2017年12月11日
漆芸家で人間国宝の室瀬和美さん。
漆の道を歩んでいく上で最も刺激的な学びを得たのは、
蒔絵の人間国宝・松田権六さんだったと言います。
室瀬 和美(漆芸家/人間国宝)
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※『致知』2018年1月号【最新号】
※特集「仕事と人生」P46
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──いまでも印象に残っている松田先生の教えはありますか。
教えは本当にいっぱいありましたけど、特に私が後進に伝えているのは、
ものをつくる作家として生きていくために必要な「三つの学び方」のお話です。
松田先生がおっしゃるには、学び方には三つの段階があって、
まず第一段階は「人から教わる」ことだと。
学校の先生や先輩、職人であれば師匠から直接教わる。
そして第二段階は、「ものから教わる」。
だいたいの人が、「先生から学んで、勉強になりました」で
終わってしまうけれども、実はその教えてくれた先生も
一世代前の人に教わったことを伝えてくれているわけだから、
せいぜい、三代前くらいの技術しか教われない。
ただ、例えば漆工芸では、千年前につくられた作品がいまなお腐らずに残っている。
その千年前の技術や、途中で途絶えてしまった仕事を教えてくれるのは、
人ではなく、作品そのものがいろいろな情報を出してくれるんだよと。
──千年前の作品が教えてくれる。
ただ、「ものから教わる」といっても、
ものが喋ってくれるわけではないですから、
学生の私には全然ピンときませんでした。
そして、最後の第三段階の学び方は、「自然から学ぶ」。
人やものから学ぶことは あくまで先人や既に形あるものから教わることであって、
自ら作品を創り出していくことには繋がらないと。
要するに松田先生は、木々や風や日光など、
四季折々に変化する自然から生まれるエネルギーをキャッチし、
それを自分の表現にどう生かしていくかが、創作者として最も大事だと言うんですね。
そして、平安、鎌倉、江戸時代の人も、
それぞれ皆その時代に感じたものを表現しているのであって、
彼らの真似をしてもしょうがない。
君はいま生きている時代に感じたものを表現するんだと。
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