「一日一死」の教え——世界トップクラスの集客力を誇る木下サーカスの原動力とは?

世界でも突出した集客力を誇る木下サーカス。しかし、その歩みは決して平坦ではなく、いまに至るまでには数々の困難がありました。木下サーカスを興隆の道へと導いた4代目社長・木下唯志さんに、経営の支えにしてきた信念をお話しいただきました。

一瞬一瞬を生きる

〈木下〉
もっとも、そうした取り組み以前に、別の問題もありました。

社長就任当時、私は40代半ばにも達しておらず、古参の幹部からすれば小僧みたいなもので、何かと父や兄と比べられるんですよ。それに幹部がそんな状態だから、社員も身勝手とまでは言わなくても、皆それぞれ自分が偉いと思っているから組織はキチッとされていない状態でした。

そういう中でやっていくのは、大変なわけですよ。でもどんな辛い時でも、「一日一死」の思いでやってきました。

―― 一日一死、ですか。

〈木下〉
私は明治大学時代、剣道部に所属していました。最初は全くの初心者だったので、当時師範だった森嶋先生というすごい方がいることも知らずに入ったんです。その先生はとにかく厳しい方で、出身大学の国士舘には学生時代に使っていた血の滲んだ木刀が飾られていて、警視庁では首席を取られていたんですよ。

当然、指導もものすごく厳しくて、最初の頃は同輩たちも道場に行くのが嫌なわけです。足が竦む。それくらい厳しい稽古でしたから。

そんな私に、ある先輩が教えてくれたのが「一日一死」という言葉でした。とにかく道場に一歩足を踏み入れたら、きょう一日で自分は死ぬんだと覚悟を決めろと。

それまでの私は、その日の稽古をしながら、明日も明後日もこんな苦しい日が続くのかと思っては、気が滅入っていたんですよ。ところが先のことを思い煩うことなく、一瞬一瞬を生きればいいんだと思ったら、何だかものすごく心が救われましてね。そのおかげで20人いた同期のうち、卒業まで残った4人の一人になることができたんですよ。

――剣道部での4年間で培ったものが原動力になったわけですね。

〈木下〉
そうです。負債のことや社内の人間関係をいくら思い煩っても何も変わりません。それよりもどんなに辛くても、きょう一日をどう生きるかに集中しようと。

(本記事は『致知』2016年6月号特集「関を越える」より一部を抜粋・編集したものです。『致知』にはあなたの人生、仕事、経営に役立つ一流の方々のご体験談が満載です!詳細・ご購読はこちら

◇木下唯志(きのした・ただし)
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昭和25年岡山県生まれ。岡山県立操山高等学校を卒業後、明治大学に進学。49年木下サーカス入社。平成3年4代目社長に就任、現在に至る。

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