本気で行動し途中で諦めない——卓球の日本代表を育てた村上恭和前監督が語る一流の条件

東京オリンピックに出場する卓球の日本代表選手が内定し、日本卓球協会から発表されました。中国勢が圧倒的な強みを発揮する中で、果たしてメダル獲得はなるのでしょうか。2012年のロンドン五輪で女子団体を銀メダルに導き、さらに16年のリオ五輪でも銅メダル獲得を果たした女子ナショナルチーム前監督の村上恭和さんに、自身の半生とメダリストの条件を伺いました。

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強い人のみがコートに立てる競争社会

私が卓球と出逢ったのは小学校6年生の時でした。当時は、男子のスポーツといえば野球だけで、私も2年生の時から少年野球をやっていましたが、6年生の夏の大会に敗れて引退するとエネルギーを発散する対象がなくなり、仕方なく体育館で卓球を始めました。

ところが、です。野球は1試合のうち数打席しか回ってこない上に、自分の守備位置に一度も球が飛んでこないこともある。一方、卓球は目まぐるしく球が飛び交う。まさに一球一球が真剣勝負であり、息つく暇もありません。自分のプレー次第で勝敗が決着する面白さにどんどんのめり込み、中学では卓球部に入りました。

そんな私が真に卓球人生をスタートさせたのは、中学2年生の時だといってよいでしょう。名門・日本大学卓球部のエースとして活躍した尾後勝行さんが就職のため、地元・尾道に帰ってきたのです。生まれて初めて見たトップ選手の高速ラリーは実に感動的でした。

小学校の体育館で週2回、尾後さんや一般の大人に交じって試合をするのですが、そこは完全なる勝ち抜き戦。強い人のみがコートに立ち続けることができ、負けた人は列に並んで順番を待ちながら審判をする。初心者だから、子供だからといって、手取り足取り教えてくれることは一切ありません。

中学3年生の時、エースとして県大会団体2位の成績を収め、強豪の近畿大学附属福山高校からスカウトを受けて進学。高校時代には、中国地方の大会でシングルス、ダブルス、団体の三冠チャンピオンとなったのです。

私を鍛えてくれた人生の師

大学卒業後は、日本卓球リーグの2部に所属していた和歌山相互銀行に就職しました。4年生の時に全日本学生選手権で第3位の成績を収めたこともあって、「1部に上がりたいのでぜひ来てくれ」とお誘いをいただいたのです。

私は卓球を続ける気はあまりなかったのですが、遊び友達だった大学の先輩が勤務していたため、入社することに決めました。そんないい加減な私を鍛えてくださったのは、和歌山相互銀行の専務兼卓球部の顧問で、和歌山県卓球協会の会長も務めていた西峰利清さんでした。

西峰さんは中卒で銀行に入り、専務まで上り詰めた叩き上げの人です。事あるごとに人としてのあり方、人生の考え方などを教えていただきましたが、それは20代の私にとって最高の教育であり、西峰さんには感謝しても感謝しきれません。

とりわけ印象に残っている教えは「人を大事にする」ということです。当時、私は卓球部の監督によく逆らっていて、ある日、「もうええわ。明日の試合は行かん」と言って、寮に帰ってしまったことがありました。

しばらくすると、電話が掛かってくる。電話の声は西峰さんです。開口一番、何と言われたか。普通なら「バカヤロ!」と怒鳴ってもおかしくないところですが、「村上君、本当に明日の試合行かないの?」「君はそれでいいかもしれんけど、いままで一緒に練習やってきた皆が困るやろ」と。

人を包み込む懐の深さに感激したことをいまでも覚えています。それからというもの、卓球も本気、遊びも本気、何に対しても全力で向かっていくようになりました。

メダルを獲る人と獲れない人の差

これまで私は福原愛や石川佳純をはじめ、数多くのトップ選手を見てきました。選手は皆、オリンピックでメダルを獲りたいと言います。だが、その中で達成できるのは4年に一度、(男女ともに)たった3人しかいません。メダルを獲る人と獲れない人の差はどこにあるか。

最初の分かれ目は、本気で思っているか、口先だけかです。次に、本気で思っている人は行動します。口先だけの人は行動しません。そして最後は、途中で諦めないこと。誰でも目標達成に向かって努力していれば、どこかで「ああ、もう無理かな」と思う時があります。しかし、そこで諦めずにやり続けた人のみがメダルを手にできる。

さらに、支えてくれる人間が多ければ多いほど、達成する可能性は高まります。実力が拮抗している中で、最後に勝敗を決するのは目に見えない思い、周囲の応援がどれだけ多いかなのです。

何の世界でも、実力と運さえあれば、一旦は成功を手にすることができるでしょう。しかし、より長く、より高く成功するためには、自分を支えてくれる仲間、味方がどれだけ多くいるかに尽きると思います。ですから、周囲に対して感謝できない人間は成功し続けることはできません。

このことはスポーツのみならず、あらゆる職業の人に共通する成功の条件ではないでしょうか。

(本記事は月刊『致知』2017年1月号の連載「20代をどう生きるか」の一部を抜粋・編集したものです。)

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◇村上恭和(むらかみ・やすかず)
1957年広島県生まれ。1980年近畿大学卒業後、和歌山相互銀行入社。1990年日本生命女子卓球部監督に就任し、6年後チームを日本一へと導く。1996年日本卓球女子ナショナルチームコーチ、2008年同監督に就任。2012年のロンドン五輪で日本卓球界史上初となる女子団体銀メダル、2016年のリオ五輪でも同種目銅メダルへと導く。著書に『勝利はすべて、ミッションから始まる。』(WAVE出版)。

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