「地球にやさしい」は誤り? 環境問題にどう向き合うか|村上和雄×兒玉圭司

近年、世界各地でこれまでに経験したこともない異常気象、自然災害が頻発しています。何かがおかしい、地球環境がいよいよ深刻な局面に差し掛かりつつあるのではないか――そう懸念を募らせるスヴェンソン会長の兒玉圭司さん〔写真左〕と、筑波大学名誉教授の故・村上和雄さん〔写真右〕に、人類が進むべき道について語り合っていただきました。

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「地球にやさしい」は誤り

〈村上〉
環境問題が注目を集めるようになったのは、50年前にローマクラブが『成長の限界』というレポートを発表してからだと思います。当時は経済も人口も右肩上がりでしたが、そのまま成長が続けば地球は遠からず限界に達する、という警鐘を鳴らして世界に衝撃をもたらしました。

日本では、京セラの稲盛和夫さんが編集された『地球文明の危機』という本が出ています。私も執筆者の一人として名を連ねていますが、環境問題の原因や解決策を、人間の考え方や倫理観にまで踏み込んで考察している点が秀逸だと思います。

 〈兒玉〉
それはぜひとも拝読しなければなりませんね。

〈村上〉
その人間の考え方について一つ申し上げると、「地球に優しい」という言葉がありますね。これはとても傲慢な言葉だと私は思うんです。人間のほうが地球に守られて生きているわけですから、「地球に優しい」ではなく「地球が優しい」のです。

けれどもその守護もそろそろ限界に近づいていて、人類がここで大きく発想を転換しなければ、「成長の限界」どころか「生存の限界」を迎える局面にあるのではないかと私は思っています。

兒玉〉
かなり際どいところまできているわけですね。

だったら自分は何をする

〈村上〉
世界の人口も、そろそろ地球が収容できる限界に近づいています。一人当たりの年間の穀物消費量から換算すると、世界中の人がアメリカ並みに贅沢な食生活をした場合、地球上に27・5億人しか住めないそうです。イタリア的な食生活では55億人、インドのような質素な食生活なら110億人が住める計算になるようです。

〈兒玉〉
仕事で海外に行くと、いろいろ問題を感じます。例えば中国の接待はすごくて、もう食べられないのに次から次へと料理が出てきて、大半が残ってしまう。ああいうのは全部捨てられてしまうんでしょうね。

日本の穀物消費量は、いま挙げられた中ではイタリアに近いと思いますが、恐らくその半分くらいは無駄に捨てられているんじゃないでしょうか。一番食べ残しが出るのは、結婚披露宴だそうですね。

〈村上〉
日本の食品廃棄物は年間1700万トンにも及ぶそうですから、途轍もない無駄をしていることを自覚しなければなりませんよ。

〈兒玉〉
世界中の人がこうした無駄を自覚して、環境改善に関心を持つような方法はないものでしょうか。

地球上の人口が増え、経済活動が活発になったことによって、18世紀の中頃から比べると地球の平均気温は1℃上がっているそうですね。もし2℃上がれば植物は20~30%枯れてしまい、3℃上がれば70%、4℃上がれば80%枯れるといいますから、これ以上温暖化が進んだら大変なことになります。

〈村上〉
発想を大幅に変えなければなりませんね。これまでのような、人間が一番尊いんだという自己中心的な考え方を改める必要があります。

例えば、原発に反対するのはいいんですが、反対するならエアコンの利用を多少なりとも控えるといった行動を伴わなければね。自分はエアコンを使い放題なのに、「反対、反対!」といくら大声で叫んでも説得力はありません。だったら自分は何をする? と自らの胸に問う姿勢がなければ、地球環境問題はよくならないと思うんです。

〈兒玉〉
そこは非常に大切なところですね。

〈村上〉
先ほど触れた稲盛さんはご自宅であまりエアコンを使われないので、冬にお孫さんが訪れると「北極みたいだ」と驚かれるそうです。一人ひとりがそんなふうに自分の行動を律していかなければ、人類はいずれ滅んでしまうでしょう。極端な話に聞こえるかもしれませんが、歴史上どんなに栄えた文明も必ず滅びているわけですから、決してあり得ない話ではないのです。


(本記事は月刊『致知』2019年12月号 連載「生命科学研究者からのメッセージ」から一部抜粋・編集したものです


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致知出版社編集部ブログ

◇村上和雄(むらかみ・かずお)
昭和11年奈良県生まれ。38年京都大学大学院博士課程修了。53年筑波大学教授。平成8年日本学士院賞受賞。11年より現職。23年瑞宝中綬章受章。著書に『スイッチ・オンの生き方』『人を幸せにする魂と遺伝子の法則』『君のやる気スイッチをONにする遺伝子の話』(いずれも致知出版社)など多数。

◇兒玉圭司(こだま・けいじ)
昭和10年東京都生まれ。31年第23回世界卓球選手権大会に出場し、シングルスベスト16。33年明治大学卒業後、兄と共にエレベーターメーカーのダイコーを創業。その傍ら、世界卓球選手権大会などで日本代表選手団監督を務め、累計で金17個、銀13個、銅24個のメダルをもたらす。60年スヴェンソンを設立し、同社社長に就任。平成27年より現職。著書に『強い自分をつくる法』(東洋経済新報社)がある。

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