「答えは日常生活にある」バレーボール全日本女子・中田久美監督の指導論

女子ワールドカップバレーなど、世界の強豪たちを相手に熱戦を繰り広げている日本バレーチーム。その日本チームを平成28年より率いてきたのが、名選手であり名指導者でもある中田久美監督です。中田さんは、どのように選手たちの心を鼓舞し、チームづくりに取り組んできたのでしょうか、語っていただきました。

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答えは日常生活の中にある

日本に戻ってから久光製薬スプリングスに入るまでは半年くらいでした。最初はコーチで入って、監督になったのはその翌年からでした。久光製薬っていうチームは、それまでも決勝に残ったりはしていたものの、最終的に勝てていませんでした。それが何なのかっていうのがありましたけど、私からすればチャラチャラしているチームにしか見えなかったんです。

だから私が最初にしたことは、選手のマインドをリセットすることでした。最初に「どこを目指すの、このチームは?」って選手たちに聞いたら、「優勝したい、日本一になりたい」って言うんですね。「だったら日本一になるための練習をしようよ。じゃそのために何が必要か書くね」って、ばーって書き出したんです。

それから片づけですね。というのも、体育館と隣接する合宿所の廊下に私物が散らばっていて、中にはやめた選手の箪笥まで放置されていたんです。すぐに選手を集合させると、「これではダメ、日本一にはなれない。すぐ片づけなさい」と言って、各自の部屋から体育館の掃除まで当番をつくって全部一からやり直させました。

なぜそうしたかと言うと、周りの変化に気づけない人たちが、自分たちのチームの問題に気づけるわけがないからなんです。「汚い」とか「汚れてる」って気づけない人に、チームの何が気づけるんですかって話です。日常生活ってすごく大事で、いまはコートの中だけちゃんとやっていればそれでいいっていう風潮がありますけど、答えは日常生活の中にある、と私は思うんです。

伸びる選手の条件

多くの選手と接してきた中で、もったいないなって思うことがあるんです。代表に選ばれる選手というのは当然それなりの力や素質があるわけですけど、中には誰もが当たる壁に対して、チャレンジしない、逃げたりごまかしたりする選手がいるんです。その壁っていうのは前に進むためには絶対に必要なのに、そこから逃げちゃうっていうのはすごくもったいない。

ではどういう選手が伸びるかと言ったら、「勝負どころで自分が決めるんだ」「自分がこのチームを勝たせるんだ」って思える選手だと思います。同じくらいの素質や能力を持っている集まりの中にあって最後に生き残るのは、「私の力が足りないからダメなんだ。だから力をつけるために、もっとやらなきゃいけない」って思える選手でしょうね。

強みを生かす

私が初めて全日本のメンバーを招集した時、面談で選手たち一人ひとりに聞いたのは、「あなたの武器は何ですか?」「全日本のために、あなたは何をやってくれる?」でしたね。他にも「私はあなたにこういうことを期待しています。それに対してどうですか?」っていうことなど、丁寧にディスカッションしました。

選手たちには、全日本に選ばれたから嬉しいというだけで終わってしまっては困るので、代表として果たすべき責任を口に出してもらうようにしていました。

「世界一になると本気で思ってください」

と、私は選手たちに言うんです。

もし心の片隅で「ちょっと無理かな」とか、「そうは言ってもね」なんて思っているようでは、勝負の神様が逃げてしまうと思うんですよ。とにかく誰か一人がではなくて、みんなが「世界一をもう1回、絶対に取る」と本気になって思えるかどうかです。やはり本気で思わなければ、それはただの言葉になってしまう。

本物になるってどういうことかと言うと、私は当たり前のことが当たり前にできる人になることを指すと思うんです。

どんな状況にあっても、コンスタントに80%の力が出せればいい。でも、それって外国人には難しいことなんです。彼らは120%の時もあれば、30%の時もある。その中にあって、常にコンスタントに力を発揮できる可能性を秘めているのが日本人であって、それこそ日本人の強みだと思うんです。だからそういった本物の選手を、代表監督として1人でも多く育てていきたいですね。

(本記事は『致知』2018年4月号 特集「本気 本腰 本物」に掲載されたインタビュー記事を抜粋・再編集したものです)

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◇中田久美(なかだ・くみ)
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昭和40年東京都生まれ。15歳でバレーボール全日本女子に初選出。高校卒業後、日立製作所に入社。セッターとして3度五輪に出場し、ロサンゼルス五輪で銅メダルを獲得。平成23年久光製薬スプリングスのコーチを経て、翌年監督に就任。在籍中、国内の主要大会すべてでチームを優勝に導く。28年バレーボール全日本女子監督に就任。

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