全社に浸透した「げんこつの理」で時代の壁を打ち抜く。(株)コロナ 小林一芳社長がいま思うこと

「日本一のものづくり」を標榜する創業者・内田鐵衛の手によって、1937(昭和12)年、新潟県三条市に産声を上げた(株)コロナ。その子息である前社長から経営のバトンを引き継ぎ、折からのコロナ禍にも屈せず、全社を牽引しているのが現社長の小林一芳さんです。そこには、創業の頃から幾多の困難を乗り越える中で社内に息づいてきたある「精神」があるといいます。そんな小林社長がいま、考えていることとは。

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恵まれているからこそ挑戦し続ける

〈小林〉

「よくお考えになってください」

そんな言葉が私の口から思わず飛び出したのは平成28年、前社長の内田力(つとむ/現・会長)より次期社長の打診を受けた時でした。

創業者・内田鐵衛(てつえい)のご子息として当社を強力に牽引してきた前社長は偉大な経営者であり、自分など足元にも及ばない。創業来の主業務であった石油暖房機器に留まらず、いまや空調、給湯機器事業まで展開する当社の経営が、とても自分に務まるはずがないというのが偽らざる心境でした。

しかし前社長から「大丈夫だ、私が支える。もちろん社員も協力する」という力強い言葉をいただき、私は肚を括ったのです。

私がこの言葉に大きな勇気を得たのは、「げんこつの理」の精神が全社の隅々にまで根づいていることを実感してきたからです。1本1本の指は弱くても、5本合わせてげんこつにすれば厚い板も打ち抜ける。「げんこつの理」は、全社員で力を合わせて道を切り拓いてきた当社の歩みを踏まえて、前社長が提唱した当社の大切な精神です。

その原点となったのが昭和36年、38年に見舞われた記録的な豪雪でした。

すべての交通機関がストップし、商品の出荷が不可能となる中、社員一人ひとりが商品を背負って4キロにも及ぶ雪道を船着場まで運び、川蒸気船で出荷することで商品の供給を守り抜いたのです。この貴重なエピソードを社員教育などを通じて語り続けることによって、当社はげんこつの理の精神を大切に育んできました。

近年では、平成16年の7・13水害、中越地震、さらに19年の中越沖地震と、立て続けに見舞われた大災害でもこの精神は遺憾なく発揮され、当社工場が大きな被害を受ける中、奇跡的ともいえる早期復旧を実現しました。このげんこつの理が当社に深く浸透しているおかげで、私は曲がりなりにも今日まで社長の重責を担えたことを実感しています。

現在は、新型コロナウイルスという新たな試練に直面しています。当社と同じ名を冠したウイルスが世間を騒がせていることには複雑な思いもありますが、これを当社のブランド価値を一層高めていく契機にしていかなければならない、というのが私どもの思いです。

コロナという社名は、創業者が大学在学中に実験でよく見た放電の光と、石油コンロの青い炎、そして太陽の周囲に現れるコロナのイメージを重ね合わせ、ウイルスが発見される約30年も前の昭和10年に商標登録したものです。私自身も子供の頃、当社の開発したコンロの美しい青い炎に魅了された思い出があり、この社名には一方ならぬ思い入れがあります。

冒頭にご紹介した「行不由径〔行くに径に由らず/いくにこみちによらず〕」の言葉にも通じることですが、コロナという社名が多くのお客様に親しまれる全国ブランドに育ったのは、当社がこれまで愚直にビジネスの正道を歩み続けてきたからに他なりません。

長年にわたり、四季折々の日本人の生活に密着したお客様に喜ばれる商品を提供し続けてきたことに自信と誇りを持ち、「つぎの快適をつくろう。CORONA」という旗印の下、オンリーワン、ファーストワンの商品開発に全力で取り組んでいく。そのためにも私は、今後とも行不由径の心を失うことなく、当社の発展に尽力してまいる所存です。

(本記事は月刊『致知』2020年8月号 連載「私の座右銘」から一部抜粋・編集したものです)

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◇小林一芳(こばやし・かずよし)
昭和27年新潟県生まれ。45年新潟県立三条工業高校(現・新潟県央工業高校)卒業。内田製作所(現・コロナ)入社。平成14年取締役技術本部副本部長兼研究開発センター部長。その後、常務、専務、副社長を経て、28年社長に就任。

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