2019年07月26日
父親の跡を継ごうと、ビルメンテナンスを生業とするメンテックカンザイに入社した大滝さん。しかし、社員のモチベーションは低く、組織としてまとまりのない状況に衝撃を受けます。そのような中で、大滝さんはどのように社員を育成し、社業を発展させていかれたのでしょうか。語っていただきました。
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社内木鶏で社員のベクトルが揃う
(大滝)
大手製薬会社に勤めていた私が、父の後を継ごうと、ビルメンテナンスを生業とする当社に入社したのは25年前のことでした。しかし、その当時は、ビルメンテナンス業といえば典型的な3K(きつい、汚い、危険)で、社員には全く仕事へのプライドが感じられず、経営会議では誰一人メモすら取らない、まるで企業の体を成していない状況でした。
「このままではいけない」と危機感を抱いた私は、社長を継いで2年目にコンサルタントを入れ社内の大改革に着手。社名を改め、ユニフォームを斬新なデザインに刷新し、「経営理念」と「行動理念」を定めて毎日唱和するところからスタートを切りました。
その後も、静岡県内の全業種の中で最も早く「ISO 14001」「ISO 9001」を取得するなど、改革を力強く推進していったのです。
それらが奏功して業績は急進し、5年後に静岡県内の同業種の中で、売り上げトップを記録するまでになりました。
しかし、この頃から売り上げは足踏みを始め、利益も全く出ない状況に陥ったのです。社員研修には熱心に投資をしてきたつもりでしたが、どうも当社には何かが欠けている。これからどうすればよいのか。経営のあり方に悩んでいた時、偶然知ったのが『致知』でした。
ピンとくるものがあり、私はさっそく総務部長と二人で『致知』を読み始めました。しばらくして、幹部20人ほどで『致知』を教材にした勉強会「社内木鶏」を開始したのですが、「難しい哲学や人生観が、ビルの掃除に何の役に立つのですか」と、露骨に反対を表明する幹部もおり、なかなかうまくいきません。
「社内木鶏」が軌道に乗り始めたきっかけは、致知出版社の方に助言をいただき、幹部だけでなく、正社員の全員参加を決断したことでした。そして、4人ずつのグループに分かれ、『致知』を読んだ感想を発表し合い、時間が来たら各グループリーダーが発表、全社員に学びを共有するという方式を取り入れました。
年1回の全社会議の後、全員参加の「社内木鶏」を実施した時の盛り上がりようは言葉にならないほどでした。全社員が燃え、皆が社の目標に向かって一歩を踏み出したような熱気を感じたのです。
その勢いで、全国の社内木鶏実施企業が学びの成果を発表する「第2回社内木鶏全国大会」に出場。図らずも「感動大賞」を受賞することができました。
〝人間力〟で業績も再浮上
(大滝)
「社内木鶏」の効果は、少しずつ現れ始めました。日頃『致知』から各界一流の方々の生き方に触れ、読み、書き、発表する訓練を積んでいるためか、「御社の社員は提案力が違いますね」とお客様からも言っていただけるようになり、大手に負けないユニークな技術が社員の発案で次々出てくるようにもなりました。
また、社長である私自身も『致知』を読んで感動した言葉などを社内報に載せたり、ノートに書き留めたりすることで、経営者としていかにあるべきかという〝社長学〟を深めることができました。
「社内木鶏」が全社に浸透していくにつれて、伸び悩んでいた業績も再浮上を始め、首都圏の超大型物件の受注にも多数成功、業績は過去最高を更新し続けています。この会社のよい変化は、当社に足りなかった何か、すなわち〝人間力〟が社員に身についたからに他なりません。
一昨年、当社は「全ての生き物は、必要があって生きています」で始まる「新・経営理念」を掲げました。3Kと言われたビルメンテナンス業ですが、本来はビルを綺麗・元気にし、地球の生き物を大切にする尊い仕事であるはずです。
日本の最大の悩みである「少子化」の原因は、化学物質まみれの農業に問題があると考え、「古代の土のパワー」を生かした「循環農法」に挑戦しました。「利他のために取り組むと、宇宙の後押しがある」と説いていたのは、京セラ名誉会長の稲盛和夫氏ですが、『致知』をとおして学んだ「利他の農法」を広く公開して、日本の悩みを解決したいと思います。
当社は今年50周年の節目を迎えますが、これからも『致知』に学び、その学びを「社内木鶏」を通じて社員同士で語り深め合い、人間力を高めて、百年企業となる礎を築いていきたいと思います。
(本記事は月刊誌『致知』2016年10月号から一部抜粋・編集したものです。 『致知』を活用した社員研修「社内木鶏会」が分かる小冊子(無料)のダウンロードはこちら )