江戸時代のイクメン教科書から学ぶ——子供に生きていく力をつけさせる教育法

テレビ・雑誌・新聞などで多数紹介され、ロングセラーとなっている『女子の武士道』や『女子の教養』の著者・石川真理子さんによる新刊がまもなく発売開始となります。子供に生きていく力をつけさせる本当の家庭教育とは、どんなものなのか。父性のあり方が問われる昨今、父親のあるべき姿を、武家が行っていた教育から学びます。「家庭教育の立て直しが急務である現在、徳性を磨き上げる武士の教育は格好の手本とすることができる」と石川さん。徳性を高める教育、いまでいう“人間力”を磨く教育が最も施されたのは武士階級だった、といわれるのです。本書刊行に寄せる思いが綴られた「はじめに」の文章の一部をご紹介します。

「父としてかくあるべし」と説く武士の教育書

私は幼少期に武家の教育の片鱗を授けられました。厳しい躾も幼い頃は当然のこととしか思えなかったものです。というよりも、それが厳しいかどうかなど意識の範疇ではありませんでした。だからこそ幼少期からの教育が大切なのです。このような幼少期の経験から、ごく単純に武家の教育は良いものだと思っています。

しかし、実際に武士が存在していた時代に、武家でどのような家庭教育が行われていたかということは、文献に頼らざるを得ません。中でも武家に伝わる家訓や、江戸時代に出版された武士の教育書などが大変参考になります。本書では、数ある武士の教育書の中から、林子平の『父兄訓』を選びました。林子平は江戸時代中期に生まれた仙台藩士であり経世家です。江戸や長崎で学んだ上、全国を行脚し海外情勢などにも通じていました。それら実施で得た学びをもとにロシアの脅威から、いかに国を守るかという思想を持つことになります。

このことは、林子平に「世界の中の日本」という意識があったことの表れでもあります。幕末でも「国」といえば「藩」という認識であったのに、子平は寛政時代に、すでに「日本一国」としての考えをもっていたのです。これが教育論にも色濃く投影されており、その点が類書の中でも『父兄訓』が突出している部分であるといえましょう。そのため、江戸中後期に書かれた教育書でありながら、ほぼそのまま現在に活用することが可能です。

林子平については、序章でも触れることにします。『父兄訓』は男性向けに書かれているため、同書を読み解いた本書も基本的には父親向の内容となっています。しかし、私としては女性にも、お読みいただきたいと思っています。戦前まで、家庭の中で一番偉いのは父親でした(ただし、おばあさんがいた場合は、おばあさんが頂点です)。そして、「父親を偉い」とする構図をつくっていたのは、妻であり母である女性でした。

つまり、女性あっての「父親の権威」だったのです。女性たちが一歩も二歩も譲ったのは、そのようにしておくほうが結果的に家庭が安定することを、経験的に理解していたからでしょう。『父兄訓』には、「父としてかくあるべし」ということが随所に出てきます。そのあり方は、妻の協力なくしては、ほぼ実現不可能であるということを、女性の読者に汲み取っていただければ幸いです。

本書が誇り高い日本人を育てるために些少なりともお役立ていただければ、泉下の林子平先生もさぞや喜ばれるにちがいありません。

 

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『武士の子育て』(石川真理子・著)は、11月下旬発売予定。まもなく予約受付を開始いたします。どうぞご期待ください。

 

 

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