恥の文化喪失調査——休み時間に教室でものを食べることが恥だと思っていない高校生88%

「特攻隊は犬死だった」。高校時代の歴史教師がニヤニヤしながら話したその姿が、高橋史朗氏にひとつの決意をさせました。日本の歴史を見直し、戦後史を書き換えたい——約250万頁にもわたる英文を調査。さらに30年を経た年にも追加調査を行い、数々の新事実を発見しました。本書 『日本が二度と立ち上がれないようにアメリカが占領期に行ったこと』 には「教育勅語」が廃止された理由や日教組誕生秘話、ウォーギルドインフォメーションプログラムの全貌など、戦後史の盲点が詳細に記されています。本日はその中から、戦後に生まれた子供たちが抱える問題について、一部内容を抜粋し、ご紹介いたします。

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小中学生の「うつ」の増加

小学校・中学校の「うつ」の増加も顕著です。最近に発表されたデータもありますが、北海道の全道中学生調査では23%と2割を越えています。小・中学生の調査でも確実に越えています。また、平成21年に行ったある市の小中学校10校の調査によると、抑うつ傾向の小学生6年生の割合が14.4%、中学校一年生が17.8%と発表されています。別の市の平成18年の小中学校の統計では、「よく眠れない」と訴える子が男子26.8%、女子23.1%、「生きていても仕方がないと思う」と答えた男子13%、女子9.1%という事態が明らかになっています。

子供の死生観の実態も明らかになっています。長崎の佐世保で小学校6年生の女子児童が同級生を殺害した事件によって、長崎県教育委員会が小中学生3611人の調査をしたところ、「死んだ人が生き返る」と答えた小中学生が15.5%いました。また、兵庫県の酒鬼薔薇聖斗と自らを名乗った少年の連続殺傷事件のあとの平成18年に兵庫県の「生と死を考える会」が小中学生2189人に調査したところ、「人は死んでも生き返る」と答えたのが9.7%、「人は死なない」と答えたのが1.8%でした。

こうした調査からわかることは、今の子たちは生死を実感できなくなっているということです。かつては愛する肉親の生や死というものを家庭で、自分の目の前で見ていました。しかし今は、子供は病院で生まれ、親は病院で死んでいきます。生死を実感する機会が非常に少なくなっているのです。

富士山に登って初めて太陽が山から昇ってくるのに感動したという子供がいました。その子は今まで、漫画やアニメでしか太陽が昇るのを見たことがなかったそうです。アニメだと、太陽は突然昇るのです。ところが実際は、待っていてもなかなか太陽は昇らない。そのうちにだんだん四方八方が明るくなってきて、おもむろに太陽が昇ってくる。その荘厳な姿に感動したというのです。
それほどまでに、実体験がなくなっているわけです。それが、命というものに対する感性の弱さに繋がっているのです。

私はこのことを「心のコップが下を向いている」といっていますが、今、心のコップが下を向いている子たちが増えています。つまり、自己肯定観や自尊感情、自信が持てない子供たちが増えているのです。

心のコップが下を向いていたら、どんなに関わっても水はコップの中に入らず、ただ流れ落ちていってしまいます。だから、その心のコップをどうやったら上に向けることができるかということが、これからの教育の出発点になると私は考えています。

「恥の文化喪失調査」が示す日本文化の崩壊現象

ベネッセの教育文化研究所が高校生を対象に「恥の文化喪失調査」を行いました。パーセンテージが示しているのは、いずれも次のような行為が「恥ずかしくない」という割合です。

「休み時間に教室でものを食べる」88%
「道や駅前の広場で物を食べる」77%
「電車の中でものを食べる」52%
「休み時間に教室の床に座る」73%
「道や駅前の広場に座る」53%
「電車の床に座る」22%
「休み時間に教室で化粧をする」46%
「道や駅前の広場で化粧をする」34%
「電車の中で化粧する」28%

現代の若者の一つの特徴を表す「ジベタリアン」という言葉がありますが、これはこういう調査の延長線上にあります。電車の中でも、教室の中でも、べたっと座り込んでも恥ずかしくない。これはある意味で文化の崩壊現象です。

日本人は昔から靴を脱いで家に上がるというように、上と下を区別して生きてきたわけですが、そういう衛生観念がだんだん薄れてきています。しかも大人たちが注意をせずに、見て見ぬふりをするようになりました。その結果、こういうことが起き始めているということです。「恥の文化」というのはまさにルース・ベネディクトがいったことですが、それが失われてきているわけです。

(本記事は致知出版社刊『日本が二度と立ち上がれないようにアメリカが占領期に行ったこと』を一部抜粋・編集したものです

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◇高橋史朗(たかはし・しろう)
昭和25年兵庫県生まれ。早稲田大学大学院修了後、スタンフォード大学フーバー研究所客員研究員に。政府の臨教審専門委員、少子化対策重点戦略検討会議分科会委員、自治省の青少年健全育成調査研究委員会座長、埼玉県教育委員長などを歴任。現在、明星大学教授、一般財団法人親学推進協会会長、政府の男女共同参画会議議員などを務める。

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