SBIホールディングスCEO・北尾吉孝が読み解く「干支」の知恵

お正月を迎えるにあたり、意識されるのが新年の「干支」。龍()のデザインを様々にあしらったデザインや広告を目にし、「十二支」を身近に感じている方も多いでしょう。しかし、本来の干支の意味、字の成り立ちに思いを馳せることは意外に少ないのではないでしょうか。
本記事では、SBIホールディングス社長CEO・北尾吉孝氏に、古代からの知恵と歴史的観察の集積である干支学を活用し、自分や組織の運命を切り拓いていく意義をお話しいただきます。

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暦と結びついていった「干」と「支」

〈北尾〉
ここで簡単に干支の由来について触れておきます。

干支の歴史は非常に古く、十干(じっかん)も十二支(じゅうにし)もともに殷墟で発掘された甲骨にも記されているぐらいです。

殷の時代の古代中国人は殷羊(殷族の飼育していた羊で現存していない種類)といわれる羊を飼いながら中国に入った遊牧民族と考えられています。恐らく彼等は草原を求めて羊とともに、不慣れな土地を旅したと思われ、その生活は苦難と絶望に満ちたものであったでしょう。

彼等の行動と生活を支えるものは太陽や月明かり、煌めく星座、燃える火の光だけでした。そうしたものがなければ真っ暗闇であります。さらに、古代人達は季節による温度差や日照時間や太陽から発せられる熱量の変化、月の満ち欠けによる周囲の変化、星の位置と季節の変化等々といった天体現象と自らの生活との深い関わりに徐々に気付き始めました。天文知識の理解・蓄積とその活用に自分達の生活の向上発展がかかっていると認識し始めたのです。

もっとも、殷の時代はまだ狩猟や遊牧が中心で定着して農耕生活をほんの一部の所でしかしていなかったと言われてます。ですから恐らく規則的に農耕するようになった戦国時代から漢代にかけて古代人達は日、月、星座の変化や実体をより精緻に観察することにより、四季の変化や時刻の経過などについて多くの正確な知識を得て、それを農耕生活に活かし始めたのです。実に「暦」の知識の先行思想と言えるものであります。

 (中略)

自然の運行の循環を説明するために干支という循環序数詞が導入されたことにより古代人の暦学思考は進化し、より精緻な暦の成立に大きな役割を果たしました。こうした中で十干、十二支の文字の解釈も大いに分化発展していきました。とりわけ十干は天地自然の運行と結びつけて解されるようになりました。さらに干支は道教や儒教の影響を受け一種の経験哲学として整っていったと考えられます。

運命に乗じて運命を拓く

〈北尾〉
干支により、来たる年の年相を知れば、それにより注意すべき事、成さねばならない事等々を早々に実践的行動に移さなければなりません。

例えば、私はあの東日本大震災(2011311日)の年の1月の当社の年賀式で2011年の年相を発表しました。その時に「過去の辛卯の年をみると、自然災害など天変地異の異常や予期せぬ出来事が起き易い。

特に注意すべきは地震です。地下に蓄えられたエネルギーが地上に向かって動き出すのです。」と申しました。このように年相から何かを予知したら、直ぐに何らかの行動を取り、予知したことに備えることが必要なのです。

干支学は中国古代人から現在に至るまでの何千年にも及ぶ自然から学んだ知恵と歴史的観察の集積であり、統計上の確率や蓋然性に基づいて帰納的に生み出されたものであります。我々はこの過去からの貴重な遺産である干支を活用し、自分の運命や社運・国運といった組織体の運命をより良きものとしなければなりません。決して通俗的な占いではないのです。この点では易学と同じことです。

運命というものを多くの人はどうにもならない、持って生れた定められたものと考えておられる人が多いように思います。しかし、どうにもならないのは「宿命」です。例えば日本に生れるとか日本人に生れるとかいったことはどうしようもないものですから、宿命です。

しかし、運命は我々が変えられるものなのです。運命とは何かということを少し話して置きましょう。運命とは読んで字のごとく「命」を「運」ぶと書きます。では「命」とは何かですが、「命」とは人間の自由、わがままを許さない必然とか絶対とかいう意味を持っています。つまり天地自然を通ずる造化の働きの絶対性を表すものが「命」なのです。

「命」という造化の働きの中に「数(すう)」という原因、結果、因縁、果報の複雑かつ微妙な関係を表すものがあります。したがって運命の中に含まれている命数を明らかにすれば、運命に乗じて運命を切り拓いていく、すなわち立命していけるのです。

(中略)干支も易と同じで、自分の運命、社運、国運等々を良き方向へ切り拓いていく一つの手段と言えましょう。

2024年の干支「甲辰」の字義

2024年の干支は「(きのえたつ)」。最後に、それぞれの文字についての北尾氏の解説を特別に抜粋してお届けいたします。


(きのえ)
今まで寒さのために殻をかぶっていた草木の芽が、その殻を破り芽生えていく事象を表しています。

 〇辰(たつ)
「辰は伸なり。物みな伸舒(しんじょ)して出ずるなり」と『釈名』(後漢末の字書)にあるよう、万物が伸びることを指します。生の活動です。


(本記事は致知出版社刊『強運をつくる干支の知恵』(北尾吉孝著)に収録内容を一部抜粋したものです)

◉北尾吉孝さんの『致知』へのメッセージ◉

『致知』は私の愛読雑誌となっている。この雑誌を読み始めて、ある種の安心感(ほっとしたような気持ち)を得た。何故そのような気持ちを得たかというと、世の中には「人生いかに生きるべきか?」という問いの答えを探し続け、自己の修養に努めている方々が多くおられる、ということを知ったからである。

また、そうした方々から本誌を通じて教えられたり、勇気づけられたりすることがよくある。こういう方々を「道友」と勝手に呼ばせて頂いている。中江藤樹先生が、「天下得がたきは同志なり」という言葉を残しているが、私は『致知』を通じて道を同じくする「道友」にめぐり合うという幸運に恵まれた。

我々は君子を目指し、一生修養し続けなければいけない。私利私欲で汚れてしまう明徳を明らかにしなければいけない。そして、その修養の一番の助けにるのが、私はこの『致知』であると思う。

創刊四十五周年を心よりお祝い申し上げるとともに、一層の飛躍を期待したい。

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◇北尾吉孝(きたお・よしたか)
昭和26年兵庫県生まれ。49年慶應義塾大学経済学部卒業。同年野村證券入社。53年英国ケンブリッジ大学経済学部卒業。野村企業情報取締役、野村證券事業法人三部長など歴任。平成7年孫正義氏の招聘によりソフトバンク入社、常務取締役に就任。現在SBIホールディングス代表取締役社長。著書に何のために働くのか修身のすすめ(共に致知出版社)など多数。

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