【在宅勤務を応援! 自宅でできるエクササイズ】1日5分でコリや痛みをほぐす“骨ストレッチ”

運動不足で身体の節々が痛んだり、あちこちが凝ってしまったり、なんだか調子が悪い……在宅勤務や外出自粛期間が長引くと、そんな悩みも出てくるのではないでしょうか。自分や家族を守るための「ステイホーム」で却って健康を損なってしまっては本末転倒です。そこで、全3回の「自宅でできる健康エクササイズ」シリーズでは、ご自宅で簡単にできるストレッチやエクササイズについて、分かりやすいイラスト付きでお届けいたします。第1回は、数分でコリや痛みをほぐす“骨ストレッチ”の考案者、松村卓さんに基本のメソッドをご紹介いただきました。

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骨身に任せて動くこと

(松村)

皆さんはご自分の体を楽に、自在に動かすことができますか。

体が重い、疲れやすい、あちこちに痛みがある、なかなか気力が湧いてこない……。これは年だから仕方がない、と諦める人がいる一方で、年を取っても元気な人、むしろ年齢を重ねるごとに無駄な動きがなくなり、キビキビした、美しい立ち居振る舞いをする人もいます。

その違いは、にあります。

昔は、骨が豊かと書いて「體」と読みました。また、骨が折れる、骨身に任せる、彼は気骨がある、骨太だ、あいつは骨抜きにされた、お前の骨は拾ってやる等々、骨という字を用いた言葉が実にたくさんあります。私は自らの体験を通じて、先人がなぜかくも骨を大切に考えていたかを研究するようになりました。

私は学生時代、陸上競技の短距離走者として日本一を目指していました。当時は、ソウルオリンピックで筋肉の弾丸のようなベン・ジョンソンが、スーパースターのカール・ルイスを破った衝撃から、筋肉さえつければ速くなれるという考え方が主流でした。

私もそれを信じて、ベンチプレスやバーベルスクワットなどの筋力トレーニングに懸命に取り組んでパワーアップを図りました。ところが、それが走りに生きたかといえば、決してそうではなかったのです。それどころか、故障を頻繁に起こした挙げ句、一時は歩くことさえままならないくらいに体を痛めてしまったのです。

筋肉を過度に鍛えることの弊害を痛感した私は、それまでとは異なるトレーニング法を模索し、行き着いたのが古武術の研究で有名な甲野善紀先生でした。甲野先生のしなやかな動きが、筋肉ではなく、骨が主体になって生まれていることに気づいた時には、それまでの常識が180度ひっくり返るほどの衝撃を受けました。

大事なことは、見えない骨をいかに感じるかということ。自分の体を深く内観し、「骨身に任せて」動くことで、筋肉はあまり使わなくてすみ、体が疲れず、楽に動かせます。首や肩のコリ、膝痛、腰痛も緩和して、自分の体を楽に使いこなせるようになるので、スポーツ選手に限らず、一般の方々の日常生活や健康づくりにも、大きな効果が実感できるのです。

私はそれまでのトレーニングの常識をいったん捨て、体の使い方を一から見直して、体のコリや痛みを取り、心地よく動ける体をつくり出す「骨ストレッチ」を考案したのです。

1日5分でコリや痛みをほぐす

ここで、骨ストレッチの基本のメソッドからご紹介します。

【基本ポーズ】

①片方の手の親指と小指を繋いで輪をつくる

②もう片方の手の親指と小指で、手首の両側のグリグリした部分を押さえる

この状態から、次の「手首ブラブラ」メソッドを行ってみましょう。

【手首ブラブラ】

①骨ストレッチの基本ポーズをつくり、腕を臍の前に出す

 ②押さえられたほうの手首を左右にブラブラと振る

 ③これをリラックスした状態で左右7回ずつ繰り返す

運動前のウォーミングアップで手をブラブラさせることがありますが、実はその後に腕を回してみると、かえって腕が重くなっているはずです。それは、体の一部分しかほぐされていないからです。

