2016年07月04日
Ω あなたの人間力を高める Ω
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致知出版社の「人間力メルマガ」 2016.7.5
直木賞作家・佐藤愛子さん、92歳。
90歳を超え、一度は引退を考えながらも、
再びペンを取り、作家活動に余念のない
佐藤さんの作家道とは──。
────────[今日の注目の人]───
★ 力尽きるまで ★
佐藤 愛子(作家)
※『致知』2016年8月号【最新号】
※連載「生涯現役」P98
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本当は90歳で『晩鐘』を
書き終えた後は、
もう執筆生活をやめようと
思っていましたら、
一時期鬱病みたいになりましてね。
それまでは朝目が覚めると、
その日に書くものの
構成を考えたりしながら、
「いざやるぞ!」ってパッと
起きて一日が始まっていました。
ところがそれがなくなってしまって、
目が覚めても別にすることがないから
もう少し寝ていようとか
ズルズルしているうちに、
だんだん気持ちが鬱屈して、
元気がなくなってしまいました。
最初は原因がよく分からないから、
年のせいだろうと思っていたんですよ。
そうしたらある日、
ある週刊誌の編集者が来て
エッセイを連載してくれないか
という話になってね。
断るつもりでいたんですけど、
とても熱心だったので引き受けたところ、
翌朝起きるともう頭の中では
何を書こうかと考えていて、
いつの間にか元気になった(笑)。
──ではもう書き続ける
しかありませんね(笑)。
私はね、書くことだけが
生きることだったわけですから、
だからそれをやめた途端
鬱病になっちゃったんですよ。
よく定年退職した男性が
鬱病になりますでしょう。
あの気持ちはよく分かります。
芯がなくなるんですよね。
だから死ぬまで何か仕事を
していないとダメだということを
実感したので、いまは力尽きるまで
仕事をしたいと思っています。
※かつては10年間全く売れない
時代も経験したという佐藤さん。
本誌では、作家として生きる
ことを運命づけられたような
半生についてもお話しいただきました。