メリット・デメリットは考えない——。「北海道物産展」のカリスマバイヤー・本田大助に訊く、ご縁の繋ぎ方

大丸松坂屋の催事で一番人気を誇る「北海道物産展」。その立役者こそ、百貨店業界唯一の現地駐在バイヤーこと本田大助さんです。広大な北の大地を覆い尽くすほどの熱量で、ひたすらに「おいしいもの」を提供し続ける――。そんな思いの丈を語っていただきました。

僕は「北海道の」宣伝マン

――これまで多くの北海道展を手掛けてこられた中で、いつもどんなことを心掛けてきましたか。

〈本田〉
僕は「北海道の宣伝マン」のつもりで、北海道のおいしいものを多くのお客様に知っていただきたいと思ってやってきました。宣伝マンという言葉は少しチープな印象を与えるかもしれませんが、いかに伝えるかということはとても大事だと思っています。いくらいい物があっても、伝え方がよくなければお客様には何も伝わりませんからね。

それに僕は生産者の方々の苦労というものを現地で目の当たりにしているからなおさらなんです。例えば、漁師さんにしても命懸けで魚を獲っているわけじゃないですか。僕はよく船にも乗せてもらうので、その苦労がとてもよく分かる。でも、そうして苦労して獲った魚も、その場にポンとあるだけでは何も伝わりません。

これを売るためには何をしなければいけないのか、どうすれば伝えられるのか。そのためには演出も必要ですし、とにかくいろんなことを考えていって、最終的にそれを手に取ってくださったお客様が、「おいしかった。またこれを買いたいな」と言っていただけるのが一番嬉しいですね。

ですから僕は伝えるということに関しては労力を一切惜しんでいないんですよ。最大限、心血を注いできました。何もないところから一つの道をつくってきたということもあると思いますが、とにかく全力でやること、そして人とのご縁を大事にすることを信条としてずっとやってきました。

――本田さんはその2つを大事にしてこられたわけですね。〈本田〉
これまで優に100回を超える北海道展を手掛けてきましたけど、途中で行き詰まることも結構あったんです。例えば、会期の1か月前になって、ある企画が突然ダメになったこともありました。

でも、そんな時には、必ず誰かが助けてくれたんです。本当に不思議なんですけど、取引先からパッと電話がかかってきて、「うちでこんなことできますよ」って。でもそれって僕が助けてと言って助けられたのではなく、まるでどこからか救いの手が下りてくるような感じでした。

どうしてこんなことが起こるのかと考えると、これまで紡いできた縁のおかげかなと思うんですね。と言うのは、例えば僕はどんなに忙しい時でも、訪問客が来るとなれば、道内の遠方から来ていただいているわけですから、基本的にまず断らないんです。先約のある時間帯に何かの会合がポンと入ってきて、ちょっと行けないなと思っても、途中で顔を出そうとか。

――その積み重ねが不思議な出来事を引き寄せていると。

〈本田〉
おそらくメリットデメリットを考えて仕事をしていたら、そんなことは起こらないと思うんです。僕の場合は何もないところからつくり上げていく中で、基本的に自分の損得関係なしに人付き合いをしてきましたから、それがよかったのかもしれません。

 

新たな価値を生み出す

■新たな価値を生み出す

――本田さんは「北海道物産展」の専任バイヤーとして活躍されていますが、現地駐在というのは珍しいですね。

〈本田〉 
そうですよね。現地駐在バイヤーというのは、たぶん百貨店業界でも僕だけだと思います。ただ、北海道とひと口に言っても、函館から東側にある羅臼までの距離は東京から大阪までの距離と同じくらいですからとにかく広大で、自然環境は厳しい面もありますが、とても豊かですね。
 
だからこそ北海道の大地ではよい農作物ができるわけで、海は海で四方を囲むオホーツク海や太平洋、日本海で獲れるものも違ってきます。そうした多様な食材を本州のお客様に提案できるというのが、北海道の魅力ですよね。
  
――今年で北海道に駐在して何年目になりますか?

〈本田〉 
13年目になりますけど、自然というのは面白いもので、興味は尽きません。魚一つとっても、獲れるものが年とともに変わってくるんですよ。
 
例えば、僕が来た頃に比べて烏賊やホッケが獲れなくなっていて、浜値が大きく上昇している。反対に、これまで獲れなかった鰤や鯖、鰯なんかがここ最近獲れるようになってきました。北海道産の鰤といってもブランド価値はまだあまりありませんけど、漁師さんや組合とタイアップしてブランド化していくことも今後できるわけで、新たな価値をつくって発信していけるという面白さもあります。
 
一方、お菓子では四番バッター的なブランドが北海道にはいくつかありますけど、最近は本州で修業を積んだパティシエが北海道に戻ってきて、地元の素材を活かしたスイーツで人気を博しているケースが結構あるんです。そういった新しいお店と組んで何かできないかと模索するのも、現地にいるとできますよね。
  
――そうやって常に道内の動きをご自分の目で見て回られている。

〈本田〉
そうですね。やはり商売というのは、いろんな人との縁を紡ぐことでできていくのであって、一人の力では何もできません。いろいろなネットワークがあることでそこに新たな発想とか、「これとこれを組み合わせたらこんなことができるんじゃないか」というアイデアも生まれてきます。
 
僕がよく言うのは、1と1を足した時に2じゃなくて3にしようと。より多くのお客様に受け入れていただけるように、単に素材だけで勝負するのではなく、そこに新たな付加価値をつくれないかということは常に考えていますね。
  
――今回お伺いしている大丸松坂屋名古屋店で開催されている「北海道大物産展」でも何か新たな試みがあるのでしょうか。

〈本田〉 
新しい企画としてはマグロの解体ですね。マグロというと冬のイメージがありますけど、北海道では8月9月でも獲れるんです。ですから相場が比較的安定しているこの時期に、現地から送り込んで会場で解体しましょうと。
 
でもそれだけじゃ面白くないですよね。そこで函館で人気の丼ぶり屋さんも来ているので、解体したマグロの海鮮丼もつくってもらうことにしました。また、蟹で人気の札幌のお弁当屋さんとは、マグロも一緒に入れたら面白いかもしれないという話になって、新しいお弁当をつくって売り出してもらいました。他にも道外初の出店となった高級リゾートホテルのシュークリームとか、帯広で行列ができるパン屋さんにも出店していただいているんですよ。
  
――そういった試みを一つずつ積み重ねているわけですね。

〈本田〉 
ええ。この13年間で多い年には19本の北海道展を手掛けてきました。最近は、上野、静岡、名古屋、豊田、京都でそれぞれ年に2回ずつと、分店もいくつか手伝っているので、だいたい年に12、3回ですね。店舗の規模によって異なりますが、1週間の開催期間で数億円の売り上げを上げることもあるんですよ。

(本記事は『致知』2017年12月号 特集「遊」より、記事の一部を抜粋・編集したものです。『致知』には人間力・仕事力を高める記事が満載! 詳細・ご購読はこちら

本田大助(ほんだ・だいすけ)
昭和44年兵庫県生まれ。関西学院大学法学部卒業後、平成4年大丸(現・大丸松坂屋百貨店)に入社。大丸神戸店、大丸須磨店の食品部勤務を経て、15年から催事運営部バイヤーとして札幌に駐在。

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