2018年12月02日
「千日回峰行」と並ぶ比叡山で最も過酷な行の一つであり、その厳しさゆえに掃除地獄、静の荒行と呼ばれる「十二年籠山行」。その行を戦後初めて満行した三千院門跡第六十二世門主・堀澤祖門師。そしてその弟子であり、戦後6人目の満行者となった宮本祖豊師。過酷な行を超えて、いまなお厳しい求道の道を歩み続けるお二人が語り合う、「道を求める」生き方――。
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バックにはお釈迦様がいる
(堀澤)
私は70年近く行を続けてきたわけだけど、行そのものには終わりはない。ただね、終わりはないけれども、いつまでも「まだまだ」じゃダメ。不安感で覆われてしまうからね。それを断ち切るにはどこかで「よし」という気持ちを持たないといけない。
「よし」ということは終わりじゃなくて、自分で納得してまた新たに進んでいくということ。進行形と、ゴールに既に着いているということは同時なの。
でも、自分で「よし」と手応えを感じるまでには50~60年かかったな。
(宮本)
50~60年ですか。
(堀澤)
80くらいになってやっと、人間とか仏教とかいろんなものが分かってきて、人生が楽しくなってきた。やっぱり高いところを求めているから、そう簡単に満足できませんわ。
出家した時に考えたのは、私の師匠は確かに叡南祖賢だけれども、叡南祖賢だけじゃない。そのバックにはお釈迦様がいる。だから、お釈迦様のレベルまで行かなきゃならない。本当の師匠はお釈迦様だと。
そう考えると、もうこれでいいとか、もう行は終わったなんてことはない。無窮って言葉があるように、道を求めるというのはそういうことなんだね。
(宮本)
本当の師匠はお釈迦様というお話とも関連しますけれども、私が師匠から教えてもらったことの中で、特に印象に残っているのは「縦と横の話」です。
坐禅はもちろんのこと、世間のいろんな場面でもって、この縦と横がしっかりしていなかったらいけないんだと。
(堀澤)
自分の座標軸をしっかり持つということだね。例えば、最近多い核家族、これは横だけ。縦の繋がりが希薄だから壊れやすい。経糸と緯糸がないと織物にならないように、縦と横があって初めて家族は構成される。家族だけじゃなくて、
個人も会社も国もすべてに当てはまることでしょうな。
(宮本)
座標軸が定まってくると、生き方の土台ができてきて、それがそのまま坐禅にも表れるんだなと、その時に感じました。
(本記事は『致知』2017年7月号 特集「師と弟子」より一部を抜粋・編集したものです) ◎各界一流プロフェッショナルの珠玉の体験談を多数掲載、定期購読者数No.1(約11万8,000人)の総合月刊誌『致知』。あなたの人間力を高める、学び続ける習慣をお届けします。 たった3分で手続き完了、1年12冊の『致知』ご購読・詳細はこちら。 ≪「あなたの人間力を高める人間力メルマガ」の登録はこちら≫
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昭和4年新潟県生まれ。25年京都大学を中退して得度受戒。39年十二年籠山行を戦後初めて達成。平成12年叡山学院院長、14年天台座主への登竜門「戸津説法」の説法師を務める。25年12月より現職。著書に『君は仏 私も仏』(恒文社)『求道遍歴』(法藏館)など。
◇宮本祖豊(みやもと・そほう)
昭和35年北海道生まれ。59年出家得度。平成9年好相行満行。21年戦後6人目となる十二年籠山行満行を果たす。現在は比叡山延暦寺円龍院住職、比叡山延暦寺居士林所長を務める。著書に『覚悟の力』(致知出版社)がある