新元号「令和」発表!『万葉集』に学ぶ美しい日本の心

新元号「令和」の出典となったことで、一気に注目が高まっている「万葉集」。弊社から刊行されている『万葉集一日一首』も大きな反響をいただいております。本書がユニークなのは、4,500余首の和歌の中から、“歌の詠まれた日付”をもとに366首を選択し、訳と解説を加えているところ。本日は本書から一部をご紹介いたします。

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4月2日に読まれた和歌

玉に貫(ぬ)く あふちを家に 植ゑたらば
  山ほととぎす 離(か)れず来むかも  (大伴書持)

端午の節句の薬玉にするオウチ(栴檀)を家の庭に植えたならば、ほととぎすは毎日来鳴くかなあ。

天平13年(741)4月2日、久邇京(京都府相楽郡加茂町周辺)遷都後、旧都平城京(奈良市)にいた弟書持から、久邇京の家持に贈られた歌です。今から1200余年も前の4月2日(今の暦(太陽暦)に換算すると5月24日にあたる)、平城京と久邇京とに別れた大伴家持・書持兄弟が、「ほととぎす」をめぐってこのような歌のやりとりをしたことに思いを巡らせてみることは、とても楽しいことでしょう。

1300年以上日本人に愛されてきた「万葉集」

万葉集全20巻は、天平宝字3(759)年正月1日に大伴家持が詠んだ、

新(あらた)しき年の初めの初春の今日降る雪のいや重(し)け吉事(よごと)(⒛・四五一六)

をもって閉じられます。家持は「いや重け吉事」、いよいよ重なれよきことよ、と歌うことにより、そのことが実現されることを願いました。その歌を巻末に収める、「万葉」―永遠に伝えられんことを祈念して命名されたその歌集は、1300余年経った今も読み続けられています。歌の言葉がいかに人を魅了するものであるかをあらためて思わずにはいられません。

万葉集には、古い伝説の時代の歌も収録されているのですが、年代のわかるものでは、平城京遷都(710年)をはさんで、630年頃から先述の759年までの、だいたい130年の間に詠まれた歌が収められています。その4500余首の歌には、天皇から名もなき人に至るまでの、さまざまな思いが込められています。

万葉集の時代の人々は、今よりもずっとみずみずしい気持ちで季節を迎えました。また、これほど素直に思いを表現できたらどんなによいだろう、と思うほどに喜びや悲しみ、苦しみを歌います。

一方、知識人、つまり仏教や中国文学といった当時の先進的な知識を持った人は、この世の無常を悲しみ、己の無力さを嘆きます。そして、1人っ子であることを嘆く歌、白髪になってもこのような恋をするのかと嘆息する歌、夏痩せには鰻を食べるのがよいと勧める歌も万葉集にはみえます。いつの世も変わらぬ人の思いに、驚きつつ共感させられます。

この『万葉集一日一首』を編むのにあたっては、2つの思いを込めました。

1つは、「一日一首」がテーマなので、1300余年前のこの日付の日にこのような出来事があって、この歌が詠まれたのだと思いを巡らせてみていただけたらと願い、日付をもとに歌を選びました。万葉集の中で作歌事情の詳細がわかる歌は、編纂者と考えられる大伴家持周辺の歌に限られています。歌に関わる日付にこだわった結果、本書には自然と家持の詠んだ歌が多くなりました。

もう1つは、私事で本当に恐縮なのですが、これまで無言で見守ってくれた父が、毎朝これを読んでさわやかに一日を迎えてくれたらという祈りをこめて、この366首を選びました。

当初、万葉集全歌4500余首から、「一日一首」、すなわち366首を選ぶことが、これほど悩ましくも楽しいことであろうとは思ってもみませんでした。しかし、一度は掌からこぼれた歌々の中にきらきらしたものを見つけ、惜しくて再び手に取ったり、こぼしたりということを何度も繰り返しました。ほんとうに何度も。その中で、あらためて万葉集の歌に惹かれました。そして、その魅力を父に伝えたいと思いました。しかし、その思いは、叶わなくなってしまいました。

本書を通して、読んでくださる方に万葉集の煌めきの一つでもお届けできたとしたら、さらにその人が、本書をきっかけに次は万葉集そのものを読んでみようと思ってくださったとしたら、こんなに嬉しいことはありません。

(本記事は致知出版社刊『万葉集一日一首』を一部抜粋・編集したものです。あなたの人生、仕事の糧になる言葉、教えが見つかる月刊『致知』の詳細・購読はこちら

花井しおり(はない・しおり)

愛知県生まれ。奈良女子大学大学院人間文化研究科(博士課程)修了。奈良女子大学博士(文学)。平成18年より愛知県岡崎市にある人間環境大学専任講師。同21年人間環境大学准教授、現在に至る。共著に『セミナー 万葉の歌人と作品 第八巻』(和泉書院)などがある。

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