長尾瞳社長に聞く——「大学受験塾ミスターステップアップ」との出会い、経営者としての原点

大阪・楠葉にある「大学受験塾ミスターステップアップ」という個人経営の塾から始まり、現在は「御食事ゆにわ」(飲食店)「茶肆ゆにわ」(日本茶・中国茶専門店)「PATISSERIE Uniwa」(洋菓子専門店)、白金斎庭「Teas Üniwa 白金 & 斎庭 Salon de thé」(お弁当の宅配事業も開始)「ゆにわマート」(日用品販売)、食に関するセミナーや神社参拝ツアー・占い鑑定など、多方面に事業を展開しているグレイトティーチャー株式会社。
その経営を率いる長尾瞳社長は、大学受験の時に「大学受験塾ミスターステップアップ」を営む師と出会い、人生・仕事の根を養っていったといいます。長尾社長に経営者としての原点をお話しいただきました。

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人生を変えた師との出会い

(―─「大学受験塾ミスターステップアップ」ではどのようなことを学ばれましたか。)

〈長尾〉
専用の勉強机が一つずつ与えられ、それぞれの性格や個性、長所に合わせて勉強計画を立ててくれるんです。先生が一人で全教科を教え、その他の運営の仕事は奥様が切り盛りされていました。

また、先生も奥様も料理の腕前はプロ級。本格的なイタリアンからシンプルな塩むすびまで、夜食によくつくってくださいました。

(―─ただ勉強を教えるだけの塾ではなかったのですね。)

〈長尾〉
食事をつくることは単なる趣味の延長ではなく、「食べることは生きること」に直結していて、受験勉強とも切り離せないものだからこそ、食事を適当に済ませている塾生たちが多いのを見かねて、わざわざご飯をつくっていたんです。

それだけ先生は食をとても大切にしていました。そして、人生をどう生きていけばいいのかという問いや、どんな些細な疑問にも真正面から答えてくれました。

大学受験は、コツコツ地道な努力が求められ、人間の本質的な部分と向き合わなくてはならない自分との闘いです。塾生が落ち込むと先生は

「皆、できることなら受験勉強はしたくないだろう。でも一所懸命やれば忍耐力がつく。これはお金では買えない財産だ。あなたたちが20代、30代になり、社会人になっていまとは違う困難とぶつかった時、逃げずに壁を乗り越えられるようになる。受験勉強は、そんな人間の土台をつくってくれるんだよ」

「誰かの役に立てるのが本当の学問。そう考えたら勉強は一時のものではなく、生涯楽しめるものであり、無限の未来と可能性が広がっている」

などと話をしてくださるわけです。先生の話を聴くと、まるで頭のいい人の感覚が流入してくるようでモチベーションが一気に上がり、勉強が楽しくなる。塾には近所の方もよく人生相談に来られてました。

(―─素晴らしい先生ですね。)

〈長尾〉
私はいつしか先生に憧れと尊敬を抱くようになりました。こんな言葉も覚えています。

「10年後の自分がどうなっていたいか、一生かけても達成できるか分からないような大きな夢(ゴール)をもったらいい」

「1、2年先の自分は想像しやすいでしょ。でも10年先の具体的な自分の姿はパッとは浮かんでこない。だからよい。ボヤっとした妄想に留めず、臨場感をもってイメージし、そこから現在まで逆算していけば、いま自分が何をすればよいかが見えてくるんだよ」

と。私の心に真っ先に浮かんだのは「先生のようになりたい」という強い思いでした。

勉強する。食べる。泣く。笑う。掃除をする。歩く。日常の中で我われが当たり前に行う一つ一つのことから、先生のように人生を語れて、苦しんでいる人を救える、幸せにできる人になりたい、それが私の夢になっていきました。

起業家としての原点

(――その後はどのように歩んでいかれましたか。)

〈長尾〉
大学生になった私は、先生に声を掛けてもらい、塾で事務の仕事をさせてもらえることになりました。塾の営業が終わってから、先生と談笑したり、本にもメディアにも載らないような話を聴かせてもらうのが楽しみで、約10人くらいの大学生が毎日塾に押しかけていました。

ある日、大学生の彼らと将来について気持ちを確かめ合った日があったんです。そうすると、皆「これからも先生と一緒にいたいし、学び続けたいし、ついていきたい!」と。

具体的にどうしようかと考え至ったのが、10人のメンバーで起業することでした。

初めは小中の塾をやろうとしたのですが、お金も信用もコネも応援してくれる大人もいません。親でさえ「失敗するに決まっている!」と言うのです。

私たちは先生のところに行って「名義とお金を貸してください」と頭を下げました。先生は二つ返事で承諾してくださり、銀行から2000万円借りてくださいました。だけど、それだけでは資金が足りないので、先生の元教え子である現医師や弁護士の方々に、さらに2000万円、計4000万円のお金を出してもらいました。いま考えてもど厚かましい限りですよね(笑)。

集めた資金で「さあ、小中の塾をやるぞ!」となったのですが、結局立ち上げたのは飲食店「御食事ゆにわ」でした。

というのも、いくら志があっても、自分たちの日々の食事が疎かになれば道半ばに終わる。だから、まず私たちがきちんと食事ができる場所を確保しようということになったんです。

(―─「御食事ゆにわ」の立ち上げはうまくいきましたか。)

〈長尾〉
皆包丁も持ったことのない素人。先生の奥様に料理を特訓していただくところから始まりました。工事も初めてで見積もりの取り方も分からない。工事着工から半年経っても店は完成しない。工事費に加えて、保証金、空家賃、設備費、仕入れ、運営資金、生活費などであっという間に資金は底を突きました。

それでも、やっとこさ2006年11月に店をオープンさせました。しかし、初日から大惨事。開店時間にいきなりブレーカーが落ち、炊飯器のご飯はべちゃべちゃ。焦ってメイン料理の肉は焦がすし、皿は割る。料理が出てこないのでお客様に怒られる。

結局その日、全員で謝罪してお客様に帰ってもらうことに。段取りが悪く片づけが終わるのは毎晩深夜1時過ぎ。そこから初めての食事をし、その後反省会、帰宅する時には朝でした。そして朝から営業(笑)。

本当に滅茶苦茶な日々でしたが、ここまでやってこられたのは、どんなに大変でも決して諦めずに皆で力を合わせてきたことと、背中を押し続けてくれた先生がいたからです。

〈長尾〉
ただ事業が軌道に乗り始めても、借金などの名義は先生のままでした。事業で出た結果は全部自分たちの責任で受け止めていくというのが本来のあり方ですから、2008年に「グレイトティーチャー株式会社」を立ち上げて法人化し、先生は一線を退き、スタッフの教育に回っていただきました。

(本記事は2019年6月号 連載「第一線で活躍する女性」より一部抜粋したものです)

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◇長尾瞳(ながお・ひとみ)
昭和58年大阪府生まれ。京都ノートルダム女子大学在学中に仲間と起業。平成20年にグレイトティーチャー社長に就任。

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