原因不明の体調不良を救った「心」と発酵食品の力——栗生隆子さんの体験的健康法

14歳の時から実に20年以上も、原因不明の体調不良に苦しめられていた栗生隆子さん。その苦しみを断ち切ってくれたのが、発酵食品の力だったといいます。以来、発酵生活研究家として活動を続ける栗生さんに、発酵食品との出逢いとその知られざる力について語っていただきました。(本記事は月刊『致知』2018年11月号 特集「自己を丹誠(たんせい)する」より一部を抜粋・編集したものです)

各界一流プロフェッショナルの体験談を多数掲載、定期購読者数No.1(約11万8,000人)の総合月刊誌『致知』。人間力を高め、学び続ける習慣をお届けします。
1年12冊の『致知』ご購読・詳細はこちら※動機詳細は「③HP・WEB chichiを見て」を選択ください

突然、原因不明の病に侵されて

〈栗生〉
この活動を始めたきっかけは14歳まで遡ります。突然、下痢や頭痛、めまいに悩まされるようになったのです。最もひどかったのが下痢でした。過敏性腸症候群のような症状で、下痢、便秘が繰り返され、その度に腹部に激痛が走るのです。

いくつもの病院を回って精密検査をするも、診断結果は決まって「異常なし」。治療法がないので、全身に力を入れて痛みを堪え忍ぶしかなく、次第に日常生活にまで支障をきたすようになりました。

 〔中略〕

西洋、東洋医学をはじめ、体にいいと言われる民間療法はすべて試みましたが、回復の兆しが見えませんでした。加えて、定期的に痛みに襲われるのは、精神をすり減らしていくものです。肉体的苦痛から、「もう限界、これ以上生きられない」と極限状態に至ることが度々ありました。

何度かそのようなことが繰り返されると、やがて精神は追い込まれていきます。その時に、生きるのにもエネルギーが必要ですが、死もまた生と同じくらいのエネルギーであると感じました。

生と死は現れが違うだけで同じエネルギーだと思った時、どちらの選択もできないと感じ、いままでの価値観、思考が崩れました。そして、いまでも理由は分かりませんが、生と死という両極端の方向から途轍もない力で引っ張られ、その瞬間、意識だけがポンッと時空間に飛んでしまった感覚になりました。

それは臨死体験とは少し異なり、意識だけが鮮明にある奇妙な空間でした。自分の姿も景色も光も闇も何も見えません。

しかし、思考は鮮明にあるので、「これが死んだ後の世界だ」と感じたのを覚えています。そこで私は〝苦しみ〟の塊のようなものを持っていました。それまで「死んだら楽になれる」と考えていたのに、意識だけの状態になっても、苦しみはしっかりとあったのです。

その空間ではなぜか時間軸を変更でき、意識だけが飛んでいける設定になっていました。私は苦しみを軽減したい一心で、試しに1年後に飛んでみました。しかし、苦しみはそのまま。3年、5年、10年と未来に行ってもその苦しみは変わらず、百年後に飛んでもなくなりません。

「百年も経てば人の一生は終わるのに、それでも苦しみが取れないというのはどういうこと?」

と衝撃を受け、私はやけになって、痛みが取れるまで未来に進んでみることにしたのです。200年後、1,000年後、1万年後へ行き、最後に2万5千年後まで行ったところでようやく気づきました。

「時間という概念はなく、よって苦しみはなくならない。この病気の肉体で喜怒哀楽を体験することに意味があるのだ。五感は肉体がある時にしか知ることはできない」と。そして「帰ろう」と鮮明に思ったのです。

そうしたら、意識の世界から戻って来られて、自宅で目を覚ましました。どのくらい時間が経ったのか分かりませんが、目の前の景色は同じで、体の状態も辛いまま。何一つ状況は変わっていません。唯一変わったのは、私の中で「生きる」ということ以外、一切の願望や欲望がなくなったことでした。

ひと筋の光明となった甘酒

〈栗生〉
何事にも共通すると思いますが、覚悟し、一度受け入れることからすべての道は開けるのでしょう。病の自分を全肯定した僅か4日後に、それまであらゆる方法を試しても一向によくならなかった私の体に合う治療法に出逢うことになります。2004年のことでした。

それは「冷え取り健康法」と言って、靴下を重ね履きして体の冷えを取り除くことで、あらゆる体の不調を改善していく治療法でした。紹介を受けた当初は、腸が悪いのに足しかケアしないこの方法に疑問を抱きながらも、冷え取り靴下を履くと、体が温かくなった実感がありました。そして1年ほど続けると、あれほどひどかった過敏性腸症候群が7~8割方、治ったのです。

ちょうどその頃に出逢ったのが、発酵食品でした。偶然立ち寄ったデパートの物産展で、酒屋さんから甘酒の試飲を勧められたのがきっかけです。

まだ腸の状態が万全ではないので躊躇しましたが、甘酒は老若男女問わず飲めて、「天然の点滴」と言われるほど疲労回復にも効果があると教えていただき、半信半疑で飲んでみると、腸がほっと落ち着くのが分かりました。

