説のマネージャーとも言われる大谷由里子さん。そのユニークなコーチング、「人材育成法」はNHKや日経新聞など各種メディアで紹介されています。大谷由里子さんが語る仕事の極意、人財育成の要諦に迫りました。

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故・横山やすしさんに学んだこと

――コーチングとは具体的にはどういう指導法なのでしょうか。

〈大谷〉
以前、吉本興業でマネージャーの仕事をしていましたが、コーチングとマネージャー業はとても似ている。

マネージャーは芸人に「芸風をこうしい、ああしい」と指導はしない。ただひたすら「どう売れたいか、それならどういうネタがいいんだろうか」と話し合い、聞き役に徹して、能力を引き出そうとしていました。コーチングの理論と自分のやってきた仕事が一致するので興味をもって勉強したんです。

――吉本興業ではどなたの担当をされていたのですか?
〈大谷〉
「やすし・きよし」の横山やすしさんや、当時売り出し中の「宮川大助・花子」などを担当しました。横山さんにはわがままなイメージがあるようで、人には「大変だったでしょう」と言われます。

確かに、大阪で生放送に出演するはずなのにまだ地方の競艇場にいたり、「浮気がばれた。嫁が怒っているから姿を消す。オレに仕事をしてほしかったらおまえが嫁の機嫌をとってこい」って電話がかかってきたり、むちゃくちゃでしたよ(笑)。

でも、どんな仕事でも取引先や上司から無理難題を言われるでしょう。それを無理難題と思うかどうかの違いです。

コーチングの基本に“発想を「Why」から「How」に変えよう”という理論があるんですよ。無理難題を言われて、「なんでそんなこと言われなあかんねん」と思ったら、もうそこで終わり。あの頃、横山さんに何を言われても「どうする?」「どうやって解決する?」といつも考えていました。それがいまとても役立っています。

自分の幸せを見極める術

――われわれがコーチングを実践する場合、心掛けるべきことはどんなことですか?

〈大谷〉
まず、自分が幸せであることですよ。自分の心に余裕がなければ、心から他人を認め応援することはできません。

私が勉強したコーチングの専門書には、「コーチングをする側の人間は、金銭面も含め幸せでなければならない」と書いてありました。実はそこの部分にごっつ引かれて真剣に勉強したんです(笑)。

「中小企業冬の時代」とよく言われますが、私の知る範囲で人材がちゃんと育っていて伸びている会社はたくさんある。そういう会社の経営者は「社長、あんたほど幸せもんはいないわ」というくらい幸せに生きていますよ。

よく、「自分がどう生きたらいいか分からない」と質問を受けることがあります。その時、「言われて一番嬉しい言葉を知っていると、自分にとってどんな生き方が幸せか分かりますよ」と答えています。

「お金持ちですね」と言われて嬉しい人はやっぱりお金が好きだし、「変わっているね」と言われて嬉しい人はオリジナリティーを求めている。「先生」と呼ばれて嬉しい人は、権威を重んじる人だと思います。

私は社長時代に「偉いね」とか「すごいね」と言われても全然嬉しくなかった。まして「先生」なんて「やめて~」って感じ(笑)。

私は「あなたに会えて良かった」と言われるのが一番嬉しい。たくさんの人に出会い、大谷由里子のコーチングを通して幸せを見つけてもらうことが、何よりの幸せです。


(本記事は『致知』2003年8月号 連載「第一線で活躍する女性」に掲載された記事を編集したものです)

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◇大谷由里子(おおたに・ゆりこ)
昭和38年奈良県生まれ。ノートルダム女子大学卒業後、吉本興業入社。結婚退職後、企画会社を設立し、イベント、編集プランニングのほか、吉本興業とのジョイント事業「よしもとリーダーズカレッジ」を立ち上げる。その後独立。現在 企業・自治体を中心に「自立・自走」の人づくりを精力的に支援している。また、全国・各地からのオファーを受け、講演や研修、地方創生に伴うインバウンドの企画立案を行う。


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