【在宅勤務を応援! 自宅でできる健康エクササイズ②(全3回)】——大腰筋を鍛える“つかまりスクワット”

在宅勤務や外出自粛が続くと、どうしても運動不足になりがちです。しかし、自分や家族を守るための「ステイホーム」で却って健康を損なってしまっては本末転倒。全3回の「自宅でできる健康エクササイズ」シリーズでは、ご自宅で簡単にできるストレッチやエクササイズについて、分かりやすいイラスト付きでお届けいたします。第2回では、筑波大学院・久野譜也教授に「身体を動かす機能を保つための筋肉」である大腰筋の簡単なトレーニング方法をお話いただきました。

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体の不調は筋肉の衰えにあり

(久野)

筋肉は私たちの生きる活力を生み出す工場のような存在なのですが、その一方で、人間の筋肉は20代をピークに中長期的に細く小さくなっていき、何も手を打たなければ、およそ年1%の割合でじわじわと減っていくことが分かっています。

例えば、20代の時は3千ミリリットルの排気量の車であり、40代、50代になってその排気量が1千ミリリットルに落ちてしまったとしましょう。3千ミリリットルなら楽に登れた坂道でも、1千ミリリットルだとアップアップになってしまうに違いありません。要するに、40代、50代の皆さんは、かつて3千ミリリットル時代にやっていたのと同じ量の仕事を、いま1千ミリリットルでやっているようなもの。40代、50代になると、「疲れが溜まるようになった」などと口にする方が増えますが、その原因は「自分」という車を動かす排気量、つまり、筋肉量が低下してきたことが原因だったというわけです。

また、筋力が低下すると、歩いたり体を支えたりといった基本的な生活機能がガクンと落ちてきます。すると、ちょっとした作業を行っても大きな疲労感を覚えるようになり、それが面倒で家事をしたり、外で何かをしたりする意欲をだんだん失ってしまいます。

そして普段の生活で体を動かさずにいると、さらに筋肉が減ってしまい、一層動くのが嫌になってしまうことになります。こうした悪いサイクルが何年も積もり積もって体が動かなくなっていき、多くの方が〝寝たきり老人〟になっていくわけです。

皆さんは、「サルコぺニア」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。ラテン語の「サルコ=筋肉」と「ぺニア=減少」が組み合わさった言葉で、筋肉量の減少が過度に進んでしまうことを指します。サルコぺニアは、高齢者に進みやすい傾向がありますが、40代、50代の働き盛りで〝自分はまだまだ若い〟と思っている皆さんも、甘く見てはいけません。

ここでちょっと普段の生活を振り返ってみてください。ひょっとして一日中パソコンに張りついているとか、歩くのは通勤の行き帰りくらいで、あとはほとんどデスクに座りっぱなしで仕事をしているようなことはありませんか?

もしそうだとしたら、たとえ40代、50代でも既に体の中では筋肉量低下が着々と進んでいると考えてよいでしょう。厳しいことを言うようですが、こうした方々は、「もう自分は〝寝たきり予備軍〟の状態になっているんだ」というくらいの自覚を持ってください。

「寝たきりコース」へ進むか、「健康長寿コース」へ進むかは、40代、50代のこの時期に筋肉を使う習慣をしっかりつけているかどうかで決まってくると言っても過言ではありません。ですから、少しでも思い当たる方は、早くコースを切り替えてください。とにかくここが運命の分かれ目です。

それでは以上の話を踏まえ、筋肉を効果的に鍛えて、「健康長寿コース」へ進むための秘訣、簡単エクササイズを紹介しましょう。

〝大腰筋〟を鍛え、10歳若返る簡単エクササイズ

よく人は「足から老化する」と言われます。皆さんは、下半身と上半身とでどれくらい筋肉量の減少率や萎縮度が違うかをご存じでしょうか。何と、下半身のほうが1.5倍も大きいのです。

足の筋肉が衰えれば、だんだん歩行能力が低下してくるようになります。中でも衰えが表れやすいのが「歩行スピード」です。

なお歩行スピードというのは、歩く際の「ピッチ(歩調)」と「歩幅」によって決まっています。このピッチのほうは、老化の影響をあまり受けません。一方、歩幅のほうは、40代、50代から年齢を重ねるごとに少しずつ低下していくことが分かっています。

ではなぜ、歩幅が狭くなっていくかというと、その原因は、近年の研究によって、〝大腰筋〟の衰えにあることが分かりました。

大腰筋は、腰の脊柱と太腿の大腿骨とを繋いでいるインナーマッスルです。上半身と下半身とを繋いでいる唯一の筋肉であり、直立二足歩行をするために非常に重要な役割を果たしていることが分かっています。

また、大腰筋は歩行の際に足を引き上げたり、踏み出したりする動作を司っているのですが、この筋肉が衰えてくると、足を大きく上げたり、大きく踏み出したりすることがだんだんとできなくなってきます。それで歩幅が狭くなり、歩行スピードが低下していくというわけです。

つまり、大腰筋というのは、私たちの〝動く機能を保つための筋肉〟であり、〝人間らしさを保つための筋肉〟であるといってもよいでしょう。私は大腰筋をしっかり鍛えていけば、人間は「一生動ける体」でいられるのではないかと考えています。そして、その大腰筋を鍛えるのに効果的なのが、次の「つかまりスクワット」です。

◆筋トレメニュー【つかまりスクワット】

①まず両足を肩幅に広げ、椅子の背を持って真っすぐ立ちます。

②上体は真っすぐのまま、膝を曲げていきます。息を吐きながらゆっくりと腰を落とし、腰の高さくらいまで腰を沈ませてください。その後は、息を吸いながらゆっくり元の姿勢に戻ってください。

体力に合わせて1日10回~30回行うとよいでしょう。なお守っていただきたいポイントは、膝を曲げる際に膝頭がつま先より前に出ないようにする点。膝がつま先より前に出てしまうと、膝関節を痛めるリスクが高くなるのです。それに、深く屈伸すればよいわけではなく、腰を膝の高さに沈ませるくらいで十分です。あまり深く曲げ続けていると、膝の関節に大きな負担を掛けることになります。

このスクワットは、下半身の筋肉を鍛えるのに最も代表的な屈伸運動で、太腿の筋肉やお尻の筋肉が全体的に鍛えられ、深層部の大腰筋も効果的に鍛えられます。

また、筋トレのような「無酸素運動」とともに、ウォーキングなどの「有酸素運動」を取り入れるとより効果が高まるでしょう。

 有酸素運動は、筋細胞など体の隅々の細胞にまで酸素を運んでくれる毛細血管を増やし、より効率的にエネルギーを生み出せるようにしてくれます。末梢への血流がグッと増えるので、動脈硬化を予防したり、肌の艶をよくしたり、冷えや浮腫が解消したりといったプラスの効果が期待できます。

(本記事は『致知』2016年3月号 連載「大自然と体心」より一部を抜粋・編集したものです。)

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◇久野譜也(くの・しんや)

昭和37年岐阜県生まれ。平成4年筑波大学大学院博士課程医学研究科修了。ペンシルバニア大学医学部客員研究員、筑波大学体育科学系講師などを経て、23年筑波大学大学院人間総合科学研究科教授に就任。14年には大学発のベンチャー「㈱つくばウエルネスリサーチ」を設立。『寝たきり老人になりたくないなら大腰筋を鍛えなさい』(飛鳥新社)『50歳からの若返り筋トレ』(NHK出版)など著書多数。

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