ミスター・ラグビー、平尾誠二が語った「強い組織」の作り方

ラグビーワールドカップが9月20日に開幕するのを控え、日本代表チームの新ジャージがお披露目されるなどラグビー熱が徐々に高まりを見せています。この世紀のイベントの開催を熱望していたのが、〝ミスター・ラグビー〟こと平尾誠二さん。2016年10月、惜しくも53歳の若さでこの世を去りましたが、生前語っていた「強い組織」「強い選手」づくりの考えは、いまなお輝きを放っています。

力は出し切らないと増えない

(平尾)
僕らが(伏見工業高校の)3年の頃にはすごく強いチームになっていて、どことやっても勝っていました。前半で点差が4、50点開いたりするので、つい手を抜いたり、気を抜いたりするんですが、それでも余裕で勝ってしまう。

すると(監督の山口良治)先生は、ハーフタイムの時にえらい怒るわけですよ。「なめてんのか!」と。そしてこんな話をよくされたんです。

人間の力は、全部出し切らないと増えない。だから、余すことなく使わなければいけないのだと。いま10ある力を全部出し切ったら、10.001ぐらいになる。次の試合でその10.001を全部出したら10.002というふうに力が増えていく。

出し切らずに溜めたら逆に減ってしまうんだと。そして最後の締めくくりに、「それがお金と違うところだ」と。

キャプテンは正直言ってやりたくありませんでしたね。強い人間が集まったチームだけに、一人ひとりの個性も非常に強くて、まとめるのは実に大変でした。おかげで胃潰瘍にもなりましたしね。

楽して勝ちたいと思うやつもいれば、くそ真面目にやっているけれども試合には出せないやつもいる。いろんな思惑がある中で、どうやってバランスを取って前へ進んでいくか。

僕は、易きに流れるのはいやで、こうだと思うと少々苦であろうが行ってしまうほうですから、いろいろ衝突もする。夜一人になった時なんか、葛藤するんです。辛かったですね。

一人ひとりが考える組織に

プレーヤーは人間だから愚かなミスも犯してしまう。でも、それを抱え込んで育てていかなきゃいけない。

例えば、自分の取り組むものがおもしろければどんどん成長していきますから、そういう成長する機会をつくっていくことでチーム力を上げる努力をするわけです。

それもまた、プレーヤーが機械ではなく、人間だからこそできることであり、またそこにこそおもしろさがあるんですね。

人間は愚かさとすごさが交っていて、できればそのすごさのほうばかり出せればいいけれども、どうしても愚かさが出る。要するに、頭では正しいと解っていてもやれないことが多いということです。(中略)

いま組織は新しい転換期に差し掛かっていますし、プレーヤーの評価の仕方も変わってきています。

昔は監督の言ったことをちゃんとやってくれるのがいいプレーヤーでしたが、いまはそういうプレーヤーは頼りない。それよりも、新しいものを自分で創り出せる人が求められます。

日本のチームワークというと、皆と同じことをする、つまり団体行動を意味するんです。同じ釜の飯を食うとか、全員7時起床とか、そんなことがチームワークだとされているんですが、それは全然違うんです。

自発性をいかに引き出すか

強いチームというのは、指示された通りに動くだけではなく、イマジネーションというのを膨らませて、それぞれの状況に応じて何をすればいいかを考え出すチームです。これからは特にそういうことが求められてくると思いますね。

ルールづくりも大事ですが、本当は一人ひとりのモラールが少し上がればチームはものすごくよくなるんです。決め事をたくさんつくるチームは、本当はあまりレベルの高いチームではないですね。

僕はチームワークを高めるために、よく逆説的に「自分のためにやれ」と言うんです。結局それが1番チームのためになりますから。

みんなに、「公私混同は大いにしなさい」とも言うんです。これは、一般的な意味での公私混同ではなく、公のことを自分のことのように真剣に考えるという意味です。

個人がチームのことを自分のことのように考えていなければ、チームはよくならない。これからのチーム論としてはそういうことが大事になってくると思うんです。

ラグビーでも、いいチームは一軍の選手から控えの人間まで非常に意識が高いですよ。
試合に出ていない人間までが「俺はチームに何ができるか」ということをいつも一所懸命考えている。

その原点は何かとというと、やはり自発性にあるんですね。これをいかに高めるかということが重要です。これは自分の中から持ち上がってくる力ですから、命令形では高められない。

これをうまく引き出すことが、これからチームの指導者には必要になってきます。また、そういう組織がどんどん出てこない限り、新しい社会は生まれないと僕は思いますね。

(本記事は『致知』2005年6月号の特集 「活力を創る」より一部抜粋したものです。あなたの人生や経営、仕事の糧になる教え、ヒントが見つかる月刊『致知』の詳細・購読はこちら

平尾誠二(ひらお・せいじ)
昭和38年京都府生まれ。中学時代よりラグビーを始める。伏見工業高校、同志社大学を経て61年神戸製鋼所に入社。同社ラグビー部を7年連続日本一に導く。日本代表としてワールドカップ3大会に連続出場。平成9年~12年日本代表監督。10年現役引退後、神戸製鋼コベルコスティーラーズ総監督兼ゼネラルマネージャー。28年10月京都市内の病院で死去。

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