無名の高校サッカー部を全国屈指の強豪に育てた名監督・平岡和徳の「100分間のストーリー」

熊本県の県立高校から48名のJリーガーが誕生しています。その立役者である大津高校の教師でサッカー部監督だった平岡和徳さん(現在は宇城市教育長)は、やる気のなかった部員たちに本気のオーラを出させることに成功。同校サッカー部を全国に名だたる強豪チームに育て上げました。組織再生にも繋がるそのノウハウの一部をお伝えします。

サッカー部のビジョンを明確に

平岡さんが着任した当時の大津高校サッカー部には、やる気のない部員たちが集まっていました。前任校の熊本商業高校を県大会優勝校にまで導いた実績がある平岡さんは落胆したものの、大津高校サッカー部も必ず強くしてみせると自らに固く誓います。

大津高校サッカー部も最初は無気力な連中が多く集まっていました。ちょっと目を離すとボールの上に座っているとか、練習時間にメンバーが集まらないので教室に行ってみると女子と喋っているとか、彼らにはサッカーを強くする上で欠かせない人間力が欠けていて、ゼロからつくり上げたという点では熊商と一緒でした。

しかし、熊商でのやり方がそのまま大津高校で通用するわけではありません。しかも、熊本県国体が間近に迫っていた時で県民の期待も高く、ゆっくりと選手たちを育てる余裕はありませんでした。スピード感、機動力を意識しながら選手たちを変えていったんです。

例えば、自分たちの思いを文字化、可視化して共有することです。会社でもそうですが、ビジョンを明確にしないと組織は動きませんね。僕たちの場合、そのビジョンが「年中夢求」です。これには1日1日の24時間を自分流にデザインし、夢の実現に向かって凡事を徹底し、身体を鍛え、心を磨き、人生をプロデュースできる人になるという意味を込めました。その上で、夢の実現のためには「本気のオーラ」を出すことが重要であり、それがなくては何も始まらないことを繰り返し伝えていったんです。

1日の練習を100分に絞り込んだ理由

大津高校サッカー部にはある伝統があります。それは練習時間を100分に絞り込んでいることです。その理由を平岡さんは次のように話します。

人間、終わりがないと途中を本気で頑張れないものです。そこで大津高校では練習時間を100分と決めて、それを全力でやり切ることを習慣化しました。
 
この100分間はストーリーを大切にし、一切の無駄をなくします。コーチの笛を合図にウォーミングアップから、パスワーク、シュート、戦術練習、ゲームへと次々に進み、選手たちの足が止まることはありません。練習が15分刻みだとすると、10分過ぎくらいから「ラスト何分」と追い込みをかけ、ギリギリまで全力を出させ、さらに一歩を踏み込ませた上で、次のメニューに移ります。
 
ここでできたよい流れが次の日の朝練習に繋がるんです。選手が「あのトレーニングがゲームの中でこのように繋がるのか」と感じてくれれば、そこに自ら考え行動する力(考動力)が生まれます。100分という時間に無限の工夫をするチャンスがあることに気づけば、普段の生活も変わってきます。自ら課題を発見し、問題を解決しながら24時間をデザインする力もその中から生まれてくるんです。
 
そういうメソッドを少しずつつくり上げて選手の意識を変えていた時、志の高い新入生が入部し、彼らが2、3年生になる時に国体で2年連続準優勝を果たしたんです。
 
高い目標を持って日々のトレーニングに全力で励む選手は、いつも変化を求めている分、成長は早いと思います。変化の先にしか進化はありませんので、変化を創り出す内側のエネルギー、今回の特集テーマである「内発力」がないといけません。その大前提となるのが主体性です。やらされ感では何も行動(考動)は変わらない。よくなるのは返事だけです(笑)。

サッカー部が目指すべき方向性を明確にし、そのための道筋を示した平岡さんの指導は、選手たちの意識を変え、やる気を喚起し、やがて高校サッカー界で一流と呼ばれるようになりました。それはそのまま組織のあり方にも通じるように思います。

(本記事は『致知』最新号2018年9月号 特集「内発力」より一部抜粋したものです。各界リーダーもご購読、人間力・仕事力を高める記事が満載の最新号はこちらから)

◇平岡和徳(ひらおか・かずのり)
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ひらおか・かずのり―昭和40年熊本県生まれ。帝京高校、筑波大学時代には主将として全国大会で数々の好成績を残す。大学卒業後、地元・熊本で県立高校教師となり、熊本商業高等学校、大津高等学校をサッカーの強豪校に育てる。巻誠一郎など48名のJリーガーを育成。平成27年から日本サッカー協会技術委員会に籍を置き、日本オリンピック委員会強化スタッフとなる。29年4月宇城市教育長に就任。

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