それまで何かを食べてこんなにも腸が好反応を示したことはなかったので非常に驚きました。原材料を見ると、「米と米麹(こめこうじ)」と書いてあります。「麹って何? カビの一種?」。そんな無知のところから麹について調べ始めました。

私が麹に出逢った2005年頃は「塩麹」がブームになる前で、いまのように手軽に麹や甘酒が売られている状況ではありませんでした。酒屋さんや味噌屋さんから麹を分けていただきながら発酵について学んだり、通販を利用する場合でもネットではなく必ず電話で注文し、そこで一つ質問をさせてもらう形で知識を増やしていきました。

独学で発酵について学ぶうちに、発酵食品に含まれる菌が腸内菌を蘇らせ、薬に頼らずに過ごせるまでに回復。頭痛、めまい、肩こりも解消された他、肌が潤って保湿剤が不要になるなど、全身がイキイキとしてきたのです。

心も体も元気になった上に、味もおいしいとあって、発酵の虜になりました。麹に始まり味噌や醤油、ヨーグルトなどの食品、さらにはお米のとぎ汁で簡単にできる「お米の発酵水」をつくって、掃除に活用するようにもなりました。

こうした生活は何も特別なことではなく、昔から生活の知恵として家庭で行われていたことです。近年薄れつつあるそうした習慣を1人でも多くの人に伝えるために、冒頭で述べた「発酵生活研究家」としての活動を開始したのです。


◎2025年5月号 特集「すれどもうすろがず」に栗生さんがご登場!

「病が また一つの世界を ひらいてくれた 桃 咲く」。詩人の坂村真民さんは、重い病の苦しみを経て、新たな心境に至った歓びをこう綴った。3人の子を抱え30代で突然の余命宣告を受けるも奇跡的に快復し、師に学んだ料理指南を続ける米澤佐枝子さん。14歳から20年も原因不明の不調に悩まされ、日本古来の発酵が持つ力に目覚めた栗生隆子さん。お二人は病をどう受け止め、与えられた生を愉しんでおられるのか。【詳細は下記バナーをクリック↓】

 

栗生隆子(くりゅう・たかこ)
昭和47年岐阜県生まれ。14歳の時から20年以上、原因不明の体調不良に悩まされるも、平成16年に冷え取り健康法に、17年に発酵食品に出逢い、病を完治。以来、発酵食品の魅力を伝えるべく精力的に執筆活動や国内外で講演を行う。管理人を務めるフェイスブック「TGG豆乳ヨーグルト同好会」は1万5千人ものメンバーが集う。著書に『豆乳グルグルヨーグルトで腸美人! 』(マキノ出版)『からだにおいしい発酵生活』(宝島社)など多数。

各界一流プロフェッショナルの体験談を多数掲載、定期購読者数No.1(約11万8,000人)の総合月刊誌『致知』。人間力を高め、学び続ける習慣をお届けします。

1年間(全12冊)

定価14,400円

11,500

(税込/送料無料)

1冊あたり
約958円

(税込/送料無料)

人間力・仕事力を高める
記事をメルマガで受け取る

その他のメルマガご案内はこちら

『致知』には毎号、あなたの人間力を高める記事が掲載されています。
まだお読みでない方は、こちらからお申し込みください。

※お気軽に1年購読 11,500円(1冊あたり958円/税・送料込み)
※おトクな3年購読 31,000円(1冊あたり861円/税・送料込み)

人間学の月刊誌 致知とは

人気ランキング

  1. 【WEB chichi限定記事】

    【取材手記】ふるさと納税受入額で5度の日本一! 宮崎県都城市市長・池田宜永が語った「組織を発展させる秘訣」

  2. 人生

    大谷翔平、菊池雄星を育てた花巻東高校・佐々木洋監督が語った「何をやってもツイてる人、空回りする人の4つの差」

  3. 【WEB chichi限定記事】

    【編集長取材手記】不思議と運命が好転する「一流の人が実践しているちょっとした心の習慣」——増田明美×浅見帆帆子

  4. 【WEB chichi限定記事】

    【取材手記】持って生まれた運命を変えるには!? 稀代の観相家・水野南北が説く〝陰徳〟のすすめ

  5. 子育て・教育

    赤ちゃんは母親を選んで生まれてくる ——「胎内記憶」が私たちに示すもの

  6. 仕事

    リアル“下町ロケット”! 植松電機社長・植松 努の宇宙への挑戦

  7. 注目の一冊

    なぜ若者たちは笑顔で飛び立っていったのか——ある特攻隊員の最期の言葉

  8. 人生

    卵を投げつけられた王貞治が放った驚きのひと言——福岡ソフトバンクホークス監督・小久保裕紀が振り返る

  9. 【WEB chichi限定記事】

    【取材手記】勝利の秘訣は日常にあり——世界チャンピオンが苦節を経て掴んだ勝負哲学〈登坂絵莉〉

  10. 仕事

    「勝負の神は細部に宿る」日本サッカー界を牽引してきた岡田武史監督の勝負哲学

人間力・仕事力を高める
記事をメルマガで受け取る

その他のメルマガご案内はこちら

閉じる