【澤田秀雄×北尾吉孝】時代を切り拓くリーダーに不可欠な3つの要素


新型コロナウイルスの影響をはじめ、かつてない時代の変化がグローバルな規模で起こっている昨今。この急激な変化の波にどう対峙していくべきか――。SBIホールディングスCEOとして金融業界に革命を起こしてきた北尾吉孝氏と、現エイチ・アイ・エスの設立やハウステンボス再建など、様々な新規事業を手掛けてきた澤田秀雄氏、二人の名経営者の対談から、時代を拓くリーダーの条件を探ります。
※対談の内容は2011年当時のものです。

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変化対応力が大事

〈北尾〉 
澤田さんは非常に早い段階でモンゴルにも出て行かれて、向こうの銀行を買収されましたよね。あれもいまは順調なんでしょう?

〈澤田〉 
はい、いまやモンゴル一の銀行になりました。買収したのは7、8年前のことでしたが、当時のモンゴルは辺境の地で、日本では誰も見向きもしない国でした。

初めて東京からモンゴルへ直行便が就航したのが、ちょうど社会主義から資本主義に移っていく時期で、元々国営だった銀行が全部払い下げになったんです。その時にある人から、銀行を入札してはどうかと言われたんですが、私は「そんな危ない国に投資するわけがないでしょう」と断りました。すると、値段が安くてモンゴル人も親日的だと言うので、マーケティングをしてみたんです。 

するともの凄く豊富な鉱物資源があることが分かり、この国は将来化けるかなと感じたことと、資本主義の中枢は金融にありますから、5年後、10年後にチャンスが巡ってくるかもしれないと考えて我々が入札したんです。 

結果的に、当時4番目で赤字だったその銀行は、いまモンゴル一になって、預金量が毎年40~50%増えています。モンゴルの経済にも寄与して喜んでいただいているんじゃないかと思いますね。 

〈北尾〉 
当時、モンゴルの銀行なんて誰も考えていませんでしたからね。やっぱり目の付けどころですよ。グローバルな視野を持ち、この先どんな事業が伸びるかをきちっと押さえておられる。いまの例のように、この国には資源がある、資源があればいずれ金融が伸びてくるという、そういう見方ですね。

〈澤田〉 
私はいろんなベンチャー企業に支援をしていて思うのですが、やはりしっかりとした思想や志がある起業家は、長く成功する確率が高いと思いますね。たまたま何かが当たったとかで短期間で成長しても、考え方のバックボーンがきちっとしていないと長続きしないと思うんです。

リーダーは「人間的魅力」を持て

〈北尾〉
そうですね。これは最近ある本に出ていたデータですが、いまから10年前につくられた会社で生き残っているのは6%程度しかないんです。100社のうち6社しか生き残らない。それが20年になると、1000社のうち3社ですよ。

〈澤田〉 
え? 20年でですか。

〈北尾〉 
はい。ちなみに澤田さんの会社は30年を超えておられますが、30年だと1万社に2・5社しかありません。確かにたまたま何かが当たって急成長する会社もある。でもそれを10年生き残らせて、隆々とさせている経営者がどれだけいるかといえば、ほぼ皆無に等しい。とにかくいまは時代が激変しているでしょう。会社を存続させるのがいかに難しいかということですよね。

金融界ではついこの間リーマン・ショックが起こり、それがようやく落ち着いてきたと思ったら今度はギリシャ・ショックが起こる。
そしていま起きているのは民主化の嵐でしょう。世の中どう変わっていくか分からない。その中でどうサバイブをしていくかが経営者の一番大切な任務だと思います。

〈澤田〉 
変化対応能力ですね。大きいから強いというよりも、その時代に変化、対応できる会社が生き残っていくんじゃないでしょうか。

〈北尾〉 
景気が悪いからといって、防空壕のような所にじっといてはダメなんです。その中でいかに成長の芽をつくるか。もし景気がよくなったら、いまの状況が3倍よくなるようにどう仕組みをつくっておくか。そういうことを考えないといけませんね。

〈澤田〉 
同感です。やっぱりリーダーには、先見性と素早い決断力、そして確固たるものの考えやポリシーを持っているかという人間性が不可欠であると思います。

〈北尾〉 
それにあえて加えるとするならば、人間的魅力でしょうか。

自分の周りにどれだけ有能な人を集められる人間的な魅力を身につけているか。優秀な人を見抜く目を持っているか。そしてその人を用いるための徳を備えているか。

人を使うというのは単なる「使用」で、任せて用いるのは「任用」、信じて任せるのは「信用」。この、信用できる人を自分のそばにどれだけ置けるか。

『論語』にもあるように「徳は孤ならず、必ず隣あり」ですよ。言い換えれば、リーダーが人間的魅力を持つことが事業の成否において非常に大きなウエイトを占めると思うんです。


(本記事は『致知』2011年5月号「新たな地平を拓く」より一部を抜粋・編集したものです)

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◇北尾吉孝(きたお・よしたか)
昭和26年兵庫県生まれ。49年慶應義塾大学卒業、野村證券入社。53年英国ケンブリッジ大学卒業。平成4年野村證券事業法人三部長。7年ソフトバンク入社、常務取締役。11年ソフトバンク・インベストメント(現SBIホールディングス)社長。12年SBIイー・トレード証券会長。著書に『何のために働くのか』『君子を目指せ小人になるな』『安岡正篤ノート』など多数。最新刊に『森信三に学ぶ人間力』(いずれも致知出版社)。

◇澤田秀雄(さわだ・ひでお)
昭和26年大阪府生まれ。48年旧西ドイツ・マインツ大学留学。55年インターナショナルツアーズ(現エイチ・アイ・エス)設立。平成7年店頭公開。8年航空会社スカイマークエアラインズ設立。11年協立証券(現エイチ・エス証券)代表取締役。15年モンゴルAG銀行(現ハーン銀行)会長。22年ハウステンボス社長。

【北尾氏から寄せられた推薦の言葉】

北尾吉孝 氏(SBIホールディングス社長)

41年という長きに亘る人間学の啓蒙活動に深甚の敬意を表したい。致知出版社の出版物のほとんどの書物と毎月刊行される雑誌『致知』から小生は今日までどれだけ多くのことを学ばせて戴いたかを考えると感謝に堪えない。これからも我が人生の指南書となって導いてくれると信じ、頼りにしている。

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