2016年04月27日
ロンドン大学の教授で有名な
森嶋道夫氏の非武装中立論。
これをばっさりと一刀両断したのが、
21歳の女性の投稿記事でした。
あの評論家・福田恆存氏も
感心したその一文とは──
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★ 「これは素人の論文」 ★
占部 賢志(中村学園教授)
※『致知』2016年5月号
※連載「日本の教育を取り戻す」
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【占部】
こんな事例がありました。
かつて、ロンドン大学の教授で
著名な森嶋通夫氏が
『文藝春秋』誌上で持論の
非武装中立論を展開したことがあります。
国際的に知られた人物の主張でしたから、
反響も大きかったのですが、
反論として見事だったのは、
次号の投稿欄に載った21歳の
女性読者が綴った読後感でした。
このことを私が知ったのは、
評論家の福田恆存氏
が取り上げたからです。
あの福田さんが
感心したほどの一文でした。
【教師B】
森嶋氏の非武装中立論というのは、
具体的にはどんな考え方なんですか。
【占部】
当時は冷戦下でしたから、
我が国にとっていちばんの
脅威はソ連でした。
森嶋氏はそのソ連が万一にも攻めてきたら、
「秩序ある威厳に満ちた降伏」
をすべきだと述べ、
「ソ連の支配下でも、私たちさえ
しっかりしていれば、日本に
適合した社会主義的経済を
建設することは可能である」
と説いたのです。
【PTA役員A】
侵略されたら降伏するのが
いちばんというわけですか。
典型的な非武装中立論ですね。
【占部】
で、このロンドン大学教授を
向こうにまわして、
彼女はこう切り返したのです。
「“私たちさえしっかりしていれば”
という一項によって、
これは素人の論文に終わった。
私たちはしっかりしていない、
もしくは私たちはいかなる時にも
しっかりしているとは限らない……
それが軍備ゼロで、降伏してから後、
個々人が尊厳をもって
生きていけるだけの社会体制を
新たに築いていけるのか、
私には不安だ。
支配側の体制にいち早く順応して、
そちらに頭角をあらわす人々は
どんどん出るに違いない」
【教師B】
すごい洞察力ですね。
21歳とはとても思えません。
【占部】
森嶋論文の誤りを人間洞察を欠いた
「素人の論文」と一刀両断したのですよ。
【教師A】
どうしたら、これほどの
眼力を持てるのでしょうか。
【占部】
この女性には、
自分というものが見えているのです。
というより……
※今回の連載では、様々なデータを
もとに若者像を浮かび上がらせる
連載「日本の教育を取り戻す」。
そこには、ちょっと意外なデータも…。
続きは本誌でどうぞ!