2020年11月10日
情報化社会のいま、世の中は大量の情報で溢れています。その中で、有益な情報とそうでない情報を見分けると共に、自らもいかに正しく情報発信し、情報機器と向き合っていけばよいのでしょうか。情報化社会を生き抜く必須のスキルといえる、「メディアリテラシー」について、一般社団法人日本メディアリテラシー協会代表理事の寺島絵里花さんにお聞きしました。
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メディアリテラシー教育で幸せな社会を
(――講演会や勉強会でよく伝えていることはありますか。)
(寺島)
講演などでよくお話しするのは、「5W1H」を意識して情報に接することの大切さです。自分がある情報に接した時に、「いつ、どこで、誰が、何を、何の目的で、どのように」流したのかを判断できるようになると、世の中の見え方がだいぶ変わります。情報はすべて人によって編集されていますから、特に「誰が」という部分を意識することが大事です。
また、いまは誰もが情報の受け手であると同時に、情報の発信者でもありますから、発信者としての注意点もよく伝えています。
例えば、企業でいえば、残業している様子をSNSにアップした画像に機密情報が写っていて、クライアントとトラブルになる。あるいは、SNSハラスメントといって、上司が部下のSNSアカウントを見つけ、社内に拡散して問題になったり、仲のいい女性の部下と食事をしている写真をフェイスブックに安易に投稿して(フォトハラスメント)不倫を疑われたりということもよくあります。
(――発信者としてのメディアリテラシーも問われているのですね。)
(寺島)
それから小さな子供がいる方には、「まずは親御さんが、スマホなど情報機器の賢い使い手になってほしい」と伝えています。
例えば、親が朝から晩までスマホを見ているのに、子供には「勉強しなさい」と言い、静かにしてほしい時だけ子供にスマホをいじらせる。これでは子供の心に矛盾が生まれます。あと、子供に持たせるスマホに何も言わずにフィルタリング(有害サイトのアクセス制限)をかけたりすると、その子は「友達のスマホにはフィルタリングがないのに、自分は親から信用されていないんだ」「スマホっていけないものなんだ」と受け取ってしまうかもしれません。
だから、子供にスマホを持たせる時に、「スマホは悪いものだから成績が落ちたら取り上げるよ」と言うのと、「スマホやインターネットは、あなたの人生をすごく変えるほど素晴らしいもの。だけどいろんな事件があるから、危ない情報を見ることができない設定にしてもいいかな」と言って渡すのでは、どちらが子供が賢くスマホを使うようになりますか? と問いかけるようにしています。やっぱり、まず親がしっかりメディアリテラシーを身につけていなければ、子供にも正しいことを伝えられるわけがないんですよ。
(――親の取り組みが大事だと。)
(寺島)
そして親御さんに何より知ってほしいのは、SNSで事件に巻き込まれたり、ゲーム依存症になったりする子供は、家庭に温もりがなく、第三者との繋がりを欲している場合が多いことです。
子供は親とゆっくり過ごすことを求めているのに、母親はずっとスマホをいじっている。あるいは、習い事などに追われ、いまの子供たちは毎日何かを頑張らないと認めてもらえないと思わされています。だから、スマホの使い方など、家庭におけるメディアリテラシー教育は、子供と向き合い、「あなたの存在そのものが愛おしい」のだと伝える入り口でもあると思っているんですね。子供はスマホではなくて、親との親密な時間、心の安全地帯を求めているんです。
(――メディアリテラシー教育は大人だけではなく、子供の未来、幸せをもつくっていくのですね。)
(寺島)
これからもメディアリテラシー教育を普及することで、よりよい世の中の実現、幸せな家庭が増えていくことを願っていますし、また活動を通じて子育て中のお母さんでも、どんどん活躍していけることを伝えていきたいですね。
(本記事は『致知』2020年4月号 特集「命ある限り歩き続ける」から一部抜粋・編集したものです) ◎各界一流プロフェッショナルの珠玉の体験談を多数掲載、定期購読者数No.1(約11万8,000人)の総合月刊誌『致知』。あなたの人間力を高める、学び続ける習慣をお届けします。 たった3分で手続き完了、1年12冊の『致知』ご購読・詳細はこちら。 ≪「あなたの人間力を高める人間力メルマガ」の登録はこちら≫
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◇寺島絵里花(てらじま・えりか)
昭和60年東京都生まれ。大学卒業後、日系航空会社に就職。夫の上海駐在に伴い、会社を退職し、海外で生活。平成26年に帰国後は、一般社団法人日本メディアリテラシー協会を立ち上げる。日本全国の教育現場での講演・普及活動等を続けながら、大学院で情報教育の研究も行う。3児の母。子育てやメディアリテラシーに関する内容を記したブログ「東京タワーの麓」は1日1万PVを超える人気を博している。