砂漠で掴んだ「生きている」実感

三菱ケミカルホールディングス会長の
小林喜光さんといえば、
経済同友会代表幹事を務める
いまや日本経済界の重鎮です。

その小林氏は、若き日人生に悩み、
イスラエルに強く魅了されます。

中東の大砂漠に立った小林さんは、そこで
「生きている」
ことを強く実感します。

 

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?絶えず視座を高めて道を開いてきた

小林 喜光
(三菱ケミカルホールディングス会長)

※『致知』2016年5月号【最新号】
※特集「視座を高める」

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【牛尾】 
それで、イスラエルの大学には
何年いらっしゃったのですか。

【小林】
ちょうど一年です。
駒場のキャンパスを歩いていたら、
イスラエル国費留学生募集というのが
掲示板に貼ってあったのが
目に留まりまして、
これはいいっていうので、
すぐに大使館に
試験を受けに行ったんです。

まぁ親には随分
反対されましたけれどもね。
何でそんな所へ行くんだと。

【牛尾】
それはそうでしょう(笑)。

【小林】 
青い目の女性なんかを連れて
帰ってきたら困るというんで、
しかたなく見合いをしましてね(笑)。

六月に結婚式を挙げて、
七月にはもう日本を発っていたんです。

【牛尾】 
奥様もご一緒に?

【小林】
ええ。彼女は大学三年生でしたから
中退をして、
向こうのヘブライ語の学校に
入ることにしました。

一緒に寝袋を担いでトレーラーバスで
シナイ山を越えていったんですが、
ひと月もすると
もう日本に帰りたいって泣かれましたよ。

【牛尾】
そういう辛い思いも分かち合いながら、
勉強してこられたのですね。
それで、向こうで何か
得るものはありましたか。
【小林】 
土日にユダヤ人に案内されて、
マサダだとか、エリコ、死海、
シナイ山なんかを
ずっと見て回ったんですが、
あぁここでモーゼが十戒を受けたのかと、
あれはやっぱり感激しますね。

【牛尾】
非常に貴重な体験をなさいましたね。
いまの若い人には、
山本七平さんの本に打たれて
自分でイスラエルまで
足を運んでみるというような
きっかけがないんですよ。

【小林】
そうですね。私の場合は、
あの頃日本を覆っていた
デカダンというか、
センチメンタルなムードに
強い違和感がありましたからね。

満員電車に揺られる大勢の中の
ワン・オブ・ゼムのような
自分が無性に疎ましかったんです。

それが、あの何もない砂漠に
一人ポツンと立っていると、
心臓が鼓動を打つのが
聞こえてきましてね。

自分という存在の重みというか、
生きていることのすごさというものを
ひしひしと実感することができたんです。

いまでも鮮明に脳裏に
焼きついているんですが……
※小林さんの心にはこの後、
「俺は生きなきゃ駄目だ」という
猛烈な思いが湧き上がってきます。

小林さんの迷いを吹き払った
その幻想的な光景とは、
どのようなものだったでしょうか。
誌面でぜひお読みください。

 

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