【在宅勤務を応援! 自宅でできるエクササイズ】ふくらはぎマッサージで冷え知らず

在宅勤務や外出自粛が続くと、どうしても運動不足になりがちです。しかし、自分や家族を守るための「ステイホーム」で却って健康を損なってしまっては本末転倒。全3回の「自宅でできる健康エクササイズ」シリーズでは、ご自宅で簡単にできるストレッチやエクササイズを、分かりやすいイラスト付きでお届けいたします。第3回では、血液のポンプ機能を担うふくらはぎのセルフマッサージで健康を保つ秘訣について、身心健康堂院長・槙孝子さんにお伺いしました。

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なぜ”ふくらはぎマッサージ”なのか

ふくらはぎマッサージ療法を発見された石川洋一先生は、外科医として活躍されていた30年ほど前、点滴がうまく落ちない患者さんのふくらはぎが、妙に冷たいことに気づかれました。すぐにふくらはぎをマッサージしてあげたところ、患者さんの顔に赤みがさし、点滴もスムーズに体内に送り込まれ始めたそうです。

ふくらはぎをマッサージすることで全身の血行が改善され、病気の克服や健康増進の大きな助けになるのではないか。

他の多くの患者さんにもふくらはぎマッサージを試し、血流アップ効果を確信した石川先生は、メスを置き、以来30年近くふくらはぎマッサージ療法の普及に尽力されたのです。

私が院長を務める「身心健康堂」は、元々鍼灸指圧の治療院でした。しかし10年前、代表の鬼木豊先生が石川先生の指導の下、ふくらはぎマッサージ療法を導入したところ、患者さんの治療効果が格段に向上し、鍼灸では治癒の難しかった不眠や鬱などにも光明が見出せました。そこで導入2年後には、当院はふくらはぎマッサージをメインに施術を行うようになったのです。

30代の女性美容師さんは、子供の頃から寒がりで、ずっと冷えに悩まされていました。勤め先の美容院は、年中エアコンの設定温度が低めで、体の冷えと便秘、膝痛に悩まされていました。

ふくらはぎを拝見すると、奥のほうに硬い筋肉の塊があり、そこを中心に丁寧に揉みほぐしてあげました。ご自宅でもマッサージを励行していただくと、3日目のマッサージ中に脚がポカポカ温かくなり、翌朝は何年かぶりに起き抜けのお通じがあって嬉し泣きをされたそうです。

40代の男性は、血圧が高くて頭がいつも重く、肩や腰をはじめあちこちが凝って痛んだり、頭がボーッとして辛い状態が続いていました。そのうち血圧の上が180を超え、目まいが酷くなって落ち込んでいらっしゃいました。

そこで風呂上がりにふくらはぎを丁寧にマッサージしたところ、体全体がすごく楽になり、血圧計で測ると、風呂に入る前より15も下がっていたそうです。その後も毎日20~30分マッサージを続けたところ、ひと月で血圧は高くても150台にまで下がり、目まいもほぼ解消。肩や腰の痛みもスッキリして楽になったそうです。

その他にも、長年の腰痛が施術2回でほぼ消えた、がんの腫瘍マーカーの値が下がった、すっきり痩せてお肌がツヤツヤしてきた、なかなか眠れなかったお子さんがマッサージ2分でスヤスヤ眠りについた等々、多数の喜びの声をいただいています。

ふくらはぎマッサージが素晴らしいのは、簡単、安全で、効果が目に見えることです。床の上、椅子の上、布団の中、入浴中など、ふくらはぎを手で触れる状況ならいつでも気楽に実践できます。痛い、辛い、面倒くさいなどのストレスがなく、とても気持ちよく、身心が調子よくなっていくことを体感できるので、飽きっぽい人でも続けていけます。

”ふくらはぎ”はセルフドクター

ご自分のふくらはぎを手で軽く揉んでみてください。さわり心地はいかがでしょうか?

ふくらはぎは身心の健康状態を教えてくれるセルフドクターです。以下の項目を参考に、ご自身のコンディションをチェックしてみてください。 

【長生きするふくらはぎ】

・冷えていたり熱っぽくなく、温かい

・ゴムまりのように弾力がある

・つきたての餅のように柔らかい

・皮膚に張りがある

・奥にしこりがない

・指で押した時、酷い痛みがない

・指で押して離すと、すぐに元に戻る

・痛みやだるさがない

【早死にするふくらはぎ】

・掌より冷たい

・ほてったように熱い

・弾力がなく、フニャフニャしている

・ガチガチに硬い

・むくんでパンパンに張っている

・しこりがある

・押すと酷く痛いところがある

・押した指の痕が消えにくい

健康を維持する上で大切なことは、少しでも早く体の異常に気づき、対処することです。“早死にするふくらはぎ”の項目に該当するものが多い方は、ぜひ以下のポイントを踏まえてふくらはぎマッサージを実践していただき、身心の不調が重篤に至る前に対処していただきたいと思います。

【ポイント】

・血液を心臓に戻すつもりで、必ずアキレス腱から膝裏に向かって揉みます。

・指で押しながらお腹を凹ませて息を吐き(腹式呼吸)、指の力を抜きながら息を吸います。焦らず、ゆっくり行います。

・「ちょっと痛いけど気持ちいい」強さで揉みます。ふくらはぎが硬い人は、最初は無理をせずさするだけにし、決して力を入れすぎないこと。笑顔をつくると筋肉の緊張がとれます。

・いつ、どこで、一日何回やっても構いません。痛い、辛いと感じたら無理せずやめます。入浴後など、ふくらはぎが温まっている時にやると効果的です。

・汗や尿が出やすくなるので、前後に水やぬるま湯をまめに飲んでください。

【基本のマッサージ】

<ふくらはぎの内側を指圧する>

①床に座り、右足の裏を左膝の側面に引き寄せ、ふくらはぎの内側を上に向ける。

②両手の親指の腹を重ねて内くるぶしに置き、すねの内側の骨に沿って、足首から膝に向けて2~3秒間隔でゆっくり指圧。

③膝まで達したらもう一度。

④左脚も同様に。

<ふくらはぎの中央を指圧する>

①床に座って右膝を立て、左右の親指を重ねてアキレス腱に当てる。

②アキレス腱から膝裏に向け、2~3秒間隔でゆっくり指圧。

③膝裏に達したらもう一度。

④左脚も同様に。

<ふくらはぎの外側を指圧する>

①右向きに横座りし、右脚の内側を床に付ける。

②両手の親指の腹を外くるぶしに置き、ふくらはぎと骨の間にあるくぼみに沿って、足首から膝に向け2~3秒間隔でゆっくり指圧。

③膝まで達したらもう一度

④左脚も同様に。

血液は、人体の60兆個もの細胞に酸素や栄養素を運び、いらなくなった老廃物や二酸化炭素を回収しています。血が巡らない体は冷え、衰えていきます。

いつでも、どこでも、手軽に、誰でも取り組めるふくらはぎマッサージで、多くの方が健康長寿を実現されることを願っています。

(本記事は『致知』2014年10月号 連載「大自然と体心」より一部を抜粋・編集したものです。)

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◇槙 孝子(まき・たかこ)
昭和26年新潟県生まれ。大学卒業後、鍼灸専門学校を経て鍼灸師の資格を取得。平成16年身心健康堂に入所。その後、ふくらはぎマッサージ創始者の外科医・石川洋一氏の指導等を受け、ふくらはぎマッサージ療法の普及活動を推進。著書に『長生きしたけりゃふくらはぎをもみなさい』(アスコム)など。

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