「真の成長は人として大きくなること」——仕事と人生に活かすドラッカーの教え

世界中のビジネスマンが座右に置き、日々の指針にするピーター・F・ドラッカーの著書。その言葉や教えはいまなお力強い説得力を持ち、私たちの仕事や人生の指針となっています。月刊『致知』では2019年2月号から、新たにドラッカーの教えを仕事や人生に生かすための連載が始まりました。著者は、ドラッカー公認の唯一の学術団体であるドラッカー学会の理事を務める佐藤等さん。記念すべき連載第1回の内容をご紹介いたします。

成長とは自らの強みを 生かすことである

あなたは、日々、誰の成長を願って働いているでしょうか。人の成長に関するドラッカーの言葉は数多くあります。なぜでしょうか。ドラッカーの思想の原点にあるのは、「世のため人のため」という一言です。この言葉には、組織という社会的道具の2つの目的が込められています。

ドラッカーは、「組織は社会的な道具」だといいます。時計や携帯電話と同じように組織も人類が生み出した道具です。道具には、必ず目的があります。世の中に目的のない道具は存在しません。しかし、組織という道具の目的は意外に知られていません。もしくは、日々のことで忙殺され忘れ去られています。目的を忘れて道具本来の機能を最大限に引き出すことはできません。

組織という道具の効果的な使い方をマネジメントといいます。その原点に目的の確認があります。

組織の目的の第1は、世の中の人に喜ばれること、具体的には、魅力的な製品やサービスを提供することでお客様に満足してもらうことです。目的の第2は、組織で働く人を成長させることです。その実現のための基本的な心構えが、人の成長のために働くことです。両者は相互補完的です。魅力的な製品やサービスを提供するための仕事をとおして人は成長するということです。

今こそこの言葉の意味を噛みしめるべきときです。日本の若年労働力は減る一方だからです。1992年に200万人以上あった18歳人口は、今では120万人を切り、将来100万人を割ることは確実です。人材不足は喫緊の課題です。少ない人材で組織を成長させようとしたら、これまで以上に人の成長が重要になります。

誰もが組織の成長を願います。しかし、そこに働く者の成長を真に願っている者はどれだけいるでしょうか。組織の成長を願うならば、そこで働く者の成長に目を向け、その手助けをしたいものです。

人気企業で働く人の「働きがい」を示す8項目が、ある調査で示されていました。「人材の成長育成」に加えて、「20代の成長環境」が入っていたことに驚きました。若い人たちは、真剣に成長したいと願っているのです。

真に人の成長を目的に仕事をしている組織には、人が集まり、定着します。人材不足はこれから本番を迎えます。少し時間はかかりますが、人がいないと嘆く前にやるべきことはまだまだあるのではないでしょうか。

真の成長は人として 大きくなることである

人は、強みを活かし、スキルを向上させながら成長します。この成長のことをドラッカーは、「外なる成長」といいます。成長にはもう1つ「内なる成長」があることを示し、これを「人として大きくなることである」(『非営利組織の経営』)と表現しました。

人は、仕事をとおして自らの強みを生かし、スキルを高めると同時に、人とともに仕事をすることで人間性を鍛え、自らの人格を高め、深めていきます。そしてその自分をもって人の役に立つことを学んでいきます。それが成長です。

現代は組織社会です。1人で世の中の役に立つのではなく、組織の使命(ミッション)の実現を目指してその一隅で仕事をし、同時に責任を果たすのです。お客様に対する責任、ともに働く者に対する責任、会社に託されたお金に対する責任…責任には種々ありますが、どの責任も人間の器を鍛え、成長させてくれるものです。

組織で働く者の場合、責任を自分独自の基準で決められるものではありません。組織は社会的な役割を果たす道具ですから、責任は社会を基準として決まります。

組織で人と働くということは、成長する環境に自らを置くことです。組織は、人類が考案した社会的な道具です。組織に使われるのではなく、道具として自らの成長のために使いこなしていきたいものです。マネジメントとは、組織の使い方であり、そこに属する者すべてが身につけておくべきものなのです。

(本記事は月刊『致知』2019年2月号「仕事と人生に生かすドラッカーの教え①」から抜粋・編集したものです。あなたの人生や経営、仕事の糧になる教え、ヒントが見つかる月刊『致知』の詳細・購読はこちら)

佐藤 等(さとう・ひとし)

昭和36年北海道生まれ。59年小樽商科大学商学部商業学科卒業。平成2年公認会計士試験合格。公認会計士事務所開設。14年同大学大学院商学研究科修士課程修了。ドラッカー学会理事。編著に『実践するドラッカー』シリーズ(ダイヤモンド社)がある。

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