難病ALSと闘う恩田聖敬さんの生き方

(写真/松原豊)

2014年に35歳の若さで筋萎縮性側索硬化症(ALS)という難病を発症した恩田聖敬さん。しかし、恩田さんは難病に負けることなく、自らの力で起業し、現在も全国での講演会など、精力的に活動しています。その恩田さんを突き動かす原動力、思いとは――。
※対談のお相手は、重度障がいを抱えながら株式会社仙拓を創業した佐藤仙務さんです。

絶望を救ってくれた妻の存在

(恩田) 一応、社長になる前に検査を受けて、脳に異常がないことは分かっていました。ただ、FC岐阜のチームドクターに体に異常があるかどうか診てもらったところ、一度きちんと検査入院をして、体中を診てもらったほうがいいと。  

その翌月に検査入院をしたのですが、そこでALSの可能性が高いとの診断を受けたんですね。 (佐藤)  社長になられて、まさにこれからという時に。 (恩田) ALSという病気について少し説明しますと、ALSは筋肉を動かす運動神経のみが侵され、全身の筋肉がだんだん弱くなっていく難病で、原因は不明です。  

病気の進行によって自力歩行ができなくなり、話せなくなり、やがては自力で呼吸できなくなってしまい、人工呼吸器が必要になります。ただ、知覚や思考は奪われません。現在、日本に約9000人の患者がいると言われています。遺伝性ではないので、誰にでも起こり得る病気です。

(佐藤)

突然の難病の宣告をどのように受け止められましたか。

(恩田) 自分の体が動かなくなる未来を想像し、まさに絶望の淵に落とされた気持ちになりました。そして真っ先に頭をよぎったのが妻や幼い子供たちのことでした。  

妻はどう思うだろうか、私を見捨ててしまうのではないか。幼い子供をどう育てればいいのか、様々な思いが頭の中を巡りました。  

でも、悩みに悩んだ末、妻に単刀直入に病気のことをすべて話しました。すると妻は私から目を逸らさずに、

「あなたに生きる意思があるなら、一緒に生きていきましょう」

と言ってくれたんです。

(佐藤) あぁ、奥様が。

(恩田) 

いまも妻の存在は最大の支えですね。ただ、実際に生活していく上では、妻と何度もぶつかりました。私が少しでも元気をなくしたり、ボーっとしていると「病気を言い訳にしないで!」「父親として子供の面倒を見て!」「あなたなら、ALSでもできる方法を考えられるでしょう」と叱られるんです。もしかすると、病気の前より厳しいかもしれません(笑)。

やれることではなく、やりたいことをやる

(恩田)

私がALSの診断を受けたのは、ちょうどFC岐阜にラモス瑠偉さんが監督としてやってきたり、元日本代表選手の方が加入したりと、岐阜全体が盛り上がっている時でした。ですから、新しい社長が難病だと分かればそのムードに水を差してしまうと思い、私はALSであることを隠して社長を続けることを選びました。

しかし、2014年の終わり頃になると、症状が目に見えて分かるようになったので、2015年の1月にALSであることを公表しました。そして、その年の終わりまで社長を続け、退任したんです。FC岐阜の仕事は天職だと思えるほど楽しくて仕方がなかったので、退任した時には悔しくて悔しくて、何度も泣きました。

(佐藤) 

その絶望からどのように立ち上がっていかれたのですか。

(恩田)

社長を辞め、次にどうするかを考えた時、私に働かないという選択肢はありませんでした。とにかく私は働き続けたかった。

実際、FC岐阜に社長以外の立場で残る道や他の企業に雇っていただくなどのお話もいただいたのですが、想像してみるに、それでは自分のやりたいことはできないのではないか、「ALSでもやれる仕事」を与えられるだけではないかという気がしました。

結局、私はやりたいことをやるためにまんまる笑店を起業する道を選びました。人生はたった一度しかありません。やれることではなく、自分がやりたいことをやっていくことに意義があると考えたんです。

(本記事は『致知』2018年3月号に掲載された記事を抜粋したものです)

◇恩田聖敬(おんだ・さとし)

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昭和53年岐阜県生まれ。京都大学大学院航空宇宙工学修了。Jリーグ・FC岐阜の社長に史上最年少の35歳で就任。就任と同時期にALS(筋萎縮性側索硬化症)発症。平成27年末、病状の進行により職務遂行困難となり、社長を辞任。翌年、クラウドファンディングで資金を募り、株式会社まんまる笑店を設立。以後、全国で講演や執筆等を行う。佐藤氏との共著に『絶望への処方箋』(左右社)がある。

 

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