83歳の現役美容家。小林照子の輝く生き方・働き方

83歳のいまも美容研究家として第一線で活躍する小林照子さん。美容液やパウダーファンデーションを生み出すなど商品開発に力を注いできました。今日まで、仕事を続けることへのご主人の反対、仕事と育児の両立、更年期障害など数々の悩みを乗り越え、60年間、常に第一線で活躍されてきた歩みの一部をご紹介します。

ヒット商品は、喉から手が出るほど欲しかった物

──現在の活動を始める前はコーセーに勤め、数々のヒット商品を生み出してこられたそうですね。

 手前味噌ですが、40代の頃に世界で初めて美容液やパウダーファンデーションを生み出しました。会社のためよりも、使う人のためを貫いたことがよかったのだと思います。こんな商品があれば皆が喜ぶんじゃないか、綺麗になるんじゃないかと常に考えながら商品開発を続けてきました。 

また、それらの商品は私自身が喉から手が出るほど欲しかった商品でもあるんです(笑)。例えば、美容液をつくった頃の私は、美容部長として第一線で働きながら、家庭では家事と子育てに奔走。忙しいけれど、化粧品会社の顔として人前に出るので自分のスキンケアも疎かにできない。そんな汲々とした状況の中で知恵が出てきたのだと思います。 

それまでスキンケアは「化粧水→乳液→クリーム」という流れが一般的でしたが、3つのステップを包括したオールインワン化粧品・美容液をつくり上げたんです。 

──忙しい女性にとっては救世主のような商品です。

でも、会社の利益の面で考えると、それまで3つの商品を購入していただけていたのに、一つで済んでしまうわけです。私はあくまで使う人目線で物事を考えていましたから、会社の利益を考えてくれる人と常に二人一組になって商品開発を行っていました。

互いにそれぞれの主張をぶつけるため、年中激しい喧嘩や議論をしていた記憶がありますが(笑)、パウダーファンデーションも同様の発想で商品化されました。

 ──それほど真剣だったからよい商品が生み出せたのでしょうね。

組織を一つの演劇団と捉えると、役割の分担だと思うんです。会社の視点に立つと私は会社の利益を考えない悪役ですが、悪役がいるからいい演劇に仕上がる。商品開発も同様です。 

60年間、第一線で活躍する中で学んだこと

小林照子さんに取材をさせていただき真っ先に感じたことは、幼稚な言葉ですが、「全く83歳に見えない!」ということでした。肌も美しく、笑顔も素敵。そして夢を語り続けるお姿には感動の連続でした。

仕事も家事も子育てもお忙しい中で、常に全力投球を続けられた秘訣を伺った際に、お話になった言葉が非常に心に残っています。

「生徒たちにもよく伝えているんですが、常に5年後、10年後などの夢や目標を意識し、それを日常の具体的行動まで落とし込むことが大事。夢を語り行動することで、夢が夢で終わらずに、叶えることができる。それが私のいまの実感です」

小林さんはいまでも、15歳の高校生に交じって、夢を語り続けていらっしゃるそう。それが夢を実現できる方法で、そして若々しくいられる秘訣なのだと感じました。

20代から第一線で活躍されてきた小林さんですが、実は最初の頃、ご主人は仕事を続けることに大反対されていたと言います。

「主人は、『母は家にいるべき』と言い続けていました。でも、私が聞く耳を持たずに一所懸命働いていると、不思議なことに、10年経った頃からコロリと意見が変わって、私の部下に対しても『女でも仕事は続けるべきだ!』なんて言うようになっていました(笑)。」

女性は特に悩みを抱える人が多いのが、更年期障害です。小林さんも更年期障害に悩まされたこともありました。その時の「小林流心の休め方」に学びます。

「やっぱり女性は40代から50代にかけて、更年期に差し掛かると、ホルモンバランスが崩れ、心身に様々な不調が表れてきます。その時に、以前と同じように全力で頑張り過ぎてしまうと、疲れてしまうんです。

 私が皆さんにお勧めしているのが朗らかさを「自家発電」することです。女性ホルモンがたくさんあれば、何もしなくても朗らかでいられるんですが、更年期の時は朗らかさをつくり出してしまう。なんでもいいから笑って、笑顔で乗り切ることが大切だと思います」

小林照子さんのご体験談が、少しでも皆様の「心のビタミン」になれば幸いです。

(本記事は『致知』2019年1月号「仕事と人生」 連載「第一線で活躍する女性」より一部抜粋・再編したものです)

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◇小林照子(こばやし・てるこ)
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こばやし・てるこ――昭和10年東京生まれ。33年小林コーセー(現・コーセー)に入社。美容液、パウダーファンデーションを世界で初めて生み出し、大ヒットさせる。58年にザ・ベストメイキャップスクール設立、初代校長に就任。60年コーセー初の女性取締役に就任。平成3年56歳で独立し、美・ファイン研究所を設立。6年にフロムハンドメイクアップアカデミーを、22年に青山ビューティー学院高等部を開校。著書に『これはしない、あれはする』(サンマーク出版)など多数。

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