大阪桐蔭・西谷浩一監督はなぜ2度も春夏連覇できたのか

全国高校野球選手権大会(甲子園)への出場を目指し、地方大会が各地で行われています。出場3730校、中でも昨秋の近畿大会では2回戦で敗退し、センバツ出場を逃した強豪の大阪桐蔭高等学校の戦いぶりが注目されています。2度の春夏連覇を果たした監督の西谷浩一さんはどのような指導法を貫いているのか――。全国大学ラグビー選手権で9連覇の金字塔を打ち立てた帝京大学ラグビー部監督の岩出雅之さんと語り合っていただきました。

敗戦が大きな転機に

(西谷)
10連覇がかかった今年1月の全国大学選手権では、惜しくも準決勝で敗退してしまいましたね。

(岩出)
全国大会で9年勝たせていただいて、逆に今年は敗戦で終わりましたけど、ここでもう1度、いい準備をしなきゃいけないという教訓を学んだと思います。これまで勝利からもたくさんのことを学んできましたが、敗戦でしか学べない部分、不足している部分を気づかせていただきました。

西谷監督は昨年、史上初となる2度目の春夏連覇を果たされたわけですが、勝因をどのように捉えていますか?

(西谷)
いま振り返ると、昨年の春夏連覇はその前年の敗戦が大きな転機になったと思います。実は一昨年も春のセンバツに優勝し、連覇がかかっていたものの、夏の甲子園3回戦で残酷的な負け方をしましてね。

1対0で9回裏ツーアウトまで勝っていて、ランナー1、2塁の場面を平凡な内野ゴロに打ち取ったので、私自身も心の中で「よし、勝った」と思いました。ところが、審判の判定はセーフ。一塁手の中川(卓也)の足がベースから離れていたと。先発投手の柿木(蓮)が直後の打者にヒットを打たれて、逆転サヨナラ負けを喫しました。

しかし、そういう苦杯を嘗めたことで、新チームのキャプテンとなった中川やエースの柿木、また主力の根尾(昴)や藤原(恭大)らを中心に、チームが一丸となったように思います。その結果、2度目の春夏連覇を果たすと共に、昨年1度も試合に負けなかったんです。まさに敗戦をバネに立ち上がり、強く逞しく成長していきました。

ここが意地の見せ所

(西谷)
一方、昨年の夏の甲子園が終わって現チームが始動してからは、最初の秋季大阪府大会の決勝戦で履正社高校に敗れ、2位で近畿大会に進み、近畿大会でもベスト4をかけた準々決勝で智辯和歌山高校に負けてしまいました。近畿大会でベスト4に入れば、春のセンバツ出場はほぼ当確なんですけど、その試合で勝てなかったわけです。

(岩出)
今回の敗戦からは何を学ばれましたか?

(西谷)
いまの3年生は入部してから1度も甲子園に出なかったことがなかった学年で、そのうち3回も優勝しているため、油断があったわけではないんですけど、負ける怖さとか悔しさを教え切れていなかったと思います。
 
履正社も智辯和歌山も共にライバル校で、ここ最近はすべてうちが勝っていましたので、打倒大阪桐蔭の気持ちが最も強い2つのチームに敗北したこと、そして春のセンバツ出場を5年ぶりに逃したことを正面から受け止めなければならないと子供たちに話しました。

その上で、センバツの開会式はキャプテンと副キャプテンの2名で優勝旗を返還したんですけど、そこから何かを感じ取ってもらいたいと思い、寮のテレビで開会式を全部員で見たんですよ。夏の優勝旗がいま学校にありますので、これを全部員で返しに行くのか、また2人だけで返しに行くのか、まさに意地の見せ所なんです。

個人を鍛えチームで勝つ

(岩出)
西谷監督は強いチームをつくる秘訣は何だと感じられていますか?

(西谷)
個人の集まりがチームですから、チームを強くしようと思ったらまず個人をどれだけ鍛えていくかが大事だと思います。ですから、秋の大会が終わって翌年の春の大会が始まるまでは、チームワークが悪くなってもいいので、とにかく己が強くなることだけを考えてやれ、60人のうちトップ20人がメンバーに入れると伝えています。

で、ある時期に来たら、皆で集合して、ここまで個人を鍛えてきたけど、ここからはチームとしての組織力を上げていきたいので、もし自分がベンチ入りメンバーに入れなかったら頑張れないという気持ちでいる者は明日からグラウンドに来ないでほしい、という言い方をするんです。メンバーから外れた子たちは裏でワンワン泣きます。

彼らの姿勢を見て、メンバーの子たちも「あいつらは悔しい思いをしているのに、こんなに頑張ってくれている。あいつらのために絶対勝とう」と言うようになる。私たちは「一球同心」をスローガンに掲げているんですが、自分のためではなく、誰かのためにという思いで心が一つになれば、負けにくいチームがつくられると思います。

(岩出)
僕の場合も約150人の部員から15人を選出しなきゃいけない。4年生だけでも30人いますので、半分以上は試合に出られないという厳しい試練が待っています。

(西谷)
4年生はもう来年がない。

(岩出)
だから4年生の責任として、一番苦しい時にどんな姿でいるのかということを考えてもらうようにしています。拗ねている姿を後輩に見せたいのか、それとも自分をごまかしてでも頑張っている姿を最後まで貫き通すのか。その姿勢如何によって、卒業後の人生は大きく変わってきますからね。

(本記事は『致知』2019年6月号の特集「看脚下」の記事より一部抜粋したものです。あなたの人生や経営、仕事の糧になる教え、ヒントが見つかる月刊『致知』の詳細・購読はこちらから)

岩出雅之(いわで・まさゆき)
昭和33年和歌山県生まれ。和歌山県立新宮高等学校を経て、55年日本体育大学体育学部卒業。滋賀県の教育委員会、中学校、高校勤務を経て、平成元年滋賀県立八幡工業高等学校へ赴任。8年帝京大学ラグビー部監督に就任。

西谷浩一(にしたに・こういち)
昭和44年兵庫県生まれ。報徳学園高等学校、関西大学で野球をプレー。平成5年同大学経済学部卒業後、大阪桐蔭高等学校に赴任し、硬式野球部のコーチとなる。10年11月から監督に就任。13年にコーチに戻ったが、14年秋に監督復帰。

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