2025年12月15日
樹齢150年の大藤や藤棚の美しさに加え、「イルミネーションアワード」で7年連続ランキング1位に輝くなど夜景が素晴らしい「あしかがフラワーパーク」(栃木県足利市)。その人気を不動のものとしたのは、かつて園長を務めた塚本こなみさんの力に負うところが大きいようです。現在、はままつフラワーパーク(静岡県浜松市)の理事長として奮闘する同氏の仕事にかける思いを伺いました。(本記事は月刊『致知』2014年9月号 特集「万事入精」の一部を抜粋・編集したものです)
女性初の樹木医として注目集める
主人の会社にいた頃から、「樹齢300年の蘇鉄が弱ってきたから回復させてほしい」「樹齢1000年の木を移植してほしい」といったお仕事の依頼をよく受けていたました。そんな頃(平成3年)、樹木医という試験制度ができたんです。経験年数など条件も合致したものですから、翌年に受験したら幸運にも合格できました。
自分が女性の第一号になるなんて、考えてもいませんでした。けれど、樹木医の世界に女性がいるのが珍しいんでしょうね。驚くくらい多くのテレビや新聞の取材を受けて、仕事の範囲は全国に広がっていったんです。
その一つが栃木県のあしかがフラワーパークのお仕事でした。ある日、電話があって「今度開園するフラワーパークに大きな藤の木を移植してくれる人を4年間探している。塚本さんは移植が得意だと新聞に書かれていたので、藁にもすがる思いで連絡をしました」と。
聞いてみると、幹回り3・6メートル(直径1・2メートル)もある藤なんです。それを園の目玉にしようとしていました。好奇心旺盛な私はその仕事にとても興味があったのですが、社員は猛反対でした。静岡から栃木は遠いということもありましたが、「藤の移植は経験したことがないでしょう」と。
実際、藤は驚くほど腐りやすく幹が柔らかい。樹木というより草に近いんですね。しかも、幹回りは日本一です。大変だとは思いましたが、それまで巨木を100本以上移植して1本も枯らしたことはありませんでした。
それで私、社員には内緒で協力会社の社長と一緒に現地を見に行きました。そして藤の前に立った途端、「あっ、できる」と思ったんです。その社長も「やってみなきゃ分からない」と言うものですから「そうだね。やってみる」とその日に請け負いました(笑)。
「世界一」の藤のガーデンを整備
移植に成功したことで今度は園全体の植栽デザインを依頼されました。そのデザインに沿って園は整備され、平成9年の4月にグランドオープンして藤の花の時期を迎えるわけですね。
ただ、オープンはしたものの、もともとが沼地ですから土壌の問題もあり、私は顧問として浜松から月に数回通うようになりました。それに経営もなかなか軌道に乗らずに、私も設計者としての責任を感じていたところ、取締役の話があって運営全体に口を出すようになったんです。
「入園者数云々でなく、とにかく美しい園にしましょう」と呼び掛けていたら、「塚本さん、園長になってください」と。
限られた予算内で何ができるかというので最初にやったのは販売戦略を立てることでした。「世界一の藤のガーデン。あしかがフラワーパーク」と大々的にPRしよう、そうしたら気になって必ず人が集まってくるはず、と訴えました。
「世界一と断言していいのですか」という声もありましたが、私は日本中の藤の名所を見て回っていましたから「ここには大藤が4本、白藤トンネルが1つ、庭木仕立ての藤が160本もあります。世界一と自信を持ってください」と言ったんです。
世界一とうたったチラシも配りました。それまで年間20万人だったお客様が34万人になり、翌年は47万人、その翌年は55万人というように右肩上がりに増えていったんです。そして数年後には100万人を超え、日本一の入園者を誇るフラワーパークになりました。
◎『致知』2026年1月号 特集「拓く進む」に塚本さんがご登場!!
バブル経済崩壊後の不況をはじめとする様々な困難と向き合い、見事、大型施設のV字回復を果たした立役者がいます。あしかがフラワーパーク、はままつフラワーパークを再建した塚本こなみ氏、新江ノ島水族館を全国屈指の人気を誇る水族館に育て上げた堀一久氏です。共に強固な信念と高い志を抱きながら厳しい改革に臨んだお二人の歩みは、仕事や人生の知恵に溢れています。
本記事の内容 ~全10ページ~
◇地域と共に歩み続けて
◇女性樹木医第一号の道へ
◇困難を極めた大藤の移植
◇突然経営を担った母親の後ろ姿に教えられる
◇苦境の中で生まれた水族館再建策
◇改革の手始めは徹底した市場調査から
◇感動分岐点を超えた革新的アイデア
◇「えのすい」の価値をいかに正しく伝えるか
◇小さな変化を積み重ねることの大切さ
◇宿命に生まれ、運命に挑み、使命に燃える
◇世界一を目指して歩き続ける
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◇塚本こなみ(つかもと・こなみ)
昭和24年静岡県生まれ。造園家であるご主人の仕事を手伝った後、グリーンメンテナンス、環境緑化研究所の2社を設立。樹木医として全国の大藤などの治療、造園指導などを続ける傍ら、平成11年から「あしかがフラワーパーク」園長として同園の立て直しに尽力(27年6月退任)。25年「はままつフラワーパーク」理事長に就任。
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