子どもたちが身を乗り出して聞く道徳の話 ~伝説の小学校教師が遺した指導術~

「自律」の意味を、子どもにどう説明しますか?

突然ですが、あなたは次の言葉を、どのように子どもに説明しますか?

 ・自信

 ・勇気

 ・素直

 ・友情

 ・感謝

 ・成功

 ・独立

 ・命の尊重

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教師歴32年、問題を抱えた子どもたちを次々と立ち直らせてきた伝説の小学校教師・平光雄先生は、紙芝居やイラストなど、ユニークな手法を駆使してこれらの言葉を見事に説明します。

さて、平先生は「自律」という、大人に対しても説明の難しい言葉を、どのように子どもたちに説明するのでしょうか? 平先生の著書『子どもたちが身を乗り出して聞く道徳の話』に収録された31の話の中から一篇をご紹介いたします。

紙芝居で1本の線を引く

(平)

もう何年も前から言われていることだが「自分のやりたいことはなんでもじゃんじゃんやっちゃえ」というような、「自主性尊重」のはき違えによって、学校でも社会でも「節度」がない子が増えている。

レストランや公共施設、地下鉄などで騒ぎ回る子は数多いるし、近くにいる親もそれを咎めないで、むしろほほえましく? 見ている、という場面もよく見られる。

子どもたちも、「悪気」がある場合ばかりではなく、まさに屈託なく節度ない言動を繰り返す。自分の中に行動基準がないのだ。

「子どもを怒鳴る」という親や教師の行動への賛否が問われることがある。昨今は「怒鳴る」ということは、教育法として評判が悪いようだが、価値としては中位だろう。怒鳴った結果、子どもの中に価値基準が内面化されたかどうかだけが問題で、表面的な「怒鳴る」も「優しく諭す」も同列、手段の違いで優劣はないものだ。

しかし、いずれにせよ子どもに自ら節度を保てるように指導するのは一朝一夕にはいかない大事業だ。根気のいる指導なのだ。そこでイメージの力を借りる。

 

■紙芝居「自分で線を引け」■

何回叱られても、人に迷惑ばかりかけてしまう子がいるよね。叱られないときちんとやれない子もいる。そういう子に足らないのは、これです。

 「──────────」

   (絵を描いて見せる)

そういう子は「自分で線を引く」ということができないんだ。この辺まではいい。ここからはアウトというのが自分で線引きができない。だからいつも誰かほかの人に引いてもらって、ガツンと言われなきゃはみ出てしまう。世の中に、線は引かれていないけど、いろんなことに出てはいけない線はあるよね。

たとえば、「授業中に変な音を立てる」「地下鉄で暴れる」「レストランで騒ぐ」……などなど、全部「一線」を越えているよね。

しかし、これも自分で線が引けない人がいるということなんだ。小さい子は仕方ない。そこで叱られてだんだん自分で、こういうときはこの辺が線なんだなと学んでいる最中だから。でも、高学年になってもそれじゃ、幼児と変わらないってことだよね。

自分の言動については、「自分で線を引ける」のが高学年です。そして、それが「自律」ということです。

この話をした後は、折に触れ、子どもの言動に対し、「今のは線ギリギリだぞ」とか「おい、今のは線越えてないか?」というだけで「自律」への意識を強化していけるとともに、言動の「線」について、集団でのコンセンサスを図っていくことも可能となる。もちろん家庭でも同様であろう。

                   * *

『子どもたちが身を乗り出して聞く道徳の話』には、プロ教師・平光雄先生が32年に及ぶ教育実践の中から、特に子どもたちの心に響いたエッセンス中のエッセンスを抽出して紹介しています。現在10刷のロング&ベストセラー。

伝説の小学校教師が遺した指導の極意

『子どもたちが身を乗り出して聞く道徳の話』

平光雄・著

平光雄(たいら・みつお)

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 昭和32年愛知県生まれ。58年青山学院大学文学部教育学科(心理学コース)卒業後、愛知県で小学校教諭となり、学級担任を30年以上務める中、問題を抱えた生徒たちを数多く立ち直らせるなど、プロ教師としての手腕が高く評価されていた。著書多数。代表作である『子どもたちが身を乗り出して聞く道徳の話』(致知出版社)は教育関係者のみならず、ビジネスマンや主婦の間でも反響が広がっている。