安岡正篤師に学ぶ運と徳を高める心掛け——SBIホールディングス社長・北尾吉孝

古の聖賢の教えをもとに、人の生きる道を説いた碩学・安岡正篤師。「運と徳」という一見掴み所のない人生の重要なテーマについて、安岡師は具体的な教えを残しています。いかに「運と徳」を高め、よりよい人生を開いていけばよいのか。安岡師に私淑するSBIホールディングス社長の北尾吉孝さんに語っていただきました。

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どうすれば運と徳が高められるか

(北尾)

運命は決して固定したものではなく、変えることができるものであるという安岡先生の教えは、私たちに大きな希望を与えてくれます。ならば、どうすればよい運命をつくっていくことができるのでしょうか。

仏教には、因果の法則という教えがあります。物事にはすべて原因があり、善い因をつくれば善い結果がもたらされ、悪い因をつくれば悪い結果がもたらされるということです。

同様に『易経』にも「積善の家には必ず余慶有り。積不善の家には必ず余殃有り」という教えがあります。善行を積み重ねた家にはその功徳により幸せが訪れ、不善を積み重ねた家にはその報いとして災難がもたらされることを説いています。

したがって、運命をよくするためには善因をつくらなければなりません。善因善果、悪因悪果を踏まえて、日々自分を律していくことがとても重要です。そして、よき運に恵まれるとよき運を持った人との縁にも恵まれ、よい出会いがさらによい結果をもたらすこと、縁尋機妙、多逢聖因の理を体現できるのです。

まさしく運と徳は密接不可分な関係にあり、運をよくするためには、徳を高めていくこと。そのためにも、日々の生活の中で善を積んでいくことが非常に大切であると理解できます。

積善の基本となるのが日々の仕事です。仕事という言葉を構成する「仕」も「事」も、訓読みすれば「つかえる」であり、働くこと自体が世のため人のために尽くすこと、善を積むことに通じているのです。

SBIグループの主業務は金融業ですが、創業以来、可能な限り取引手数料を低く、預金金利を高く設定し、お客様の利便性を真摯に追求してきました。そうした姿勢を貫くことが、結局は自社の利益となって返ってくるのです。

また、当グループは本業以外にも様々な社会貢献活動に取り組んでいます。近年、児童虐待のニュースがマスコミで頻繁に取り上げられていますが、こうした問題に早くから強い懸念を抱いていた私は、虐待を受けるなど厳しい境遇に置かれた子供たちの福祉向上のため、2005年にSBI子ども希望財団を立ち上げた他、2007年には慈徳院という社会福祉法人を立ち上げ、家庭環境に苦しむ子供たちに手を差し伸べ、精神的かつ経済的に支援しています。

これ以外にも、時代を牽引するアントレプレナー(起業家)の養成を目指したSBI大学院大学、医療への貢献を目的とするSBIウェルネスバンクなど、創業当初より自分たちの立場で社会のお役に立てることを追求し、実践してきました。

もちろん、善を積むにはこうした特別な活動をしなければならないというわけではありません。私が安岡先生とともに私淑してきた教育者の森信三先生は、

「足もとの紙クズ一つ拾えぬ程度の人間に何が出来よう」

と説いておられます。目についたゴミを拾って歩くことも立派な善行であり、天は私たちのそうした平素の行いを見ています。正しいと信ずることをただひたすら実践すれば、結果は必ずついてくる。これは私のこれまでの人生を通じての実感です。

(本記事は月刊『致知』の記事から一部抜粋・編集したものです。あなたの人生、経営・仕事の糧になるヒントが見つかる月刊『致知』の詳細・購読はこちら

◇北尾吉孝(きたお・よしたか)

昭和26年兵庫県生まれ。49年慶應義塾大学経済学部卒業。同年野村證券入社。53年英国ケンブリッジ大学経済学部卒業。野村企業情報取締役、野村證券事業法人三部長など歴任。平成7年孫正義氏の招聘によりソフトバンク入社、常務取締役に就任。現在SBIホールディングス代表取締役社長。著書に『何のために働くのか』『君子を目指せ小人になるな』(ともに致知出版社)など多数。

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