修業時代の心掛け/坂井シェフ


フランス料理界の巨匠・坂井宏行さんが語る、
二十代の修業時代とは──

坂井 宏行(「ラ・ロシュ」店主)

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※『致知』2017年11月号
※連載「二十代をどう生きるか」P98

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かくして料理人としての
第一歩を踏み出したわけですが、
当時の料理人の世界は丁稚奉公と同じで、
親方や先輩が白と言えば
明らかに黒い物も白になってしまう。

まさに神様みたいな存在でした。

そういう時代でしたので、
入ってすぐに料理の仕事を
させてもらえたわけではありません。

私はまず親方の靴磨きから始めました。

先輩たちが快適に仕事をできるよう
に準備をきちんと整えておくことも
大事な仕事の一つです。

例えば、冬場は先輩たちが起きてくる前に
調理場を暖めておかなければなりません。

当時は石炭ストーブの時代で、
暖めるのに時間がかかる上に、
真冬の早朝ともなると、
なかなか石炭に火がつかないため、
前日の晩に竈の中の灰を綺麗に掻き出し、
翌日使用する石炭を入れておく。

そうやって少しでも早く調理場が
暖まるように準備していました。

また、調理場では自分の仕事に集中しつつ、
常に先輩の動きを見て先読みする。

ボウルを欲しそうにしているなと思ったら、
サッとすぐに持っていく。

そこで要領よく立ち回ることで、
先輩たちから可愛がられて、
「おまえ、これやっておけ」と新たな仕事を
与えてもらえるようになりました。

そして、もう一つ心掛けていたのが、
「その日に与えられた仕事は
 その日のうちにやっておく。
 先延ばしにしない」

ということです。

例えば、ソースを仕込むとしましょう。

あと2~3時間煮込まなければ
いい味が出ないという場合には、
たとえ日付が変わってしまう時間だとしても、
我慢して居残って最後まで仕上げる。

まだ味が出ていないのに、
もう時間だからと言って仕事を
放って帰ることは決してしませんでした。

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