経営の神様・松下幸之助に学んだ人生で大事なこと——元松下政経塾塾頭・上甲晃が語る

松下電器産業(現・パナソニック)を一代で世界的企業に育て上げた松下幸之助。その薫陶を受けた上甲晃さんは著書『松下幸之助に学んだ人生で大事なこと』の中で次のように語られています。「生きていく上で大切なことはすべて松下幸之助から教えられたように思われてならない」。20余年で1700名を超える青年たちを育てた人材教育のスペシャリストが語る、人生と仕事の極意を一部ご紹介いたします。

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私の心掛けてきたこと

人生、若気の至りで、今から考えたら、恥ずかしくなるような経験もいっぱいした。そんな試行錯誤を繰り返しつつも自分なりに努力して、「正解だった」と思うことが3つある。

まず、約束はどんな小さなものであっても、誰と交わしたものであっても、守ることだ。例えば、時間の約束。いつも時間の約束を守り続けている人が、たまたま今日遅刻したとしよう。みんなは、「何かあったのではないだろうか。大丈夫だろうか」と心配してくれる。

逆に、いつも遅刻ばかりしていたら、今日も遅刻した時、「何かあったのだろうか?」と心配してもらえない。みんな、「またあの人か」と吐いて捨てるような言い方をされる。

「彼が金を貸してくれというのですが、貸しても大丈夫でしょうか?」と誰かに聞かれたとしよう。「大丈夫だ。今まで何度か貸したけれども、必ず期日には返してくれた」と言われるか、「止めておけ。今まで何度か金を貸したけれども、期日に返してもらったことがない」と言われるか。自ずと結果は明らかである。

第2番目に心がけてきたことは、「言行一致」である。人は誰でも、口では立派なことを言える。しかし、世間の人達は、言葉をもってその人を信用しない。どういう人の言うことをまともに受け止めるか。それは、言行一致している人、すなわち、「人に求める限りは、自らやる」人である。

とりわけ人の上に立った時、部下達は、言葉によって従うのではない。どんなに言葉を尽くしても、言っていることとやっていることが違うと、「口ばかり」と腹の中で馬鹿にしている。自然のうちに従わなければならないと思わせるのは、「部下に求める限りは自らやるという厳しさ」を持つ人だ。

「君達、公私混同するなよ」と教えたとしよう。部下は瞬間に、上司の普段の様子を思い浮かべる。その上司が、紙一枚、電話一本に至るまで公私のけじめをつけていたら、自然のうちに、「私達もそうしなければならない」と思う。それこそが、“権威”である。

昨今は、権力で人を動かそうとするリーダーが多過ぎる。立場あるものに必要なのは、権力の裏にある権威だ。権威こそが、「あの人の言うことに従わなければならない」とみんなに思わせる。権威なき権力を、昨今は、“パワハラ”と呼ぶようである。

人が見ている? 天が見ている?

第3番目に心がけてきたことは、人の目を基準にしないことだ。「みんな見ているぞ。止めておけ」、「誰も見ていない。やってしまえ」。それらは人の目を基準にした判断の仕方である。

人の目を基準にした行動がばれると、陳謝、謝罪の世界に陥る。今の世の中、何と、謝罪の多いことか。かつては仰ぎ見るような立場にあった人達が、一夜にして奈落の底に落ち、ひたすら、「申し訳ございません」と頭を下げ続ける場面を、見過ぎるぐらいに見ている。ここでも、権威は地に堕ちてしまった。

私も、若いころは、「ばれなければいい」と高をくくって、恥ずかしいことやつまらないことを繰り返していたように思う。そして、そんな経験から、人の心がどんどん卑しくなることに気付いて、身を正すことを覚えてきたように思う。

そして行き着いた結論は、「人の目ではなく天の目を意識すること」であった。人の目は、見ることができるのに対して、天の目はどこを探しても、見つけることはできない。自分の心の中に養うものなのだ。

誰も見ていないが、「天が見ている」と思って、やってはならないことは絶対にしない。「天が見てくれている」と信じて、やるべきことはやる。そんな強いものが心のうちに養われてきたら、生き方が段々力強くなるように思う。今、最も強く意識していることである。

(本記事は『松下幸之助に学んだ人生で大事なこと』(上甲晃・著)から一部抜粋・編集したものです)

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上甲晃(じょうこう・あきら)

昭和16年大阪府生まれ。40年京都大学卒業と同時に、松下電器産業(現・パナソニック)入社。広報、電子レンジ販売などを担当し、56年松下政経塾に出向。理事・塾頭、常務理事・副塾長を歴任。平成8年松下電器産業を退職、志ネットワーク社を設立。翌年、青年塾を創設。著書に『志のみ持参』『志を教える』『志を継ぐ』など、近著に『松下幸之助に学んだ人生で大事なこと』(いずれも致知出版社)。

 

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