2020年11月30日
いつの世にも、思いを次々と実現し成功していく人がいる一方で、いくら真面目に努力しても思いが叶わず、不本意な人生を送っている人がいます。両者の間にはどのような違いがあるのでしょうか。「阿頼耶識」の存在を通じて成功のための心の法則を説く無能氏と、脳の機能を活用した成功のためのノウハウを説く西田氏が語り明かす、成功や幸福を手にする極意とは――。
※対談の内容は2003年当時のものです
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脳の「記憶データ」が人間をつくる
〈無能〉
西田先生の本は、大切なことを短い言葉でズバッと表現なさっていて、とてもよく理解できます。例えばこれ。
「この世には3種類の人間しかいない。『できる』と予感する人間。『できないかもしれない』と予感する人間。『できっこない』と予感する人間である」
それからこんなのもありましたな。
「金儲けが上手な人は、金儲けが大好きで、お金を儲けることはとても簡単だと思っている」
「金儲けが下手な人は、お金を儲けることが嫌いで、金儲けはとてつもなく難しいことと思いこんでいる」
非常におもしろいし、なるほどと思うところがある。先日講演をした時にかなり引用させていただきましたが、皆さんとても喜んでくれました。
〈西田〉
それはうれしいですね。私も先生の本を拝見させていただいて、もっと前にお会いしていれば、こんなに苦労はしなかったのに、と思いました。
私は、人間の脳の機能を利用して、ビジネスマン、スポーツ選手、受験生等のモチベーションの向上や能力開発のお手伝いを30年間させていただいているんですが、当初はそういう研究をしているところがどこにもなくて、最初の10年間は失敗続きでした。能力開発に携わっている人で、私ほど失敗の経験の多い人間はいないと思います(笑)。そうした経験を通じていろいろなことが分かってきて、いまの能力開発に役立っているんです。
〈無能〉
この本には西田先生が苦労して確立してこられた理論がたくさん詰まっていますが、中でもこの言葉を見た時私は非常に驚きました。
「単刀直入に言おう。人間とは、脳に記録された記憶データである」
なぜかというと、私がずっと説いてきた心の法則の核ともいえる「阿頼耶識(あらやしき)」を発見した時の記憶が甦ってきたんです。阿頼耶識の説明を求められると、まさに西田先生のおっしゃるこの言葉につながるんです。
「阿頼耶識」に貯蔵される2種類の記憶
〈無能〉
「阿頼耶」というのは大乗仏典に出てくる言葉なんですが、この意味はヒマラヤを例にとると分かりやすいんです。ヒマラヤのヒマというのは雪のことで、ラヤは蔵という意味です。ですからあの山は、「雪の蔵」というちょっとしゃれた名前なんですね。そしてそのヒマの代わりに阿という文字をかぶせると、「貯蔵されたるもの」という意味になるんです。つまり、人間の体験した様々な記憶、それは「業(カルマ)」とも呼ばれるものですが、それが心の奥底にあるということなんです。
いままでその人が体験したり、考えたり、感じたりしたことは、すべてその阿頼耶識の中に記憶されるんです。その内容は、人の顔が全部違うように、一人ひとり全部違っているんですが、簡単に分けると2種類しかないんです。
〈西田〉
その二種類というのは?
〈無能〉
陰か陽です。陰というのはマイナス、ネガティブです。不安、恐れ、心配、怒り、そういう種類の記憶ですね。陽はプラス、ポジティブです。嬉しいこと、楽しいことです。阿頼耶識は、そこに蓄えられている材料をもとにして未来を創るので、日頃からプラスの考え方をしている人は、阿頼耶識の中にそういうものが蓄積されて、未来にプラスのものが出てくる。ところが、心配したり、怒ったり――これはいろいろな意味で利口な人ほど未来を厳しく考えてそうしがちなんですが――そういう人は未来にその通りに暗い恐ろしいものばかり生み出していくんです。その阿頼耶識について、僕は長年説き続けてきたわけです。
ですから、西田さんのおっしゃるように、人間というのは単なる記憶だけの存在だというふうに考えてもいいかもしれません。オギャーと生まれた時から、母親のおっぱいを飲んで快い思いをしたり、たまたま着物に紛れ込んでいた針が体に刺さって、不快な思いをして泣くというような体験を、それぞれの人が次々と重ねていくわけです。阿頼耶識というのはそうした過去をすべて蓄積し、それを素材として未来を創り出してしまう記憶の貯蔵庫であって、それを西田先生は「記憶データ」という分かりやすい現代語でズバッと言われた。これには私もわが意を得たりという思いがするんです。
〈西田〉
阿頼耶識は大乗仏典にある言葉だとおっしゃしましたが、先人は素晴らしいなと私も思うのは、脳の機能が分かっていない数千年も前から、すでにいまわれわれがやっている能力開発に通ずることを説いていたんですね。
例えば、古来から拝むという行為がずっと行われてきましたが、これは脳の理屈からいえば、右の脳を使って奥の脳、本能の脳へ肯定的な記憶を入力してストレスを解消するというプロセスなんです。私は無宗教なんですが、そういうことが分かって、拝むという行為がいかに重要かということに気づかされたんです。
◇西田文郎さんも『致知』をご愛読くださっています◇
私は長年にわたり人間の脳の働きについて科学的な研究を重ねてきました。
その私が長く『致知』を読み続ける中で強く感じることは、日本人の心を救うのに『致知』ほど貢献できる月刊誌はない、ということです。
これからの時代、『致知』はもっともっと多くの人たちに読まれて然るべき月刊誌だというのが私の正直な思いです。
致知を開くと、社会的には無名でも、深い思いやりの心で人を導くような、素晴らしい人間的成功者と多く出会うことができます。
混迷を極める今の時代にこそ、日本人の道しるべとして『致知』をたくさんの方にお読みいただきたいと願っています。
――サンリ会長 西田文郎
※本記事は『致知』2003年2月号 特集「信念の力」より一部を抜粋・編集したものです
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◇西田文郎(にしだ・ふみお)
昭和24年東京都生まれ。昭和40年代から科学的なメンタルトレーニングの研究を始め、能力開発プログラム「スーパーブレイントレーニングシステム」を構築。科学的、実践的なメンタルマネジメントを多分野に導入する。トップスポーツ選手のメンタルアドバイザーや企業の社員教育、ビジネスマンの潜在能力開発指導などに長年あたってきた。著書に『№1理論』『面白いほど成功するツキの大原則』等。
◇無能唱元(むのう・しょうげん)
昭和14年長野県生まれ。飛騨の臨済宗円空庵禅通寺に入山し、小倉賢堂師に師事。唱元の法名を授かる。唯心円成会を主宰し、阿頼耶識の活用によって夢を実現する法、自己コントロールによって対人関係を整える法などを説く。『新説阿頼耶識縁起』『人蕩術奥義』『サトリ』『真人』『貝原益軒「楽訓」を読む』など著書多数。