世界一のエステティシャンがひも解く『古事記』

和銅5(712)年に完成した『古事記』は、『日本書紀』と並んで日本最古の歴史書として今日まで語り継がれてきました。その『古事記』を題材に、古事記塾を実に全国に30か所で行っているのが、今野華都子さん。受講生の数は、これまでに延べ1,000人を超えるといいます。日本人のルーツともいえる神話の世界を学ぶことは、自ずと日本人の物の考え方や日本の国柄が明らかになる、と今野さんは語ります。

『古事記』の世界に深く分け入る

いまでこそ全国各地で、延べ1,000人の方々に『古事記』をやさしく紐解かれている今野さんですが、そもそも『古事記』の世界にご自身が深く分け入っていったのは、2007年にまで遡るそうです。 「そもそも私が『古事記』の世界に深く分け入ったのは、2007年に志摩半島にあるタラサ志摩ホテル&リゾートの社長に就任したのがきっかけでした。というのも、ホテルには伊勢神宮を案内してほしいという方が多く訪れるため、この国の成り立ちや日本の神様のことを知らなければご案内のしようがなかったからです。 そこで『古事記』をはじめ、その解説本や『日本書紀』に関する本、さらには宮司様に直接神道について教えていただくなどして勉強を重ねていきました。おそらく私の曽祖父が宮司だったということもあるのでしょう。そういった流れの中で、『古事記』のことをもっと知りたいという思いとともに、そこに記されていることがいかに大切であるかを強く認識するようになっていったのです。 そしていまから約10年前に、私の友人からいただいたのが、阿部國治先生の『新釈古事記伝』(全7巻)でした。初めて手に取った時の感動はいまでも忘れられません。それまで読んだどの本よりも深い解釈で紐解かれていた阿部先生の言葉に触れた瞬間、自分の求めていたものがここにあった、という魂が震えるほどの感動が全身を貫いたのです」

大国主神が見せた、国づくりの道

『古事記』の魅力、素晴らしさはどこにあるのでしょうか。今野さん曰く、『古事記』の素晴らしさは、物語として書かれていることにあるとされています。なぜなら、現代に生きる私たちと同じような悩みを持った神々、苦しみながらも成長し、その過程で得たことが示されているからだそうです。 「例えば、須佐之男命(すさのおのみこと)の6代後に生まれた大国主神(おおくにぬしのかみ)は、理不尽な兄神たちの怒りをかって二度も殺されてしまう場面があります。その都度、大国主神は母神の手によって生き返るのですが、もう二度と殺されないようにと、『根(ね)の堅洲国(かたすくに)』に行くよう母神から命じられました。そして、その地で修業を積んだ大国主神が再び舞い戻ってくると、兄神たちに仕返しをするどころか、学問を教え、ともに国づくりをしていくのです。 もしこれが西洋の物語であれば、おそらく力をつけて帰ってきた大国主神は、兄神たちへの復讐を果たした上で権力の座に一人でついたことでしょう。ところが、大国主神はそうはしませんでした。愛や勇気を身につけた者が、まだ至らぬ者を教え諭し、懲らしめることはあっても決して傷つけることはしない。そして、改心した者たちを許し、ともに力を合わせて国の土台をつくっていきました。 国とは人によって成り立つものであって、そのためには人と争うのでなく、育てていかなければなりません。そのことが、既に1,300年前の物語の中からしっかりと読み取ることができるのですから、これは大変素晴らしいことだと私は思うのです」 『古事記』に記されていることは、単なる昔話ではありません。いまを生きる私たちに、生きるヒントをふんだんに指し示してくれているのです。今野さんのお話はそのことを明確に私たちに教えてくれています。

(本記事は『致知』2018年5月号掲載の記事をもとに再編集したものです)

◇今野華都子(こんの・かつこ)
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昭和28年宮城県生まれ。平成10年エステティックサロンを開業。16年第1回LPGインターナショナルコンテストフェイシャル部門にて日本最優秀グランプリ、また、世界百十か国の中で最優秀グランプリを受賞。タラサ志摩ホテル&リゾート、カルナ フィットネス&スパの社長を歴任。最新刊に『はじめて読む人の「古事記」』(中尾早乙里・画/致知出版社)。

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