リーダーとマネージャーの違いを説明できますか?【稲盛和夫から最も信頼された男】が教える

戦後最大2兆3,000億円余の負債を抱えて倒産したJAL。マスコミ各社がこぞって“不可能”と断じた同社の再建に際し、会長に就任した稲盛和夫氏はたった二人の部下を京セラから連れていきました。そのうちの一人が大田嘉仁氏――。長年、稲盛氏の秘書を務め、「稲盛和夫から最も信頼される男」「稲盛和夫の側近中の側近」と称された人物です。大田氏の著書『JALの奇跡』では、 JAL社員に対して「リーダーとマネージャーの違い」を説明されるくだりがあります。

さて、あなたはこの違いを明確に説明することができるでしょうか?

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リーダーとマネージャーの違い

企業経営をする上で最も大事なことは、経営幹部に立派な人間性をもつすばらしいリーダーを据えることである。

どんな困難に直面しても逃げずに真正面から取り組む勇気があって、また部下や仲間を大切にする優しさをもっている。さらに常に謙虚で努力を怠らない。そういうリーダーでなければ小さな部門さえまとめることはできない。

しかし、冒頭から説明している通り、JALに着任し、会議に出席し、現場を訪問する中で、JALには本当のリーダーと呼べる人間がいないことを痛感していた。それではいくら立派な再建計画を作っても、達成できるはずはない。

また、上の立場の人間の意識が変わらないと、部下の意識が変わるはずもない。逆に、幹部の考え方が変われば、自ずと部下の考え方も変わる。だから、どうしてもリーダー教育を早急に始めなければならないと思っていた。

そこで、当初より意識改革推進準備室のメンバーに、「大西社長を含め役員や主要な幹部社員を50名ほど集めて、週5回、1回3時間程度のリーダー教育を始めたい」と伝えたのだが、そもそもリーダー教育というコンセプトにも納得していなかったので、最初は「絶対無理だ」と反対していた。

それでも私は、彼らに私の考えをまとめて報告書を作ってほしいと頼んだ。しかし、返ってくる報告書のタイトルはマネジメント教育になっていた。

「そうじゃない。私はリーダー教育のプログラムを作ろうと思っているのだ」と指摘しても、返ってきた報告書にはまたマネジメント教育と書かれていた。

おそらく彼らは当初リーダーとマネージャーが同じものだと理解していたのだろう。これは無理もない。普通の大企業でも管理職になったらマネジメント教育を受ける。そしてコンプライアンスの重要性、人事評価の方法、目標数値の設定の仕方などを学ぶ。それが一般的だから、リーダー教育というとマネジメント教育のことだと考えてしまったのだ。

準備室のメンバーは「大田さんの言っているリーダー教育を一般的にはマネジメント教育というのだけれど、たぶん大田さんは知らないのだな。京セラの人はマネジメント教育をリーダー教育と呼んでいるのだろう」と解釈したのかもしれない。

そこで私はリーダーとマネージャーの違いを繰り返し説明した。

「部下を管理するマネジメントについては、あなたたちはよくわかっているし、優秀かもしれない。しかし、今JALに必要なのは部下をまとめて同じ目標に向けて引っ張っていけるリーダーを育てることなんだ。

優秀なマネージャーであれば、困難に遭遇すればその迂回策を考えるだろう。うまくいかなかったら、その言い訳を探して、責任逃れをするだろう。そんなマネージャーばかりだから倒産したんだ。

再建を成功させるには、どんな困難にぶち当たってもあきらめずにやり遂げようとする、一つの目標に向かって部下を鼓舞してなんとかまとめていこうと考える、そんなリーダーが必要なんだ。これからはそのようなリーダーを育てなくてはいけない」

そのような話をしてリーダー教育の必要性をどうにか理解してもらった。


(本記事は致知出版社刊『JALの奇跡』を一部抜粋・編集したものです)

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◇大田嘉仁(おおた・よしひと)
昭和29年鹿児島県生まれ。53年立命館大学卒業後、京セラ入社。平成3年より京セラ創業者・稲盛和夫氏の秘書を務め、経営破綻に陥った日本航空再建時は、意識改革の他、再上場や調達等、多岐にわたり稲盛氏のサポート役を務め「稲盛和夫から最も信頼される男」「稲盛和夫の側近中の側近」とマスコミにも取り上げられた。

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