人生は志と使命と挑戦——クラブ稲葉オーナーママ・白坂亜紀さん

やりたいことは絶対にやる、人生は挑戦――その信条を胸に、様々な困難を乗り越え、銀座の一流クラブ、クラブ稲葉オーナーママとして多方面で活躍する白坂亜紀さん。大学在学中からクラブのママを任され、一流の経営者やビジネスマンと接してきた白坂さんが語る波乱万丈の歩みと、自分だけでなく人を幸せにする「粋」な人とは――。

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やりたいことは絶対にやる

銀座のクラブは第二秘書室。そう言われるほど、いらっしゃるお客様は一流の経営者やビジネスマンばかり。私が経営する「稲葉」もそういう方々に贔屓にしていただき、昨年20周年を迎えました。

クラブはただお酒を嗜む場所ではなく、お客様もホステスも互いに刺激し合って自分を磨く場であると、20代の頃から銀座の街に教えてもらいました。その銀座への感謝や、支えてくださった方のご恩に報いるため、現在、銀座社交飲料協会理事や志高い女性の会・銀座なでしこ会、志塾INGの代表を務め、銀座の発展、後進の育成に力を注いでいます。

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私がホステスになったのは1986年、早稲田大学2年生の時。バブル絶頂期でホステスが足りないので手伝ってほしいという誘いがきっかけでした。気軽に始めたものの、すぐに、素晴らしい人たちに出会え、自分を高められるこの仕事の虜(とりこ)になりました。

一流経営者に指名されるために、新聞や本を読み常に政治経済の動向を知っておくこと、聞き上手になることはもちろん、聞いた話を覚え、次回来店された際に相手が興味関心のある話題を振るように心掛けました。

また、メールも携帯電話もない時代に、いらしたお客様全員にこつこつと手紙を書くなど、フロアでの華やかさとは一転、昼間には地道な努力を続けました。

そうした姿勢がお客様やオーナーからの信頼に繋がり、当時働いていた日本橋のクラブで女子大生ママとして登用され、大学卒業後はそのまま就職して雇われママを8年間務めました。

転機となったのは1995年。阪神・淡路大震災が起こり、「人生何が起こるか分からない。やりたいことは絶対やらなきゃ」と意志を固めるとともに、プロ野球選手の野茂英雄投手が

「人生は挑戦です」

と言い切り、当時無謀と揶揄されたメジャーリーグに果敢に挑んでいく姿に感電しました。

私も、クラブが数十軒しかない日本橋ではなく、ホステスにとってのメジャーリーグ・銀座の地で何千ものお店を相手に勝負したい! そう決意し、オーナーからの後継ぎの打診をお断りして、1996年、29歳で「稲葉」を立ち上げました。

独立後はすぐに雇われママと経営者の違いを痛感させられました。住んでいる星が違うと感じるほど、経営、人事など、いままで以上に責任が重くのし掛かってきたのです。

独立から3か月後によい物件を見つけたため新店を出すと、「2軒目を出して経営者気取りか。経営は男の土俵だ」などと辛辣な言葉を浴びせられ、潮が引くようにお客様が去りました。

しかし、ここで辞めるわけにはいきません。その頃第一子を出産したのですが、苦渋の決断の末、生後1か月の娘を九州にいる母に預けて仕事に没頭しました。

自己を磨き高める「粋」

その後はITバブルの後押しもあって2003年にバーを、翌年に料理屋を立ち上げ、クラブの100年企業化を目指して人材育成にも取り組み始めました。

順風満帆に思えたのも束の間、突如やってきたのがリーマン・ショックです。

あの時のことは忘れることができません。どの銀行も態度が一変し、新店舗開店のために借りた計1億5000万円の返金を迫られ、絶体絶命の状況に陥ってしまったのです。たたみ掛けるように、「銀座のママなんか男を騙してお金をつくるのは朝飯前だろ」という脅しを毎日のように受け、死ぬしかないと本気で思いました。

それでも私がお店や銀座のために真剣にもがき続け、「私が死んだら銀座の発展はもうこれ以上ありません!」と啖呵を切ると、ある銀行の方が自分の立場を顧みず、支払いの猶予に尽力してくださいました。また、君なら返すだろうからと1500万円の個人資産を貸してくださった方もいらっしゃいます。

銀座の街をよくしたいと志を立て行動したことで、多くの支えをいただき、地獄を切り抜けられたのだと思います。

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銀座にはこうした「粋」な方が大勢いらっしゃいます。「粋」とは見返りを求めず人のために尽くすことだと考えていますが、「粋」な方で真っ先に思い出すのは、独立当初から応援してくださったヤマト運輸元社長・小倉昌男さんです。来店の度に

「夢は自分だけのものだけど、志と使命を持って社会のために仕事をしなきゃいけないよ」
「知性を磨いて、働く女性の理想を見せてあげてね」

などと繰り返し教えていただきました。

その後、体調を崩され入院されてからも、秘書の方を通じて「志と使命を持って、銀座のママとして頑張るんだよ」との伝言を届けてくださいました。遠くから見守り続けてくださる小倉さんの「粋」な振る舞いと、「志と使命を持て」との言葉が心にズシリと響き、私の経営者としてのベースになっています。

自分が世の中のためにできることは何かと必死に考え、目の前の仕事に没頭していると、使命が下りてくる。その使命を一つずつ果たしていく中で、冒頭に紹介したような役職を次々と依頼していただけるようになりました。

銀座に集まるのはお金も地位も名誉もある方ばかりで、もちろんそこまで辿り着く努力も大変ですが、さらに上にある世界、人を幸せにしてあげることが自分の幸せと思える境地まで自己を磨き高める「粋」な方がいます。

この銀座の文化を受け継ぎ、銀座の発展のために今後も志と使命を持って、挑戦を続けてまいります。

(本記事は2017年9月号 連載「致知随想」より一部を抜粋したものです)

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