自衛隊初の歌姫・三宅由佳莉さんが大切にする言葉——「頑張る」より「顔晴(がんば)る」!

写真提供=海上自衛隊

「自衛隊の歌姫」。全国25万人(掲載当時)にも上る自衛官の中から、初めて歌手としての活動を始めた三宅由佳莉さんを人はそう呼びます。常に溌剌と伸びやかに歌い上げ、隊士の士気、イベントを明るく盛り上げるその姿からは想像がつきにくいですが、自らのあり方に思い悩む時期が長く続いたと語られます。

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一回一回が勝負

「頑張りながらもほどよく力を抜いて、笑顔で一所懸命、それを顔晴る(がんばる)と表現しています」

もともとミュージカル俳優に憧れていた三宅さん。歌の先生からの紹介で自衛隊が歌手の募集を始めていることを知り、興味を持って応募したそうです。

他の隊員と共に、5か月間の共同生活の中で教育訓練を終えた後、海上自衛隊東京音楽隊に配属された三宅さんは、「配属当初の私は本当に使い物にならなかった」と、葛藤を吐露されました。

「『自衛隊の歌姫』としての前例がないため、初めの頃は歌う機会自体も少なく、同期の奏者が様々な場に参加している間も、私は電話番や事務仕事をしていることが多くて、『きょう一日何をやったんだろう』と虚無感が押し寄せてくる日も多々ありました。やっと演奏会に参加できても、私に与えられたのは一曲だけだったこともあります」

その後続けてこう語ります。

「その悔しい経験があったから、僅か5分の1曲、一瞬一瞬を大事に、常に全力で思いを込めて歌うようになりました。スポーツ選手など、一瞬で勝負が決まる世界で活躍する方と共通するかもしれませんが、本番の一瞬を最高の出来に仕上げるのって本当に難しいんです。体調や感情のコントロールなどを常に気をつけているんですけど、その分、人一倍あがり症で、恥や失敗もたくさん経験してきました。
 でも、中途半端が一番嫌なので、いつも全力で一所懸命。いまはありがたいことに歌う機会が多くなりましたが、どんな曲でも手を抜けません」

そんな三宅さんは、いまでは「よく隊長から『もう少し力を抜け』と指導されています(笑)」と笑顔で話されます。

2013年、メジャーデビュー

三宅さんは2013年に、『祈り~未来への歌声』でメジャーデビュー。そしてこの年に、日本レコード大賞企画賞、日本ゴールドディスク大賞クラシック・アルバム・オブ・ザ・イヤー、CDショップ大賞クラシック賞の3賞を受賞し、様々なメディアに取り上げられました。

そこで普通の人と違ったのは、「自分が注目を浴びている」ことを客観視し、思索を続けられたことです。

「音楽隊の活動に注目していただけたことはありがたかったんですけど、そこでも苦悩がありました。この曲を作詞作曲した東京音楽隊の河邊一彦元隊長や、演奏している隊員の総力の結果なのに、自衛隊初の歌姫ということもあり、私ばかりがスポットライトを浴びてしまって……。実力が伴っていない自分のことが中身のない人間のように感じられ、他の隊員にも申し訳なく思っていました。

でも、歌を聴いた方から感謝のお手紙が届いたり、自衛官の仲間からも勇気と希望をもらえたと言っていただけたことで、私の任務は自衛官の一人として歌うことなのだと気づかされたんです。自衛隊には様々な組織や役割があって、各隊員が各自の任務を全うすることで、大きな組織として成り立っています。私はいま、自衛官の制服を着て歌っていることにとても誇りを持っています。自分の任務を精いっぱい果たすことで、自衛隊という組織に貢献したいと思っています」

最後に、冒頭でも紹介した三宅さんが大切にしている「顔晴る」という言葉について三宅さんの思いをご紹介。

「私は「顔晴る(がんばる)」という言葉をよく使うんですけど、頑張りながらもほどよく力を抜いて、笑顔で一所懸命、それを顔晴ると表現しています。頑張るではなく、顔晴ることで仲間に安心感を与えられ、歌を聴いてくださった方にも力や感動をお届けできるんです。
 今後も与えていただいた『自衛隊の歌姫』としての任務を顔晴り続けたいと思います」


(本記事は『致知』2018年11月号 連載「第一線で活躍する女性」より一部抜粋したものです)


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◇三宅由佳莉(みやけ・ゆかり)
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昭和61年岡山県生まれ。日本大学芸術学部
音楽学科声楽コース卒業後、平成21年海上自衛隊に入隊。25年に発売されたアルバム『祈り~未来への歌声』が第55回日本レコード大賞企画賞、第28回日本ゴールドディスク大賞 クラシック・アルバム・オブ・ザ・イヤー、第6回 CDショップ大賞クラシック賞の3賞を受賞。その他『希望~Songs for Tomorrow』などアルバム多数。

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