料亭・和久傳の誕生秘話

京都の料亭・和久傳はもともと
京丹後市にあった老舗の旅館でした。
倒産寸前の旅館を建て直したのが女将の桑村綾さんです。

当時を振り返って語られた
対談記事の一部を紹介します。

安野 光雅(画家) × 桑村 綾(和久傳女将)
───────────────────
※『致知』2017年12月号
※特集「遊」P10

───────────────────
 
「仕事とは尊い遊び」    

【安野】 
私は桑村さんもその道を極めてきた達人だと思っていますが、
和久傳の歴史も古いですね。

【桑村】 
そうですね。
いまから147年前の明治3年に和久傳旅館として創業しまして、
縮緬産業の発展とともに京丹後の地に根づいていきました。
 
私は高校を出て証券会社で働いた後、昭和39年、
24歳の時にお見合い結婚をして和久傳に嫁ぐことになりました。
結婚する前、私の家族は旅館の女将は大変だし、
和久傳旅館は潰れかかっているという噂もあるから、
と強く反対していたんです。
 
私も最初は断っておりましたが、
その頃は女性が24歳を過ぎたら行き遅れと呼ばれた時代で、
和久傳からもぜひ来てほしいという話が再三ありましたものですから、
ちょっと占いみたいなもので見てもらったんです。

すると、どこで占っても嫁ぐ方向が同じなんですね。
「ひょっとして、これが自分の運命かな」
と思って和久傳旅館に嫁ぐことを決めました。
そうしたら、案の定、大変だったわけですけれども。



【安野】 
私も津和野の宿屋の倅ですから、
桑村さんのお気持ちはよく理解できます。

私のところは、立派な木造三階建てだった和久傳旅館とは
比較にならない小さな宿屋なんだけど、
聞くところによると、その頃の和久傳旅館は
丹後縮緬が衰退して行商人も減り、経営が厳しかったそうですね。

【桑村】 
そうです。実際に潰れかかっておりました。
それで商売替えをするという約束で私は嫁いだんです。
実際、旅館があった場所は京丹後でも角地で一番のいい場所でしたから、
いろいろな商売がやれたと思いますが、
それでも現状は何とか営業を続けるしかなく、
お客様を受け入れていかなくてはいけないということだけで、
その頃は必死でした。
 
待っていただけではお客様は来られませんし、
法事やお節句の注文を聞いて歩いて、
料理をリヤカーに乗せて運ぶこともしました。



それでも、どうしてもやっていけないというふうになった時に、
地元の人たちが自発的に後援会をつくってくださったんです。
忘れもしません。昭和43年のことでしたけれども、
約200名の方々が10万円ずつ出してくださいましてね。

【安野】 
ああ、地元の縮緬業者さんたちがね。

【桑村】 
そういうご支援もあって28歳の時に山辺のほうに旅館を移しました。
3,000坪の敷地に料亭、宿泊それぞれの建物を建てて、
自慢のカニ料理が人気を博したのですが、
縮緬産業の衰退だけはやはりどうすることもできずに、
大変な借金をして京都市内に店を出すことにしたんです。


───────────────────
・『致知』には人生を潤す言葉がある
───────────────────
・まずは気軽に1年購読から 
 10,300円(1冊あたり858円)
・3年講読のコースもあります

1年間(全12冊)

定価14,400円

11,500

(税込/送料無料)

1冊あたり
約958円

(税込/送料無料)

人間力・仕事力を高める
記事をメルマガで受け取る

その他のメルマガご案内はこちら

人気ランキング

  1. 【WEB chichi限定記事】

    【取材手記】ふるさと納税受入額で5度の日本一! 宮崎県都城市市長・池田宜永が語った「組織を発展させる秘訣」

  2. 人生

    大谷翔平、菊池雄星を育てた花巻東高校・佐々木洋監督が語った「何をやってもツイてる人、空回りする人の4つの差」

  3. 【WEB chichi限定記事】

    【編集長取材手記】不思議と運命が好転する「一流の人が実践しているちょっとした心の習慣」——増田明美×浅見帆帆子

  4. 【WEB chichi限定記事】

    【取材手記】持って生まれた運命を変えるには!? 稀代の観相家・水野南北が説く〝陰徳〟のすすめ

  5. 子育て・教育

    赤ちゃんは母親を選んで生まれてくる ——「胎内記憶」が私たちに示すもの

  6. 仕事

    リアル“下町ロケット”! 植松電機社長・植松 努の宇宙への挑戦

  7. 注目の一冊

    なぜ若者たちは笑顔で飛び立っていったのか——ある特攻隊員の最期の言葉

  8. 人生

    卵を投げつけられた王貞治が放った驚きのひと言——福岡ソフトバンクホークス監督・小久保裕紀が振り返る

  9. 【WEB chichi限定記事】

    【取材手記】勝利の秘訣は日常にあり——世界チャンピオンが苦節を経て掴んだ勝負哲学〈登坂絵莉〉

  10. 仕事

    「勝負の神は細部に宿る」日本サッカー界を牽引してきた岡田武史監督の勝負哲学

人間力・仕事力を高める
記事をメルマガで受け取る

その他のメルマガご案内はこちら

閉じる