地球環境の危機にどう向き合うか 【村上和雄×兒玉圭司】

 

近年、世界各地でこれまでに経験したこともない異常気象、自然災害が頻発しています。何かがおかしい、地球環境がいよいよ深刻な局面に差し掛かりつつあるのではないか――そう懸念を募らせるスヴェンソン会長の兒玉圭司さんと、弊誌『致知』の連載でもお馴染みの筑波大学名誉教授・村上和雄さんに、人類が直面する現状、進むべき道について語り合っていただきました。

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世界各地で頻発する異常気象

(兒玉)

きょうはその村上先生に、私が最近見聞きした地球環境問題の現状について、ぜひともご意見を承りたいと思うんです。

最近特に気になるのは、地球の各地でものすごく大きな災害が多発していることです。今年の初めには、ルーマニアで凍結した雨が降ったとか、アメリカ各地で北極よりも気温が下がったという、信じられないようなニュースがありました。

また今年の1月18日には、南半球のオーストラリアで気温が48℃まで上昇し、同じ日に北半球のロシアではマイナス57℃を記録したそうです。気温差は何と105℃ですよ。要するに熱波と寒波、洪水と干魃という両極端な現象が地球という一つの惑星の中で加速度的に増発しているんです。バンクーバーやロンドン、ロサンゼルスなど、世界各地で次々と気候非常事態宣言が出されている現状からも、地球環境が崩壊の瀬戸際にきているのではないかと心配しているんです。

(村上) 

確かに、直感的に何かおかしいと感じている人は多いと思いますよ。

(兒玉) 

日本でも環境問題は随分注目を集めるようにはなってきました。しかし、まだまだ意識は低いと思いますから、もう少し例を挙げておきましょう。

アメリカではこの5月、6月だけで50回以上も竜巻が発生して甚大な被害をもたらしていますし、インドは20年ぶりの大型サイクロンに見舞われて165万人が被害を受けました。

日本でも、先日の台風15号と19号でこれまでになかったような大規模な停電や水害に見舞われましたし、その前の10号では四国で1000ミリを超える豪雨が記録されましたね。1000ミリといったらその地域全体がお風呂に浸かっているようなものでしょう。いかに異常な状態かということですよ。

(村上) 

札幌では30℃を超える真夏日が続いたり、以前は考えられなかったような現象が相次いでいますね。

(兒玉) 

日本で一番雪の多い新潟の上越市で、40℃以上を記録したというニュースもありました。こういうニュースが続くものですから、地球環境はこのままいくと大変なことになるのではないかと私は危惧しているんです。

成長の限界から生存の限界へ

(村上) 

環境問題が注目を集めるようになったのは、50年前にローマクラブが『成長の限界』というレポートを発表してからだと思います。当時は経済も人口も右肩上がりでしたが、そのまま成長が続けば地球は遠からず限界に達する、という警鐘を鳴らして世界に衝撃をもたらしました。

日本では、京セラの稲盛和夫さんが編集された『地球文明の危機』という本が出ています。私も執筆者の一人として名を連ねていますが、環境問題の原因や解決策を、人間の考え方や倫理観にまで踏み込んで考察している点が秀逸だと思います。

 (兒玉) 

それはぜひとも拝読しなければなりませんね。

 (村上) 

その人間の考え方について一つ申し上げると、「地球に優しい」という言葉がありますね。これはとても傲慢な言葉だと私は思うんです。人間のほうが地球に守られて生きているわけですから、「地球に優しい」ではなく「地球が優しい」のです。けれどもその守護もそろそろ限界に近づいていて、人類がここで大きく発想を転換しなければ、「成長の限界」どころか「生存の限界」を迎える局面にあるのではないかと私は思っています。

 (兒玉) 

かなり際どいところまできているわけですね。

だったら自分は何をする

(村上) 

世界の人口も、そろそろ地球が収容できる限界に近づいています。一人当たりの年間の穀物消費量から換算すると、世界中の人がアメリカ並みに贅沢な食生活をした場合、地球上に27・5億人しか住めないそうです。イタリア的な食生活では55億人、インドのような質素な食生活なら110億人が住める計算になるようです。

(兒玉) 

仕事で海外に行くと、いろいろ問題を感じます。例えば中国の接待はすごくて、もう食べられないのに次から次へと料理が出てきて、大半が残ってしまう。ああいうのは全部捨てられてしまうんでしょうね。

日本の穀物消費量は、いま挙げられた中ではイタリアに近いと思いますが、恐らくその半分くらいは無駄に捨てられているんじゃないでしょうか。一番食べ残しが出るのは、結婚披露宴だそうですね。

(村上) 

日本の食品廃棄物は年間1700万トンにも及ぶそうですから、途轍もない無駄をしていることを自覚しなければなりませんよ。

(兒玉) 

世界中の人がこうした無駄を自覚して、環境改善に関心を持つような方法はないものでしょうか。

地球上の人口が増え、経済活動が活発になったことによって、18世紀の中頃から比べると地球の平均気温は1℃上がっているそうですね。もし2℃上がれば植物は20~30%枯れてしまい、3℃上がれば70%、4℃上がれば80%枯れるといいますから、これ以上温暖化が進んだら大変なことになります。

(村上) 

発想を大幅に変えなければなりませんね。これまでのような、人間が一番尊いんだという自己中心的な考え方を改める必要があります。

例えば、原発に反対するのはいいんですが、反対するならエアコンの利用を多少なりとも控えるといった行動を伴わなければね。自分はエアコンを使い放題なのに、「反対、反対!」といくら大声で叫んでも説得力はありません。だったら自分は何をする? と自らの胸に問う姿勢がなければ、地球環境問題はよくならないと思うんです。

(兒玉) 

そこは非常に大切なところですね。

(村上) 

先ほど触れた稲盛さんはご自宅であまりエアコンを使われないので、冬にお孫さんが訪れると「北極みたいだ」と驚かれるそうです。一人ひとりがそんなふうに自分の行動を律していかなければ、人類はいずれ滅んでしまうでしょう。極端な話に聞こえるかもしれませんが、歴史上どんなに栄えた文明も必ず滅びているわけですから、決してあり得ない話ではないのです。

(本記事は月刊『致知』2019年12月号「精進する」の記事から一部抜粋・編集したものです。あなたの人生、経営・仕事の糧になるヒントが見つかる月刊『致知』の詳細・購読はこちら

◇村上和雄(むらかみ・かずお)

昭和11年奈良県生まれ。38年京都大学大学院博士課程修了。53年筑波大学教授。平成8年日本学士院賞受賞。11年より現職。23年瑞宝中綬章受章。著書に『スイッチ・オンの生き方』『人を幸せにする魂と遺伝子の法則』『君のやる気スイッチをONにする遺伝子の話』(いずれも致知出版社)など多数。

◇兒玉圭司(こだま・けいじ)

昭和10年東京都生まれ。31年第23回世界卓球選手権大会に出場し、シングルスベスト16。33年明治大学卒業後、兄と共にエレベーターメーカーのダイコーを創業。その傍ら、世界卓球選手権大会などで日本代表選手団監督を務め、累計で金17個、銀13個、銅24個のメダルをもたらす。60年スヴェンソンを設立し、同社社長に就任。平成27年より現職。著書に『強い自分をつくる法』(東洋経済新報社)がある。

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