私たちの体は、腕、脚、頭、胴体と、どれも単独で動いてはおらず、それぞれが連動して様々な動作を行っています。ですから、体のコリや痛みを取り除き、自然な動きを取り戻すには、まずは体のパーツを繋げていく必要があります。そこで鍵を握るのが骨なのです。滑らかな体の動きは、骨を上手く連動させることで初めて実現するのです。

親指と小指を使うのは、無駄な力が抜け、バラバラに動いていた体の各パーツが1つに繋がり、私が言うところの「パワールート」をつくり出す効果があります。

こうした基本を踏まえ、次に肩こりに効果のあるストレッチをご紹介します。

【手首肩甲骨ストレッチ】

①肩幅に足を開いて立ち、骨ストレッチの基本ポーズをつくる

②押さえられたほうの肘を直角に曲げる

③顔を正面に向けたまま後方に捻る

④左右それぞれに7回1セットずつ行う

肩甲骨の一帯は、上半身の筋肉をほぐす上でとても重要なポイントです。「肩に力が入っている=力んでいる」状態というのは、この一帯がこわばって動かないことです。また、肩甲骨は鎖骨や、肋骨、骨盤などの動きにも連動しているため、この「手首肩甲骨ストレッチ」を行うと、上半身全体が刺激され、こわばりが楽にほぐれていきます。

【手首背伸び】

①肩幅に足を開いて立ち、骨ストレッチの基本ポーズをつくる

 ②そのまま腕を上げ、天を突くようにして背伸びをする

 ③それぞれの腕で7回1セットずつ行う

仕事などで疲れた時、組んだ両手を裏返すようにして背伸びをしていませんか。しかしこのやり方では肩から首にかけての一帯が硬直化し、可動域が狭くなるため、直後に肩を回すと、腕が重く、思うように回らないことに気づくはずです。

この手首背伸びは関節の詰まりを取り除いて肩のこわばりを楽に、スッキリしてくれます。毎日続けていると猫背も解消されるのです。

いまは、長時間のパソコンワークや会議などで多くの人が猫背になっていますが、姿勢が悪いと酸素の摂取量が減り、内臓を圧迫して働きを悪くしてしまいます。これを解消するには、硬くこわばったあばら骨の前鋸筋を柔らかく揉みほぐす「マグロの中落ち」が効果的です。

【マグロの中落ち】

①親指以外の4本の指を軽く握って両手で拳をつくる

②拳のぎざぎざの部分を両脇腹の肋骨の一帯に当てる

 ③そのまま上下に10回グリグリとマッサージする

前鋸筋をほぐすことが大事なのは、肋骨を自由に動かすことが上半身をしなやかに動かす上で欠かせないからです。このマッサージを続けると、体の深部に錆のように溜まった疲れやコリが取れていき、体の動きが見違えるように滑らかになっていきます。

骨ストレッチは、一度覚えたら誰でも簡単に実践できます。こまめに続けるうちに、まさに骨を掴むことがコツを掴むことなのだと実感できるでしょう。1日5分でもコツコツ続けていけば、体の痛みが取れて柔軟になり、日常の身のこなしがこれまで以上に楽になっていくでしょう。

(本記事は『致知』2015年10月号 連載「大自然と体心」より一部を抜粋・編集したものです。)

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◇松村 卓(まつむら・たかし)

昭和43年兵庫県生まれ。中京大学体育学部体育学科卒業。陸上短距離のスプリンターとして全日本実業団6位などの実績を持つ。引退後、スポーツトレーナーに転身。怪我が多かった現役時代のトレーニングを根底から見直し、筋肉ではなく骨の活用に重点を置いた「骨ストレッチ」「松村式ランニング」を考案。多くのアスリートの指導に当たる。著書に『ゆるめる力 骨ストレッチ』(文藝春秋)、共著に『「筋肉」よりも「骨」を使え!』(ディスカバー・トゥエンティワン)などがある。

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