聖徳太子の「和」の精神を「書」で世界へ——和プロジェクトTAISHI代表・宮本辰彦

全国47社の護国神社での一斉揮毫などを通じて、聖徳太子の「十七条憲法」に象徴される日本古来の「和」の精神の尊さを国内外へと発信している和プロジェクトTAISHI代表・宮本辰彦さん。今年の建国記念日にも、京都の平安神宮をはじめ各地の神宮で奉納揮毫を実現させ、その活動が話題となっています。困難・逆境の連続だったという歩みをお話しいただきました。

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苦難の果てに掴んだ使命

〈宮本〉
「以和為貴(和を以て貴しと為す)」。聖徳太子は「十七条憲法」第一条にこう記しました。私が代表を務める「和プロジェクトTAISHI」は、この「和の精神」の素晴らしさを発信し、世界平和へ貢献することを志としています。

2014年に50歳で始めたこの活動は、まさに「知命」と言う如く、私の天命であるように思います。振り返れば、紆余曲折を経ながらも、何かに導かれるようにここに辿り着きました。

その第一歩は、大学卒業後に就いた完全歩合制の営業職から始まります。漠然と憧れていた実業家への足掛かりとして選んだ仕事でしたが、何百件回っても契約が取れず、借金をするまで追い込まれました。成果を上げる同僚と自分の差はどこにあるのか。観察して分かったのは、彼らは心から営業が好きだということでした。一方の私は、実業家に憧れつつも、利益を追求する仕事に心底から喜びを感じられていなかったのです。

結局、営業職を3年で辞し、それから数年間、様々な職を転々としながら生活や借金返済のために働き詰めの日々を送りました。食事にも事欠き、周囲に「死ぬぞ」と止められるほど無茶な働き方をしていた時期もあります。

それでも「何が何でもやり抜く」との強い思いで働き続け、心身を壊すことなく何とか生活を立て直すことができたのでした。すべては自分の心次第─。がむしゃらに働く中で得たこの実感は、私の人生の基盤となりました。

しかし、その後も自分の本当の夢は何なのかと自問自答する日々が続きました。呼吸法と瞑想を通じて自分と向き合うヨガを知ったのは、まさにその頃です。近くのヨガ教室へ通い、30歳で自ら教室の運営を始めました。

生徒を指導しつつ、内観を深めること数年。ある日、「幸せに生きるために最も大切なことは、きちんと自分を愛すること」「自分を愛せなければ人も愛せない」と気づいたのです。ここから新たな道が開けていきました。

自分を愛するには産んでくれた両親を愛さなくてはいけない、両親を愛するには祖先を愛さなくてはいけない。そう辿っていくと、最終的に祖国を愛することの大切さに行き着いたのです。

では自分が愛すべき日本の心とは何だろうか。考え続け行き当たった答えが、「十七条憲法」にある和の精神でした。循環と調和と寛容という、自然の摂理から導き出されたこれら3つの言葉を、ひと言で言い表す「和」という概念を知った時、この精神を日本人、世界に伝えたい、それが自分の使命だとの思いが込み上げてきました。

和の精神を世界へ

〈宮本〉
こうして2014年、確たる構想も人脈も資金もない中、たった一人でプロジェクトを設立。そこから現在の平和揮毫の活動に至るまでには、3つの転機がありました。

1つには、岐阜護国神社を訪れた際、幾つもの平和祈念の碑を目にしたことでした。英霊は広くは人種差別の撤廃と世界平和のために命を捧げた殉死者であり、その魂を祀る護国神社はその慰霊と平和を祈る場。にも拘らず、両者は敗戦により、負のものとして語られることがしばしばです。その印象を変えたい、護国神社を「平和を祈る聖地」として認知させたいとの願いが湧いてきたのです。

2つには、愛知県・三ヶ根山の殉国七士廟を参拝した折の不思議な体験。「和の精神を広めたいなら私たち英霊を使いなさい」との声がどこからともなく聞こえたことです。

そして最後は、名古屋の熱田神宮で書家・竹本大亀氏による揮毫奉納に立ち合ったことです。書家の筆さばきに200人の観客の目が集中し、渾身の一筆で場の熱量が大きく膨らむのを目の当たりにした瞬間、「これだ!」と閃くものがありました。

護国神社で平和への祈りを込めた揮毫を行えば、和の精神を広めたいという願いが実現できるかもしれない。それも全国47都道府県で一斉に開催できたならどれほどインパクトがあるだろう。その夢の実現に燃える私は、第1回開催を半年後の「国際平和デー」、9月21日と決め、人と場所の確保に奔走しました。

全国各地の書家にネットを通じて片端からコンタクトを取り、プロジェクトの志を訴える一方、営業職時代の経験を生かして、何の繋がりもない全国の護国神社に開催のお願いをしました。何か私欲が絡んでいるのではないかと疑われながらも、諦めず粘り強く熱意を伝え続けるうちに、和の精神を広め、世界平和に貢献するという志に賛同する方々が増えていったのです。

そして、ついに9月21日、全国47社の護国神社での一斉揮毫が実現した時には、自力を遥かに超えた天の配剤を感じざるを得ませんでした。以後、活動は国内に留まらず、パリをはじめ世界にも広がっています。2018年からは高校書道部にも参加を募り、昨年の国際平和デーには47校もの参加があり、129社のマスコミが取材に訪れました。この輪を一層広げ、「十七条憲法」を世界記憶遺産に登録するのが現在の大きな目標です。

日本人は戦後、経済成長をひたすら追求し、いつしか自然の摂理に基づく和の精神を失ってしまったように思います。また、世界に目を転じると国家や民族間の対立が後を絶ちません。いまこそ「十七条憲法」の和の精神を日本人が取り戻し、世界に発信していかねばならないのです。

これからもこの大志を胸に抱き、世界平和に向かって邁進していく所存です。

©和プロジェクトTAISHI


(本記事は『致知』2021年2月号「致知随想」より一部抜粋・編集したものです)


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◇宮本辰彦(みやもと・たつひこ)=和プロジェクトTAISHI代表

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